紙の本
生物が得た技術には驚かされるばかり。ミクロで見るとその驚きは更に増す。センス・オブ・ワンダーを感じさせてくれる最高の一冊。
2012/05/02 01:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
昆虫は飛べない。ご存知だろうか。いや、飛ぶじゃん!蚊も蠅も、ゴキブリだって飛ぶじゃん!と思われるかもしれない。しかし、昆虫が飛べないのは事実。少なくとも、航空力学では、昆虫はどうやっても飛べないはずなのだ。それなのに、ご存知のとおりに虫は空を飛ぶ飛行機を飛ばすのには成功を収めている理論も、昆虫には適用できないのである。
これは自然界には人間がまだ理解していないメカニズムが、まだまだ沢山あることを示している。どうやら、数十億年に渡る進化の妙は、人間にとっての知の世界より遙かに広いのだろう。
タイトルのヤモリの指にしてもそうだ。
ちょっとした郊外なら、窓の外にヤモリが張り付いているところも珍しくはないだろう。その姿を気持ち悪いと思う人も少なくはないと思う。しかし、そこに凄さを見出すことも、また容易なことである。まるで重力の桎梏から解き放たれたかのように、垂直なガラス面をよじ登る。もし彼らが室内に居たのであれば、そのまま天井を這いまわるところも観察できるだろう。
どうしてそんなことができるのだろうか?
秘密はその足にあった。顕微鏡でも分からない、ナノメートル(1億分の1メートル)の世界に。電子顕微鏡でその足を見ると、ヒゲのような微小な突起があり、この突起が表面張力でヤモリの体重を支えているのである。
ナノの世界で見られる不思議にはようやく探求が始まったばかり。そして、その世界を覗き見ることができるようになったからこそ、ハスの葉が泥水の中から現れても美しいことや、クモの糸がしなやかでかつ強靭であること、ヤモリが壁にくっつける理由等が明らかになってきた。
本書は、生物が生み出してきた素晴らしい機能と、その機能が発揮されるメカニズムを追いかけ、更には人類が如何に自然の秘められたデザインを利用しているかという知のフロンティアを説いている。
ヤモリの指やオナモミがくっつく原理はマジックテープを生んだ。クモの糸の研究はまだ実用化に至っていないが、素晴らしい世界が広がっていそうな予感を感じさせる。昆虫の飛び方を利用した機械に至っては、夢のテクノロジーだろうが、被災者のに代表されるように期待が大きい。
自然をつぶさに見ることで、かくも不思議で面白い世界が広がっているというのは、なんとも嬉しくなる話ではないか。まだまだ想像もつかないような、凄い事実を自然は隠しているに違いない。そして、いつか我々がその事実に気づいた時、創造もつかないような世界がやってくるのかもしれない。自然の奥深さと面白さを感じさせてくれる、素晴らしい本。
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走査型顕微鏡、鉄筋コンクリート等々、技術革新は新たな創造の可能性をもたらした。<バイオインスピレーション>という汎分野的、横断的科学の視野に立ち、生体がそなえる多々の不思議な能力をひもとき応用する様々な研究を紹介。
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バイオ・インスピレーションというナノメートル(10億分の1m)領域の話。蓮の花の撥水性、イモリの足の裏の接着性、蝶の翅の光の屈折性、蜘蛛の糸の強靱性等々、この領域での生物の自然な行動は、人間にとっては神秘な世界なのだ。宇宙仕様のパラボラアンテナの折りたたみ技術は、どうやら木の葉の「葉折り」のメカニズムがヒントになったらしい。
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The Gecko\'s Foot, Bio-inspiration:Engineered from Nature
by Peter Fobes
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ようやく読み終わった~
すっごい面白いんだけど、難しい。
この世の自然のなかにはものすごい法則が隠されていて、
生物というのは進化のなかでその法則を取り入れてすごい技術をつくりだしちゃってるんだっていう話。
それがいろいろあって、つながっていて、よくわかってないんだけど、すごいってのはわかる。
ハエとかヤモリとかハスとかアワビとかって実はすごいんだよ!
頭の悪さ全開のレビューだけど、感じ取ってください。
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第1章 日の下に新しきものあり
第2章 身づくろいする聖なる大ハス
第3章 自然のナイロン
第4章 天井の歩き方
第5章 自然の瞳に映る小さな輝き
第6章 自己組織化する分子
第7章 昆虫は飛べない
第8章 エンジニアのための折り紙
第9章 圧縮力と張力の建築システム
第10章 未来を(自然に倣って)設計する
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SEM(走査型電子顕微鏡)の登場や遺伝子工学の技術により、ナノ領域での未知への可能性は大きく開けた。自然が成し得た興味の尽きない仕事を、ナノテクノロジーによって人間が応用することを「バイオ・インスピレーション」と言うそうである。
「バイオミミクリー」について探していたら、青緑色のヤモリの足のデザインが美しい表紙のこの本に出会った。全編にわたって、まったく無駄のない「自然」の原理にインスピレーションを得て、しかも、それを何とか応用しようという私たち人類のワクワクする挑戦に満ちあふれている。
やもりが余裕で壁や天井に貼り付いていられるのはなぜか?
蓮の花が泥の中でもまったく汚れることのない理由は?
昆虫の翅は一瞬のうちに、どのように折りたたまれるのだろうか?(三浦折りとはこんなにもスゴイものだったのだ!)
ロボット工学から見ればハエ一匹のあたりまえの飛行ですら「奇跡」というこの分野は、いったいどれほどの可能性を秘めているのだろう。読み終わって、果てしなく胸に広がった無限の世界を思うだけで清々しい気分になってページを閉じることができた。
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まず、表紙の守宮の手(ヤモリの指)にやられます。とはいえ、ヤモリのはなしではなく、バイオ・インスピレーションのはなしです。たとえば、ファンデルワース力をヤモリで語る本であって、ヤモリをファンデルワース力で語るそれではありません。似たようなことかもしれませんが、読後感に差がでます。
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いわゆるバイオミメティック(生体模倣)技術の本.この本ではバイオインスピレーションと呼んでいる.各章,いろいろな技術の紹介があり,この分野をざっと俯瞰するのにちょうど良い.
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バイオインスピレーションの本。
テーマとしては新奇なものはなく、テレビでも紹介されているような内容もあるが、フォトニック結晶に関するくだりや、テンセグリティーに関するところは新しかった。
日本の技術(新紡績、光学迷彩、三浦折)についても取り上げれていて、ちょっと誇らしい。
クモの糸(防弾チョッキにするらしい!!)にしても、飛行ロボットにしても軍事研究という側面が強いようだ。未来の軍隊は、メカメカしいものではなく生生しいものになるのだろうか?うーん。そこらへんをとらえたSFはないものか・・・
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バイオミメティクス(バイオインスピレーションとか言い方はいろいろあるが)って言葉を最近よく耳にするので、「生物化するコンピュータ」と本書を手に取った。アイデア自体はそんな新しいものではないと思うけど、なぜ注目されているのか。
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バイオ・ミメティックスと呼ばれる生物からインスピレーションを得た技術に焦点を当てた一冊。泥の中でも汚れないハスの葉,理想のカーブを描く大腿骨,天井に張り付くヤモリの手…自然の神秘から生み出される新技術で,私達の生活はより面白くなる!
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更新世氷河期、ロータスエフェクト、蜘蛛の糸か材料科学の最高目標、サイエンス、カンブリア紀進化の加速、軍拡競争p160、ファンデルワールス力、イリデッセンス、フォトニック結晶、様々な種類の蝶や海洋生物、そして数種類の甲虫までもが(中略)ナノスケールのフォトニック結晶を使って光学的メッセージを発信していたp164、分子のレベルに近づくにつれ、分子が正確な幾何学的形状をしているがために、幾何学的な秩序が次第に頻繁に現れるようになるp222、リチャードドーキンス『虹の解体』「自然のメカニズムを理解することは、詩情を損なうということではない」科学が隠された詩情を見いだしてもいる。数百年に渡って、ウロコムシやモルフォ蝶は、人間にはわからない方法で光の進む方向を曲げていたp347、自然が著した書物は、円や正方形や三角形などの図形を言葉として書かれている、ガリレオ・ガリレイ偽金鑑識管。ただし、一部の図形は彼が予想し得たよりもはるかに複雑だったのであるがp352