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エドウィンの紀行文は全体的にシニカルです。1930年代のスコットランドを観察した本ではあるものの、スコットランドへの旅情を誘うものではありません。資本主義を否定して社会主義に期待をよせています。戦後の英国は左傾化していったのですから、ナンセンスとはいえませんが、まあ凡庸な観察眼です。
プリーストリー『イングランド紀行』とちがって、ユーモアに欠けます。あまりオススメはできません…。
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1930年代のスコットランドを車で旅した紀行文。筆者はオークニー諸島出身の詩人。スコットランドが歴史的に内部分裂してきたことが現在のスコットランドが置かれている悲惨につながると言っている。
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エドウィン・ミュアの紀行文学ですね。
エドウィン・ミュア(1887ー1959)は詩人、評論家。
スコットランドの北に浮かぶオークニー諸島生まれ。
1935年に自動車に乗ってエジンバラからスコットランドを周遊した紀行文です。
旅行と言っても、この紀行文は趣が違います。旅の醍醐味は、異国の風土、風景、歴史的遺物、人々との交流、食を楽しむなどなのです。この紀行文は勿論それも加味していますが、視点が経済や政治に向けられている点です。
『ミュアの紀行は自伝的要素を織り込みながら、スコットランドの歴史を考察し、1930年代のスコットランドの社会状況をつぶさに観察したすぐれたスコットランド紀行です。』
と、翻訳者の橋本槇矩さんは綴られています。
ミュアは、この当時の流行の心理学に関心があり、この旅行も客観的視点からの内証しながらの紀行文です。
「結局自分はスコットランド人ではなく、オークニー人あるいは良きスカンジナビア人だからです。私の祖国はノルウェー、デンマークあるいはアイスランドのような国です」と、ミュア自身が語っているように、スコットランドへの愛憎いるまじる批判意識からの視点であるからのようです。
読み物としては、少し面白味に欠けるかも知れませんが、橋本槇矩さんのご努力により、頗る読みやすくミュアの心象も写し出されていて興味深い作品になっています。
スコットランドを考える縁にもなりますね。