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読み応えたっぷり!
少年犯罪を軸にしたクライムサスペンス。もうちょっと高度なトリックと謎解き的要素があれば☆5なんだけど…まあ面白いのは確かだ。
この人の本は2冊目だけど、前回はちょっとポップな内容のものだっただけに、今回のシリアスさはぐっと来た。こんなタッチの方が得意なんじゃないか。他も読んでみたい!上巻の感想にも書いたけど、湊かなえ「告白」が好きならオススメ。長いけどね。
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全ては「自分勝手な大人に振り回される子供の話」
悲劇でした。
とんでもない運命を背負った三人の子供たち。
作者がこの作品を通して伝えたかった事が何なのかは分かりませんが、
私はこの三人が可哀想でなりません。
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【少年院を出た彼は本当に更正できたのか
久藤美也は自分の容姿や頭脳が凡庸なことを嫌悪している。頭脳は明晰、経済的にも容姿にも恵まれている葛城拓馬だが、決して奢ることもなく常に冷静で淡々としている。神原尚彦は両親との縁が薄く、自分の境遇を不公平と感じている。〈上巻〉第一部ではこの3人の中学生が殺人者になるまでを、その内面を克明にたどりながら描く。その3人が同じ少年院に収容されて出会うのが第二部。過酷で陰湿な仕打ちで心が壊されていく中、3人の間には不思議な連帯感が生まれる。〈下巻〉第三部。少年院を退院した彼らはそれぞれ自分の生活を取り戻そうとするが、周囲の目は冷たく、徐々に行き場をなくしていく。そして、再び3人が出会う日がくる。 少年犯罪を少年の視点から描いた、新機軸のクライムノベル。】
上下巻合わせてずっしりと読み応えありの作品でした。
いわゆる普通のヤンキー久藤、お金持ちで頭脳明晰の美少年葛城、親に捨てられ祖母と叔母に育てられた神原。
どこにでもいるような3人の中学生がそれぞれに殺人を犯してしまい、少年院へ。
上巻は3人が殺人を犯すまでの過程と、少年院でどのように過ごしていたかを。そして、少年院から出てきた3人がまた出会い、風当たりの強い中どのように生きていくのかを下巻で描いている。
3人の背景がかなり細かく描かれていて、単純に「どんな理由があろうとも殺人は許されない!」と声高に言えないような感情が湧きあがる。
とは言え、「仕方ないよね。」とは到底言えないんだけど・・・。
少年法が改正される前の話なので、彼らは1年もたたず少年院から出てくるけど、殺された遺族としてはたまらないんだろうな。
柏木父の復讐の仕方からそれが痛いくらい感じられる。
14歳という年齢を考えればそれもアリかと思う反面、久藤や葛城の潔さや割り切り方をみるにつけ、神原のずるさにはイライラさせられました。それでもやっぱり、最終的に死んでしまった神原を気の毒に思うし、お金を奪った2人に肩入れは出来なかった。
そして、葛城の父や神原の母の自分勝手な子供っぽさにも呆れた。
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少年院卒院後の3人。殺人を犯してしまった反省という気持ちを持たずに世間に出されてしまったために、身の回りに起きる全ての事が、「自分は悪くない。世の中が悪い。」と思いこみ、さらなる罪へと導いている。
特に、神原には最初同情の余地もあったけど、徐々に心底悪へと向かい始めると、少年とはいえ、恐ろしかった。
結局、瘴気に飲み込まれてしまったんだろうけど、誰でも持っているかもしれない瘴気を、封じ込める気持ちがもう少しあれば、更生の余地もあったんじゃないかな。
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3人の未成年の主人公がいる。なぜ未成年が罪を犯すのか、そして犯した罪は償えるのか。大作である上に、陰惨な場面の連続がある。思わず目を逸らしたくなる場面でも、ページをめくる手が止まらなくなった。読者はストーリーの途中からハッピーエンドはありえないと理解している。用意されている絶望的な結末に向かって、これだけ読ませるのは少年であるが故の希望を汲みとらせる設定、作家の技量に期待して、ある種の裏切りを期待させるからであろう。少年院という閉鎖された空間で起こる出来事。これが本当の贖罪になりえないと作者は言う。出所後、被害者家族に謝罪することを躊躇する主人公の一人の姿がとても印象的だった。贖罪とはなにか。自分の創作した姿に乗っ取って、提示するだけで、あえて声高に叫ぼうとはしない。そのことがこの大作のエンディングのやるせなさを忘れがたいものとしている。
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殺人者となった少年は更生できるのか。後悔はしていない。罪を償ったとも思っていない――再スタートを切った三人の挫折を鮮やかに描き出す新機軸ミステリー。
上巻ほど文に引き込まれなかった。
人を殺したら、その人を大切に思う人から恨まれて当然だと思っている。社会から排斥されても仕方がないと思っている。共存共栄?そんなのは特別な理由がない限りは無理だ、と。なのに、この小説に出てくるキャラクターの不遇ぶりに「やりきれない」と感じている自分がいる。拘置所で苦しんで、社会からも排斥されて。特に久藤に対して「やりきれない」と感じた。
女の人と関係を持って、殺して。報道でもされたら「生きてる価値あんのかよサイテー」と思ってしまうような人にどうしてそう思うのだろう。
きっと、「犯罪を犯したことなんて忘れられないんだから、それに縛られながら生きてくしかないんだから、ただでさえ少ない居場所を奪ってやるなよ」って思ってる。要約したら「可哀想」の三文字に尽きるんだけど。
「どうして人を殺しちゃ駄目なの」――そんなことを考える時期(中2病状態の時とか)に読んだら、今よりももっと、ずしりと重い何かがのし掛かってきただろう。そんな本だった。
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労作であり、大作。
殺人に至る少年の境遇、心の動き。そして、彼らが少年院やその後の社会で起こる出来事を受けとめていくさまを丹念に組み立てていく。
物語としての出来栄えではない。むしろ、子どもの世界を丹念に描き、希望や脱出の手掛かりを失いながら相互作用していく。3者の描き分け、そのリアリティと筆力に脱帽です。
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殺人まで起こした主人公たちが次に手を染める犯罪がスケールダウンしていて、その点はスリルが削がれた。
しかし著者の少年犯罪に対する考え方は一貫しており、それが物語を通して明確に語られていた。
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卒院後のお話。上巻は苦しくて重々しかったんだけど、下巻になり、銀行強盗の話が出てから、エンターテイメント性は増したんだけど、少しテイストが変わった感じがして残念。瀬田との関わりがしっくりこず・・
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久々に長い話しをいっき読み。
中学生男子の衝動というか、熱気、狂気を感じつつ、どこかで3人とも正気で、その正義はまちがっていないのでは?と感情移入させられる文章に完敗。
面白かった!
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上下巻を読み終わっての感想です。
「乱反射」・「慟哭」と読んでの3冊目の著者の作品。読後の遣り切れなさは共通しています。
上巻、主人公3人のそれぞれの物語は、それだけで1作品にしても良かったんじゃないかと思えるほど作りこまれているように思えました。全くの平凡な自分から見て、3人の辛い境遇やその運命には共感できるはずがないのに、それぞれに感情移入してしまいました。
ちゃんと伏線の回収などもあり、畳み掛けるような後半への展開は小説としても面白かったです。
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読後感の悪さといったら……!
この中で一番性質が悪かったのは、やっぱり神原だったのかなあ、と思います。
一番マトモに見えて一番ずるく、変な感じになってしまったんだろうなあ、と。そもそもの殺人の動機が、よかれと思ってやっているからですね。
しかし、最後彼女がかわいそうだったな。
本来なら美談で終わりそうなものを、葛城との絡みにより「騙された子」みたいな扱いになってしまっているあたりが憎い演出ではありましたけど。
久藤はマトモになった、とはまた違っていましたが、悟りを開いている幹事はありましたね。
最後の最後ではすべてを受け入れている風情でもあり、純粋ではないにしろ、軽くでも待ってくれている人、が居ることにちょっとした安堵を覚えていたように思います。
そして、葛城。葛城はなー、正直一番良い感じの人生をこの後送れたんじゃないか?と思えました。
父親との和解は難しいでしょうが、それでも再度捕まることもなく、安寧に人生を終えそうな気がします。
まあ、それが幸せか如何かとなると、別次元の話にはなりますけど。
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とにかく上下とも合わせて重くて長かった~。
なんとか読み切ったよ。
なんとも救いのない感じがあるが当たり前かもしれない。
未成年とはいえ殺人を犯した人間が
まっとうな暮らしをしていくのはかなり難しいっていうのが
ひしひしと伝わってくる。
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少年犯罪の加害者側からの話。
三人の主人公を取り巻く環境、犯罪、少年院、その後の生活・・・
骨組みがしっかりしている。
特に興味を持ったのが主人公が抱える”瘴気”
(主人公の一人が瘴気と名付けた黒い感情)
瘴気とは何か、どこから来るのか、それに打ち克つには?
つい答えを求めてしまった。
教えてほしい。私が抱える瘴気もどうすればいいんだろう。
主人公たちの転がるように転落していく様はリアルで、
一回垣根を越えてしまった後の世界を教えてくれる。
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下巻は院を出た後に再び3人の少年が出会い犯罪に再び手を染める。上巻に比べるとエンターテイメント性がありテンポ良く進む。神原の印象がガラリと変わって行くのが興味深い。弱くて狡くて卑怯で。ムカつくんだけど、いちばん心に刺さる。先生の父親の話がいまいち心に響かないのは主人公に感情移入させられたからか。彼の最後に安心して少しホッとした。上巻で先の見えない重苦しさにどっぷり浸り、下巻でその気持ちもそれぞれの道に分散され、思ってたより後味は悪くなかった。でも上巻に力強い熱があっただけに、銀行強盗のとこや瀬田の印象が少し軽かったのが物足りなく感じた。