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またぞろ共謀罪という化物の法案が霞ヶ関に顔を出して来た。様子を伺って、いけるようだったならば一気に持って行こうとしているのは、明らかである。
過去1番共謀罪法案が成立しそうになった2006年に発行された解説書です。その当時の国会議員として闘った保坂さんの解説と、弁護士の海渡さんの解説は、だから、かなり実際的で現代でも有効である。
安倍晋三は、Xデーを待ち望んでいるように思えてならない。国際テロで、日本で日本人に多くの犠牲者が出る日である。その時にいっきに改憲に持ち込む、或いは共謀罪を成立させる。そういうシナリオを考えているのではないか。
しかし、ここに書いているように、どんな理由をつけようとも、共謀罪は人の心の中を裁く法律であり、作ってしまえばおしまいだ。
2006年の時にはテロとは関係のない619種類もの犯罪が対象になった。「共謀罪というと、たったひとつの新法ができるのではなく、刑罰法規の新体系が出来上がるのです」(17p)
国会で法務省は、『「犯罪を共同の目的とする組織的犯罪集団」が具体的・計画的に犯罪の遂行を「共謀」した時に共謀罪が適用されるので、一般人には関係のない』と説明しているようですが、そもそも純粋に「犯罪遂行」を目的として結成された集団など存在するでしょうか?(31p)
その通りだ。それを調べるために、日本の公安・警察は、市民グループのありとあらゆることを調べ上げて、更には「目配せしただろう?」というだけでしょっ引いていくだろう。
海渡さんは、日本の刑法体系には既に数々の「組織犯罪対策」の立法が存在していると言う。
(1)殺人、強盗、放火、身代金目的誘拐などの人命・安全に関わる重大犯罪については予備の段階から処罰が可能だそうだ。爆発物関係は共謀の段階から処罰が可能だそうだ。
(2)凶器準備集合罪は、かなり広範な暴力犯罪の準備段階を処罰できる。
(3)住居侵入罪は、窃盗の未遂以前の段階の処罰を可能にする。2003年施行の「特殊解錠用具の所持の禁止に関する法律」は過剰処罰の批判もありますが、未遂以前の処罰を可能にしている。
(4)アメリカで共謀罪が発展しているのは、銃の合法化が重大犯罪に結びつきやすいという背景がある。
字数の関係で詳しく書けないが、そういうことで、テロには今でも十分対処できる。
海渡さんはあとがきで「極端な治安強化のための立法は、社会的な混乱を広げて、テロと犯罪の危険性をさらに激化させる危険性すらあります」と書いている。私もそう思う。