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By 里はな (東京都)
現代のリーダーに求められるリーダーシップ像を示唆してくれる書である。
「「美徳の経営」とは、共通善を念頭に社会共同体の知を活かす経営」と著者は示している。著書のキーワードである賢慮(フロネシス)は、アリストテレスが提唱した概念である。米国の哲学者マッキンタイアが『美徳なき時代』において、これを最も重要な知として復権させた。現代のリーダーには、賢慮のリーダシップが求められている。賢慮とは、全体の善のために、その都度の文脈や状況において最良の行為を選び実践できる知恵(最高の暗黙知)であると著者は説く。賢慮のリーダシップの典型として、第二次世界大戦で対独戦を勝利に導いたチャーチル首相を挙げている。グラミン銀行のムハマド・ユヌスやホンダの本田宗一郎、エーザイの内藤晴夫、キヤノンの御手洗冨士夫、セブンイレブンの鈴木敏文にも共通したリーダーの要素があると説く。確かにポーターやバーニーの戦略論には人間的視点は存在しない。賢慮は、「実践(の論理)」と「質」の経営に重きを置く人間的視点を持ったリーダシップの要素と感じる。
毎日のように報道される現実の企業事件を横目に、じっくり腰を落ち着けて読みたい知識経営の指南書である。
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6つの賢慮型リーダーの要素は従来の欧米型、日本型リーダーと異なるハイブリッド型のリーダーだと思います。
深いです…
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野中郁次郎&紺野登著「美徳の経営」読了。予想以上に面白かった。「美徳(Virtue)」という一見精神論的な概念を起点に知識創造モデルの戦略観を発展させ、社会的な視点で理想や目的、思いをカタチにしていく実践知と、直感的な仮説推論アプローチの企業における重要性を提起している。
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丹羽宇一郎は、「会社は誰のものか、という質問があるが商法上会社は株主のものに決まっている。しかしそれは本質ではない」という。会社の本質を語るには、それが「誰のものか」ではなく「誰のためにあるのか」が視点として重要である。
本田宗一郎が部下たちの戦略計画案の場面を目にして、そんなことをやっている暇があるなら面白いものを作れ、と怒鳴った逸話が残っている。~乱暴な考え方であるが、否定できないものがあった。単に現場主義と戦略計画の世代対立ではなく、それを超えたところにある「実践知」の重要性を説いたのだ。
アップルの歴史は、いかに一般的な戦略が役立たないかの実証だ。象徴的なのはペプシでマーケティング戦略の天才とすら呼ばれたジョン・スカリーの失敗である。アップルのようなイノベーションを本質とする企業では、創造行為の実践のみが課題であり、戦略目標や一般的な分析は効用をもたらさなかった。
デザインの目的は、最小の構造に最大の意味を包含できるような、多様で含蓄のある価値やコンセプトを、最もシンプルな構造や体験で表現することである。その過程を通じて、複雑な問題解決に確かさを与え(真)、人間のための本質的な社会的便益を具現化し(善)、創造的な感性を満足させる(美)。
ソーシャル・キャピタル(文化・社会に包含された共同体の知識)を企業の価値の源泉とすることは、市場ニーズでも技術シーズでもない、第三の価値創造の源泉となりうる。つまり、伝統(文化)とイノベーション(知識創造)はこうして連結する。
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哲学でした。
「賢慮」型リーダーシップ
理想と現実を往還しつつ知を変換する、かつ清濁合わせ飲むようなしたたかさを持ったリーダー像である。
この言葉が印象的です。
補足は、安藤さんにお願いします。
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「人間中心のイノベーション」という帯に引かれて読みました。
アリストテレスの「賢慮(プロネシス)」はノーマークだった。
実践知だと、西洋も東洋もそんなに違わないんだね。
◆学んだこと
○「美徳」とは?
本質的な「人(組織)を動かす力」。(P41)
○「賢慮(プロネシス)」とは?
個別具体の場において、その本質を把握しつつ、同時に全体の善のために最良の行為を選び実践できる智慧。(P69)
○アリストテレスによる知の分類?
エスピテーメー・・・科学的な知
テクネー・・・技術・芸術などの知
フロネシス・・・価値・倫理についての思慮分別と、コンテキスト(文脈)依存の判断や行為を含む、実践の知。(P71)
○プラクティカル・シンキング?
大前提:私はある目的( )を有する。
小前提:( )が目的を実現する手段である。
結 論:したがって、この行為( )を行うべきである。(P84)
実践的推論は、目的に向けた意志決定と遂行のための推論であることを忘れてはならない。したがって、その過程では、しばしば、目的の再検討や、手段と目的との再考すら含めて、現実や状況に応じた反復や継続、あるいは行為のフィードバックによる検証や現実的議論が必要となることは言うまでもない。(P83)
○中庸?
中庸は妥協ではない。意図的に二項対立の緊張の中に身を置いてこそ「中庸」を得ることができる・・・。
行動→
直観+偶然の出会い(セレンディビティ)+α→
中庸(時中・ダイナミックな平衡感覚) (以上、P94-95より要約)
○アブダクション(直観的な仮説推論)?
演繹的推論、帰納的推論に続く、第三の論理。
プラズマティズムの創始者、米国の哲学者パースの主張(P89より抜粋)
○「賢慮」型リーダーの要素?
(1)善悪の判断基準を持つ能力
(2)他者とコンテキストを共有して共通感覚を醸成する能力
(3)コンテキスト(特殊)の特質を察知する能力
(4)コンテキスト(特殊)を言語・観念(普遍)で再構成する能力
(5)概念を共通善に向かってあらゆる手段を巧みに使って実現する能力
(6)賢慮を育成する能力 (P103)
○ライオンとキツネ?
「獅子は罠から身を守れず、狐は狼から身を守れない。それゆえ罠を見破るには狐である必要があり、狼を驚かすには獅子である必要がある。」ーーーーー君主論第18章 (P131)
○場・ハビトゥス?
社会的に獲得された性質や傾向の総体、あるいは「身体のなかに成立した社会」である。・・・感情や身体を巻き込んだ「立ち振舞」といってもいい。
○デザインの目的?
最小の構造に最大の意味を包含できるような、多様で含蓄のある価値やコンセプトを、最もシンプルな構造や体系で表現することである。
そして、デザインはその過程をつうじて、複雑な問題解決に確かさを与え、人間のための本質的な社会的な便益を具現化し、創造的な感性を満足させる。この三つはいわば真善美の追求でもある。(以上、P172)
○ミクロロギー?
ミクロなものに、マクロな宇宙が再現されているという考え方(中���元氏の命名 P222)。
◆学びたい人
科学哲学者のロイ・バスカー
経済学者のトニー・ローソン
アリストテレス
マキュアヴェリ
エピクロス
緒方貞子さん
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美徳とは、共通善を志向する卓越性の追求である。実践的三段論法のスタンスは自分たちも常に意識しているところ。実践の中で得る知を活かして前に進む。
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本を本棚に追加しました。255冊目です。ソーシャルリーディング booklook (ブックルック)の本棚に「美徳の経営」を置きました。本です。
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ソーシャルリーディング booklook (ブックルック) http://spn.booklook.jp/item/17911/