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紙の本
「さて、われわれのために、ほかにどんな爆弾をもっているのかね、キップ?」
2007/12/31 09:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:成瀬 洋一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
44歳の製薬会社セールスマン、キップ・ドーソンは極めて平凡な人間だった。家庭内にはトラブルのタネを抱え込んではいたけれど、あくまで良き夫、良き父親であろうとするアメリカ市民の1人でしかなかった。けれども宇宙飛行の無料招待枠に当選するという望外の幸運と、その宇宙船が事故によって漂流するという未曾有の不運に見舞われたとき、彼の人生は変わった。
地球を4周するたった6時間のフライトにすぎなかったはずが、地上との通信は途絶し、メインエンジンも作動せず、キップはたった1人で地球軌道上のイントレピッド号に孤立してしまったのだ。残された空気はおよそ5日分。
しかし旅行を主催するアメリカ・スペース・アドベンチャーズ社(ASA)の所有するもう1機の宇宙船は着陸装置の修理中で動かせず、予算削減が続き2隻のシャトルを運用するだけのNASAには救助用シャトルを打ちあげる余裕はなかったし、民間企業の事故はむしろ歓迎すべき事態だった。
キップにできることは彼の死後、もしかしたら50年ほど先の誰かが読むときのために、思いつくままノートパソコンに文章を綴ることだけだった。
前妻の死後、すっかり疎遠になってしまった息子に告げたかったこと、死んでしまった自分の父親に伝えたかったこと、今の妻への率直な気持ち、初体験の思い出……。
しかし彼が知るよしもないことだったがデータ送信専用の回線がわずかに生きていて、彼の打ち込むキーの1つ1つが救出作業に奔走している地上に送信され続けていたのだ。
宇宙空間を舞台とした作品ですが、SFではありません。事故機に取り残されて死を待つしかない乗客と懸命に救出作戦を模索する地上チームの物語という定番の航空サスペンス小説です。NASA主任宇宙飛行士は組織の決定を覆して救援機を打ちあげられるのか、地上から監視を続けるNORADは行く手に立ちふさがる障害物に対応できるのか!?
けれども、この作品が他の航空サスペンス小説と異なっているのは、主人公キップが他人が読んでいることを意識しないまま自分の妄想や赤裸々な回想を書き続けているという点です。そして、いつしか彼の書きつづる言葉のすべては、世界中の人々が我がことのように追い続けるものとなっていきます。
まさに、星の海で中年セールスマンが語る自己再生の物語なのです。
紙の本
SFというよりサスペンス小説。
2012/03/23 12:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:霜柱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代は今よりほんの少し未来、地球低軌道を回る宇宙船への切符が懸賞になる時代の話。
主人公は妻とは離婚寸前、息子とは分かり合えず喧嘩ばかり、そんな日常を送っていた普通のアメリカ人男性。
民間の宇宙体験旅行サービスが当選し、宇宙に憧れを持っていた主人公は嬉々として宇宙へと行く事を決意します。
他の乗客が全員都合によりキャンセルする中でもその決意は変わらず、宇宙飛行士と2人だけで地球低軌道へ。
が、地球低軌道へ乗った途端に、極小の流星体が機体と宇宙飛行士の頭部を貫通。
重要な機器がつまった機関を破壊し、地上との交信が不可能な事態へと陥ります。
必死にマニュアルを調べ、機体を反転させ、メインエンジンを動かそうとするもビクともせず、手詰まりのまま待ち受けるのは、およそ5日後に確実に訪れる己の死。
絶望を悟った彼はラップトップに向かい、これまでの人生の事、後悔している事、家族の事、様々な事を書き綴って行きます。
しかし、そのラップトップにはスパイウェアが混入しており、彼の意図せぬままに彼の書く文章は地球へと届き、アメリカ中、地球中の何億という人間に伝わり世界を動かしていく……
という感じで始まるややSFっぽいサスペンス小説です。
自分が大分歳を取ったせいか、妙に泣けてくる部分が多かったですね。
まさか他人に伝わってると思わずに書かれる、いつか読むかもしれない未来の人々に向けて語られる言葉。
何故自分は先延ばしするだけで親への親愛の情を直接にでも電話を使ってでも届けなかったのか、息子と分かり合おうとしなかったのか、愛していると言えなかったのか。
数日後に死が待っているという状況で語られるその言葉が、何とも琴線に触れるのです。
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