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(2012.08.19読了)(2012.08.15借入)
このシリーズの4巻までは、購入して読んでいたのですが、先日図書館で続きを見つけたので借りてきました。
二つの話が収録されています。「森のイノシシ王ダイバン」「手首のないクマ」です。
「森のイノシシ王ダイバン」は、西表島のリュウキュウイニシシの物語です。
西表島の自然、イノシシの食べ物、生活圏、天敵のイリオモテヤマネコ、伝統的イノシシ狩りの方法、かつて、著者が研究対象としたというイノシシについて、現在の研究者たちの話を聞いたり、イノシシ猟について取材したりして、イノシシの一生を描いています。
「手首のないクマ」は、兵庫県丹波篠山あたりのツキノワグマの物語です。
人間の仕掛けた罠にかかり、左手首をなくし、人間に育てられた。大きくなって、人間の手に負えなくなり、山に放される。自然の中で生きてゆけるのか。
【目次】
「森のイノシシ王ダイバン」
ウリボウたち
イリオモテヤマネコとの戦い
母イノシシの最後
ひとりで生きていかねば
恵みの森
オトシヤマの悲劇
森の王者
敵ながらあっぱれ
新生への対決
「手首のないクマ」
罠にかかった子グマ
パーディ、山へ帰る
ひとりで生きる知恵
森の恋の季節
再会
イノシシと最近のツキノワグマについて
●イノシシの牙(93頁)
牙はもっぱら外的と闘うためと、食物をとる際に土を掘ったり石をどけるために使われる。興味深いのは、イノシシどうしの戦いには、けっして使われないことだ。
●リュウキュウガキ(98頁)
忘れることができないのは、リュウキュウガキを食べたときである。黄色く熟れた平べったい柿の実は、いかにもおいしそうだった。においも悪くない。下枝についている実を、ちゅうちょせず口でもぎとった。
とたんに口の中がかーっと熱くなった。数十本の小さな針が、舌や頬に突き刺さったような感じである。
●クマの食べ物(201頁)
ユリ根に加え、サワガニという動物食を発見し、パーディの食べ物のメニューは少しずつ豊かになっていた。アカガエルやミミズもおいしかった。ツキノワグマは肉食獣に属しているから、元来動物食は好きなのである。
なんといっても忘れられない出来事は、ニホンミツバチの巣を見つけたことである。
●自由の民(218頁)
なわばりをもたず、どこへでも自由にゆくことができる。だれに干渉されることもない、山の自由の民なのだ。だが、それには細かな気配りもいる。おたがいにできるだけ出会わないようにして、無用なトラブルを上手にさけて暮らしているのである。クマは視覚はあまりよくないが、聴覚と嗅覚は鋭敏だ。なにをしていても、耳と鼻だけは休ませず、警戒をおこたらない。
●学習放獣(246頁)
学習放獣というのは、要はクマをいじめ、人間は嫌な動物で、人里へ出るとひどい目に合うと教え込み、もう二度と人里へ出てはいけない、と教えて奥山へ放すのである。いじめるためには、トウガラシスプレーを散々浴びせる、ドラム缶に入れて缶を叩き、ガンガン鳴らして困らせる、腐った肉の悪臭攻めにするなど、クマが嫌がることをするのである。
☆草山万兎の本(既読)
「ゲラダヒヒの紋章」草山万兎著、福音館書店、1978.04.25
「サバンナの二つの星」草山万兎著、福音館書店、1982.06.30
「ジャングルタイム」草山万兎著、理論社、1985.02.
「星から来たペンギンの話」草山万兎著、小学館、1995.12.20
「サッカー選手アルマジロの話」草山万兎著、小学館、1996.02.20
「ボルネオ島の猿人の話」草山万兎著、小学館、1996.03.20
「河合雅雄の動物記1 ゲラダヒヒの星」草山万兎作・薮内正幸画、フレーベル館、1997.11
「河合雅雄の動物記2 カワウソ流氷の旅」草山万兎作・金尾恵子画、フレーベル館、2000.02.
「河合雅雄の動物記3 大草原のウサギとネコの物語」草山万兎著・金尾恵子画、フレーベル館、2001.11.
「河合雅雄の動物記4 三羽の子ガラス」草山万兎作・金尾恵子画、フレーベル館、2005.02.
(2012年8月21日・記)