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歳時記の本は世に多々あるが、どれもたいがい事典的で、そりゃ役には立つんだけど、読み物としてはあまり面白いようなものは少ない。この本だって、その類ではあるのだが、なんと漫画である。漫画は好きなので、別にそれをどうこういうつもりはない。神山アキコ氏の画風は残念ながら好みではなかったが。
建築家と歳時記。どこに接点があるんだろうというのが不思議で、しつらい(室礼)がもしかして接点なのか?とこじつけてもみたが、あとがきにご本人の解説があった。もともと民俗学は個人的に研究されていたとのことで、ふところの深い方である。
接点がよくわからないと言ってしまったが、両者を結び付けているキーワードと言っていいものは「想像力」である。江戸時代ぐらいからだんだんとより形式的になり、中身が抜かれていった様子があるが、日本人が古来、陰陽道や仏教や固有の民俗に基づいて執り行ってきた儀式は、先祖や神といった想像物、あるいは自身や家族、周りの人々の健康、病気、災厄などといった現象の原因、そういったものに様々な「想像力」を働かせて考え出されてきたものだと言える。
ただ単に、要望を聞いて、設計して、建築した家を施主に渡しておしまい、というだけでは何かむなしい。その家という空間においては、かつて行われていた「まつり」「しつらい」というものがあり、そういうものも家づくりの仕事の中に込めたいのだ、という思いから本書は生まれている。
背景を理解すると、本書の意図がよくわかり、読み物としてもより面白いと感じられた。