紙の本
このところ激辛の論評を加えてきた石原慎太郎が激賞した喧伝されたが拝見すれば奥歯にものが挟まった「激賞」ですね。これって都知事選を控えた慎太郎が若者受けを狙ったパフォーマンスじゃあないだろうか。
2007/03/19 20:10
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第36回芥川賞受賞作である。
BK1の本書紹介にはこうあった。「東京で暮らせるのであれば、なんだってよかった−。20歳の知寿が居候することになった遠い親戚の71歳の吟子さんの家。ふたりが暮らした春夏秋冬をとおして、ヒロインの自立をしなやかに描く。」
読書を趣味にしているとは思えない友人が「読んだか?なんだか退屈な日常生活をだらだらと書いただけであれが芥川賞か」と厳しいご意見を口にされた。そこで手にしたわけだがなるほどその率直な指摘は必ずしも的外れではない。我々の年代はどうしても自分やその周辺の具体的な軸足で主人公を眺めてしまうものだから、このわたし・知寿ちゃんのような未熟な人格が一人前であるべき20歳だということにあきれ返ってしまうのだ。本音を言えば仮に自分の息子・娘がこういう人間だとしたら困っちゃうのだ。友人の場合、思考はこういう主人公を少なくとも無批判に描く著者とこの作品を高く評価する選考委員の方々にまで飛躍してしまうものだから、芥川賞の存在にまでけちをつけたくなるのだろう。そういうもはや変えようもない固定観念では芥川賞を読む資格はないのかもしれないなぁ。
今回もまた「自立」なのか。おなじみの自己喪失、アイデンティティクライシス、閉塞感。おなじ線上にテーマを置いた受賞作がこのところ多かった。その突破口に暴力や性倒錯があるのが流行なんだが、この作品にはそんな過激な飛躍はない。
ところで昨夏の全国高校野球選手権で優勝した早稲田実のエース斎藤佑樹(18)が早大生になるにあたって「自分探しの4年間にしたい」と抱負を述べている。ハンカチ王子ですら「自分探し」!!!と哲学的表現するくらいだ。自分探しって本当は難しいことなんだと思うのだけど、自分探しの旅に出ようって気楽に引越したり職場をかえる。いや若者はこれが風潮なんだ。ニートってこんな精神状況の産物なのかな。
生きていることを実感するなんてことはない。せいぜい死んでいないことをぼんやりと自覚するレベルで毎日が繰り返される。事故死の現場を見てあんな死に方はしたくないからと生きているのだろう。外の世界とのつながりは部屋の窓から見える駅のホームだけ。働く、恋をするのだけれどその現実感のいかに希薄なことよ。
吟子バアサンはなかなかのくわせものだ。転がり込んでくる猫に餌をあたえて一緒に暮らし、死んだあとの猫たちの写真を立派な額縁に入れてずらりと鴨居に並べてある。だが名前は忘れてしまったそうだ。思い出にもならない存在だったんだろうね。猫がねずみをとってきて目の前でなぶり殺しにしていてもやめなさいと手で払うふりをするだけ。実はこの作品のなかで一番生命存在を感じさせるのがこのねずみをいたぶる猫かもしれない。食い物には困らないので餌にするのではない。我輩ここにありと娘とおばあさんの前でその存在を主張している。しかし自己主張する猫には気の毒なことであるが二人ともまるで無関心なのですね。知寿ちゃんだって、びっくりするとか気持ち悪いとかいまどきねずみをとる猫が都会にいるってことを発見した喜びなんて感情があってもいいんじゃないか。知寿ちゃん、気をつけたほうがいいよ。ちっぽけな盗癖があなた流の自己主張ならあなたは吟子バアサンに猫並の扱いをされているんじゃないかい。それこそ死んだら猫たちの写真と一緒にならべられるかもしれない。
これって本当に「しなやかな自立」のお話なの?最後まで知寿ちゃんは現状にたんたんとしています。いらいらしないんです。殻を破りたくなるようなひどいストレスを感じないのだからこのリズムに埋没しちゃって飛躍なんかとても無理だと思うよ。それにしてもこんな若者が増えてきているんだろうと、ここは実感はしますね。だから読んでいる私のほうがいらいらします。とてもとても寂しい気持ちになりました。
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七十歳の吟子さんのところへ二十の知寿ちゃんが居候でやってくる。知寿ちゃんは七十の老人のことをはじめは、もう死にそうと思う。そういうところだったり、吟子さんの恋について聞いたり、それぞれの会話が妙にリアルだ。失恋もするが、ゆるいテンポで感情が溶け出していくのを感じる。駅と電車が感情に対して効果的に使われていて、いいなあと思う。
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今っぽいんだけど、どこか懐かしくて優しい感じのする物語。
なんだか、スーっと物語の中に引き込まれ、気づいたら読み終わってた・・・
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恋愛がテーマではないのだが、恋の描写が占める割合が多かった。しかしその中身は詳しいわけでもなく淡々と進む。全体的に暗い。深い、のではなく暗い。しかし時折すばらしいメタファーがあるので惹きつけられた。おばあちゃんがとても魅力的。
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芥川賞受賞作品。全体的に淡々と進み、いつの間にか読み終わっていました。個人的に、芥川賞作家の「純文学」ってよくわからない…。綿矢りさとか金原ひとみとか。やっぱり大衆文学である直木賞作家の作品の方が好きだなぁ。
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芥川賞受賞作に僕が求めている“純文学らしさ”とは随分違う方向性だった。しかし、すごく素直な小説だと思うし、そこがすごく良いところだと思う。まだまだ長い人生での、自らがこれから歩むべき道を見つけられないでいる20歳の少女。すごく無気力なのだが、なぜかそこに言い訳がない。孤独で幼い少女の姿が、さら〜りと、季節の流れに乗せて描かれていく。日常を描き、等身大の少女を描く。妙な気取りがないので、スーッと読めてしまうのだ。
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第136回芥川賞受賞作
京王線沿線で繰り広げられるストーリー
笹塚を通過するたびに思い出すことになるかな
若い世代の息遣い感は、佐藤弘氏の「オブラディ・オブラダ」を呼んだ時に感じた物ににている
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芥川賞買いです。石原慎太郎、村上龍の両者が賛成票を投じたということもあって・・・。
内容は5歳くらいの子供の作った紙飛行機がふらふらと飛び、フワツと芝生に着地する感じです。
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最初は普通の青春小説?と思って読んでいましたが、ラストにかけて、色々と感じるものがありました。ラストでタイトルの意味がようやく見えてきて、読後感もすごくいいのです。ですが、正直「これで芥川賞…」と感じたのも確か。
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この寂しい読後感。「へえー、やっぱりこういう小説だから賞を取れるんだ」と納得。母でもない彼氏でもない、近くにいるはずの吟子さんでもない、一人にならずにすむ相手が見つからない、そして自分は一人がいやだったんだと気づく。次に待ち受けるものが最善かは分からないけど、でもここに居座ってはいけない気がする・・・知寿が家を離れた気持ちが、電車の中から必死に探してしまう気持ちが、なんだか共感できて余計に寂しいなあ。
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第百三十六回芥川賞受賞作です。
今回の芥川賞選考の時に村上龍と石原慎太郎が二人とも推した作品だということで気になってました。
文藝春秋3月号に載ってるのを読みました。
内容は、東京で遠い親戚のおばあちゃんと住むことになった20才の女の子が、孤独感を感じつつ生活していく話です。
おばあちゃんと生活しているので一人暮らしではない。
しかし、年は50も離れていて、知らない人である。
また本文の中では、女の子の彼氏が2人でてくる。
付き合ってる人がいてもどこか寂しさを感じる。
本当に一人ではないが孤独を感じるというところがリアルに伝わってきます。
通り過ぎた時間はいい思い出もあるが、忘れてしまったこともたくさんある。
その忘れてしまったことが、昔仲がよかった友達にとっては自分だったとしたら?
そうゆうことを考えると寂しくなってしまいますよね?
「ひとり日和」ではそうゆう孤独などをごく普通生活のできごととして、するりと書かれています。
とても読みやすい文章で気持ちがよかったです。
この作者は私と同じ年なのですが、こんなに上手=きれいな文章を書けるのがうらやましいです。
孤独というのはどこにでも転がっている。
それを鋭く感じるのは少しつらいことである。
いま噂の「鈍感力」っていうものは、生きていく上で必要だなぁと感じました。
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購入者:今倉(2007.3.10)
主人公の自立を描いた作品です。主人公がとてもいじわるなので、ひどー!と思うのですが、なぜか気持ちがとてもよくわかってしまうので微妙な気分でした…。とてもおもしろかったです。
佐藤:(貸出3.21〜返却3.27)
のんびりできる本でした。
時間はゆっくりだけど確実に経っていくものなので、トリアエズ前向きでいることが大事なんだと思いました。
貸出:滝口(2007.4.17)返却:(2007.5.21
)若い作家(前回綿矢りさ)どんどん読んでいきます。
貸出:田子(2007.5.22)返却:(2007.5.25)
20歳前後の虚無感が巧みに描かれていると思いました。主人公知寿はあまりいい性格とは思えないですが、自分と重なる部分もあって、ギクっとします。女子に特にオススメです。
貸出:山田(2007.6.28)返却:(2007.7.10
)とてもていねいに書かれていて、まわりの背景も登場人物も、微妙な心の動きも感じとることができました。とても良い作品だと思います。日常での行動もあえて言葉にするならこんな事だろうな..と言うことも多くて、最初から最後まで、とても楽しい気分でほほえましく読み終えました。ブッと吹き出す場面もあり、電車では笑いをこらえるのがつらかったです。 貸出:本浦(2007.8.10)返却:(2007.9.11)
おばあさんが恋をしておしゃれをしていく姿がとても可愛かったです。この本を読んでいて千寿の言動や行動がひねくれていると感じる反面、どこか同感している自分が居て不思議な感覚でした。おもしろかったです。
貸出:中山(2007.9.28)返却(2007.10.4)
淡々とした作品です。世代の違う3人の女性が登場し、それぞれ時間の使い方の違っていて、1年後それぞれの環境が変化していきます。当たり前のことですが、時間はみんな平等に、そして確実にすすんでいきます。その中でどう感じ、どう生きていくかは自分次第だと思いました。僕の20代も淡々と過ぎていったなあと振り返りおもいましたが、それはそれで、ありだと僕はおもってます。
貸出:釜井(2007.10.23)返却(2007.11.6)
帰りの電車で一気に読んでしまいました。
映画で言うと単館上映という感じですが、すごく人間らしいというか、当たり前の日常と、主人公の気持ちの変化になぜだか惹きつけられました。すごく面白かったです。
貸出:田中(2007.11.7)返却(2007.12.10)
あまりこういったテイストの本を読んだことがありませんでしたが、この本を読んで何か少しやさしい気分になりました。
貸出:清水(2007.12.18)返却:(2007.12.2
6)主人公が日々の生活の中で自分の気持ちに変化が起こってくる。変わるのは結局自分なのだが、周りの環境というのも大きな影響を与えるのだと思いました。
貸出:矢北(2008.7.18)返却(2008.9.17)
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芥川賞受賞作品。
ある春の日から、70過ぎのおばあちゃん(吟子)と一緒に暮らす事になった20歳の女性(知寿)の一年間を描く。
両方とも普段は口数が少ないので、どことなく会話がぎこちなく、さらにお互い気持ちをさらけ出さずに暮らすのが、何ともむず痒い。ドライなようで、でも寂しがり屋な知寿。多少将来に不安を感じつつ、おばあさんと暮らした一年間は、きっと知寿にとって貴重な体験だったに違いない。
心洗われる詩のような小説です。
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芥川賞受賞作。との事で・・・期待してたわりには・・。主人公の内面の移り変わりについてただ淡々と綴っているだけのよう・・
私の肌には合わなかったようです。
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二十歳の主人公知寿と、50歳離れた吟子さんとの同居生活を中心に描いた小説。色々な別れを通して感じる孤独感と、何をすべきか分からないモヤモヤした気持ちを、読みやすい文章で表現しています。(2007.3.26)