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国家公務員よりも地方公務員のほうが、多くの手当てをもらっているという暴露本のような内容でしたが、実体験に基づいた事実や丁寧な取材には感心しました。
国の一般会計と特別会計について、私が知りたい内容が書かれていたことは、この本を読んだ一番の収穫でした。「予算消化手当(4章)」に記載されていたので、目次を見ただけではわからず、読破した甲斐がありました。(p110)
・国の予算は、一般会計(80兆)と特別会計(160兆)から構成される。地方の自主財源は50兆なので、合計約300兆円
・一般会計の内訳は、税(50)新規国債(30)
・特別会計の内訳は、年金(40)財投債(20)借換債(100)
・国、地方で使われる200兆円は、名目GDP比較で40%なので、国民負担率はかなり大きい。にも拘わらず実感がないのは、社会保険料(年金、健康保険、雇用保険)は事業者が半分負担してい
るからである。
・年収500万の会社員は、所得税(15)住民税(25)社会保険料(66)、事業者負担分は本来は年収から出ているので、566=500+66稼いで、132 負担している。消費税(13兆÷6000万人=20万円)を含めると、税金は200万円近くなる。
以下はそれ以外に気になった点です。
・Drコトーの舞台になった与那国島の医師給与は、医療業務手当:月70円、年収1600万円、診療所の2階の住宅つき(住宅の部分はドラマで再現している?)(p17)
・日本国土の4分の1は国有地(p37)
・財務省は2002年から3年間で87万平米の官舎跡地を売り(1015億円)1万4000戸の官舎を世田谷に建設(p38)
・自衛官を除くと国家公務員の年収は600→825万円となる(p45)
・大卒、大学院卒の生涯賃金は3,4億円、1000人以上の大企業では4億円に対して、キャリア公務員の生涯年収は5億円(p46)
・メンテに165億円かかる41のオンライン申請システムの利用率は1%以下(p126)
・2007年に改正されたパート労働法の適用は、期間に定めなく、正社員と同じ時間働き、転勤もある者が対象である(p152)
・共済年金(掛け金の段階的引き上げ、支給額の1割減)と厚生年金の統合は2024年に終了(p218)
出版されてから2年以上、取材をした時から3年は経過しているので、もう変わっていることを願っていますが、公務員が多くの手当をもらっていかに公務員ライフを送っているのかをレポートしたものです。実際に役所に働いた著者による作品なので、書かれていることは事実だったのでしょう。昔はともかく、現在は民間企業は必死の思いでリストラをしているので、税金を人件費として使っている役所は、お金を有効に使って欲しいと思っています。
以下は気になったポイントです。
・奈良県の東京宿舎は渋谷区代官山にあり、80平方メートル家賃は2万円前後、近くの賃貸マンションは2LDKで80万円(p22)
・夕張市が破綻したのは、無計画の公共事業のほかには、財政の4分の1を占めた人件費の高さにあった(p35)
・民間企業では役員が豪華社宅に格安で住めば、家賃相当額が所得とされて税金がかかるが、大使公邸は非課税(p42)
・国家公務員の平均給料が地方公務員より安いのは、平均学歴が低いから、国家公務員の半分は自衛官(600万円)、自衛官を除くと825万円である(p45)
・男性労働者の生涯賃金は、中卒:2.2億円、高卒:2.5億円、大卒・大学院卒:3.4億円、1000人以上の企業では4億円である(p46)
・官公庁で働く給料総額は34兆円、消費税額(12兆円、5%)、公務員給料1割分は消費税:1.5%に相当(p50)
・東京の労働行政は、厚生労働省の東京労働局(ハローワーク)と、東京都(しごとセンター)の2種類がある(p66)
・2003年からの指定管理者制度により、図書館の夜、月曜日、祝日の開館が多くなった(p84)
・公務員のほうが女性には働きやすい、仕事がヒマで休みが多い、女性が権利を主張しやすい(p143)
・郵政が民営化しても、年金や郵便貯金の金が独立行政法人という名の天下り団体に流れる仕組みは変わらなかった(p178)
・2003年における大卒者の定年退職金の平均額は43ヶ月(2499万円)、キャリア官僚の場合は5000万以上(p201)
・民間企業への天下りは、出身官庁からの仕事の受注という成果をあげる必要がある(p213)