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♪雲と一緒に あの山越えて
行けば街道は 日本晴れ
おいら旅人 一本刀
「お控えなさんせ」「お控なすって」
腕と度胸じゃ 負けないけれど
なぜか女にゃ チョイと弱い
「てなもんや三度笠」
作詞:香川登志緒 作曲:林伊佐緒
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2月17日、あんかけの時次郎こと藤田まこと死す。
死の翌日、家中のありったけの『必殺仕事人』や『京都殺人案内』などの彼の出ているDVDを見まくって、ひとり弔いました。
リアルタイムじゃないVTRでしか見られない時代も含めて、あんかけの時次郎→中村主水→音川音次郎→安浦吉之助→秋山小兵衛と、常に私たちを魅了してくれた藤田まことですが、実は彼は芸達者でも才能豊かでもなんでもなく、ひとえに貪欲な努力の人だったということです。
歌手志望でディック・ミネに弟子入りしたのがスタートで、中田ダイマルのかばんもち、声帯模写、漫才師の司会に、そして時代劇コメディドラマ『ダイラケのびっくり捕物帖』と『スチャラカ社員』を経て、伝説のコメディ番組『てなもんや三度笠』(全309回放送、平均視聴率37,5%、最高視聴率64,8%=関西)で大ブレイク。
1973年からの必殺シリーズでは、中村主水役に抜擢されたといっても、監督からは、ヘタだのまずいだのと山のような苦言を浴びせられて大変な苦労をして役作りに励んだ結果の成功だったといいますから、そのとき彼は40歳、5年前には言ってみればコメディで大スターになった身ですから居直ることもできたはずが、内心忸怩たる思いを跳ね除けて、いわば果敢に挑戦して、本当の意味で主役を手中にした、もぎ取ったといってもいいでしょう。
76歳の死は、やはりまだまだ早すぎたと思います。もっともっと枯れたときの、それこそ笠智衆の境地に匹敵する別の何かを見たかったのですが。
〆は、もちろん中村主水の台詞で・・・
・・・こんな世の中じゃあ、おちおち死んでもいられねえや
・・・一年365日、鵺の鳴かぬ日はあれど、悪人笑わぬ日とてない・・・南無阿弥陀仏