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紙の本
ポケタ・ポケタ・ポケタ。
2006/09/22 18:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松井高志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1930年代の「ニューヨーカー」誌で活躍した短編作家・エッセイストのジェームズ・サーバーは、日本での認知度は今ひとつだが、英語圏ではかなりポピュラーな作家で、よく英語の授業のテキストにも使われたりする。ただしダールでもサキでもサーバーでも、一旦授業に使われたりすると、少しも面白くなく、野暮ったくなってしまってしまうので、たとえば落語なんかを教材に利用しようなどとは間違ってもたくらんではいけないことが、洋の東西の差はあるが、これでもよく分かる。
サーバーの鳴海四郎訳(この早川書房版、それに講談社版の「空中ブランコに乗る中年男」)を、私は高校生の頃に初めて読み、はっきりいえばかなり影響を受けた。その後、どうすればこういう風に素材を選んで、こういうテンポで哀歓を短い枚数で巧みに実現できるかの、20代を通じてのお手本であった。内気で不器用な、テクノロジーに支配された社会にうまくとけ込めない人(たとえアメリカ人であろうとそうでなかろうと)への共感を、笑える短編という形で提示したものである、といえる。
実はこの早川版「虹をつかむ男」(こういうタイトルの映画の原作だからこう名づけられているが、もう映画自体がかなり古くなったので、本のタイトルを変えてもよかった)に収められていない作品の方に、傑作があったりするが、それは冬樹社から出ていた「ジェームズ・サーバー傑作選」(2巻・鈴木武樹訳)で読める。都会の孤独を描く「晩は七時」「ひとりはさすらいびと」、ガルボとドナルド・ダックのどっちが偉大かという論争が元で別れる夫婦の話「ウィンシップ夫妻の別居」、ドライブ中の夫婦に吹くすきま風を描く「ハンバーガーを2つ3つ」、自称天才作家の乱行を描いて笑わせる「なにか言いたいこと」が優れる。これらを含む短編集をぜひ出版してもらいたい。
「虹をつかむ男」は、英題が「宮中ブランコに乗る中年男」になっているが、これは必ずしも正確ではない。この本は「サーバー・カーニバル」というベスト版の抄訳であるからだ。「空中ブランコ」の訳出であるならば、前記「晩は七時」「ひとりはさすらいびと」「なにか言いたいこと」を外しているのは問題である。
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