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外交激変 元外務省事務次官柳井俊二 みんなのレビュー
- 柳井 俊二 (著), 五百旗頭 真 (編), 伊藤 元重 (編), 薬師寺 克行 (編)
- 税込価格:1,870円(17pt)
- 出版社:朝日新聞社
- 発行年月:2007.3
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紙の本
日本外交の屋台骨を背負った男の回顧談
2007/05/11 18:04
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
条約局長、総合外交政策局長、外務審議官、外務事務次官、駐米大使と、まさに外務省の中枢中の中枢を歩み要職に次ぐ要職を歴任した「超エリート外交官」のオーラルヒストリーである。彼はその風貌も発言(失言、問題発言)も、いわゆる「ミスの無い、そつの無いエリート」とは正反対の人である。「それほど閣僚懇談会や国会で叩かれるような失言を何度もしたら、とっくに失脚してなきゃいけないのに、(柳井さんは)物議をかもすたびに偉くなっていくというのはどういうわけですか(笑い)」と聞き手を呆れさせるほど、柳井さんは方々でその問題発言を叩かれ続けてきた人でもある。一番問題になったのは「ショーザフラッグ」に関するやり取りだが、そのほかも周辺事態法、PKO5原則問題などその失言の数は数えたらきりがないほどである。それでも柳井さんが皆に愛され、出世街道を驀進し続け、今日も尚重用されているのは、彼が強い信念を持ち深い教養と外交論を持っているからであろう。巻末に「外交と世論との関係は永遠の課題」と称する彼の味わい深い外交論が展開されている。「国民を代表する政治(家)が外交を主導するのは当然の民主主義の原則で、その際、世論を考慮しなければならないのも当然です。ただし、外交は、長期的な国益を図る戦略と冷静な判断に基づいて行うべきです。この点で、世論というものはとらえ難いものであるほか、正確な事実に基づく判断より感情に流されやすいものであることに注意が必要です」「歴史が示すとおり、冷静で長期的な判断に基づく外交が世論の批判にさらされることは稀ではありませんが、そのような時こそ外交官は信念を貫くべきです。外交官は保身を考えてはいけない職業だと思います」。この言葉は重い。私は外務省に友人が何人もいる。彼らの働きにはほとほと頭が下がる。正直、彼らほど日夜プレッシャーに耐えながら職務を遂行しうるほどのモチベーションを、もう維持する自信がない。それでも彼らは外交をすることは出来ない。柳井さんがいみじくも言っているように、外交を表立ってやるのは民主主義国家では政治家の仕事であって、外交官はその裏方に回ることがほとんどなのである。政治家には麻生太郎大臣や橋本龍太郎首相、小泉純一郎首相のような立派な人もいるが、田中真紀子や鈴木宗男のような輩もいる。それに日本を取り巻くフレームワークが大筋において固定化していた冷戦時代と異なり、現在の日本を取り巻く外交環境は日々流動化の気配を務めている。こうしたなかで、およそ報われることの少ない職場環境の中で、一攫千金の可能性も無い中で、どうやって彼ら彼女らが高いモチベーションを維持し続けているのか、思わず襟を正してしまうのである。本書の中には、いろいろ重要な事実も明かされている。例えば湾岸戦争のとき、栗山尚一外務事務次官が最後の最後まで自衛隊の海外派遣に反対した為、日米関係は非常に険悪化した(当時の岡本行夫北米一課長は、米国外交官からペルシャ湾の衛星写真を叩きつけられ『ここに映っている30隻のスーパータンカーは全部日本向けの石油を運んでいる。この船の航行の安全を守っているのはアメリカ海軍であって日本ではない。日本経済はすべて中東の石油に依存しきっている。それなのに何も協力できないというのか』と一喝されたという。岡本さんは栗山次官率いる外務省の無能ぶりに嫌気がさして外務省を辞職している)ことや、竹村正義財務大臣、田中秀征首相補佐官が日本の国連安全保障理事会常任理事国入りに反対だったこと(とりわけ田中の外交オンチ振りに関する描写は噴飯もの)は歴史の重要なひとコマとして長く記憶されるべき部分である。朝日新聞社「論座」が行っている「歴史の証言」シリーズは大変良い企画である。朝日には珍しい改憲論者でもある薬師寺克行氏の一層の活躍を期待したい。
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