紙の本
これを85歳になった人の作品だと思います?知らされなかったら、絶対に思いませんよ。ミステリとしてより、小説として立派です
2007/09/26 21:59
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
PDJの新作が出るたびに、これって未紹介だった旧作?って疑いながら手をだして、それこそ正真正銘の新作だと分って感心するんですね。この本なんか、85歳になった人のものとは思えませんもの。どう読んでも、この物語を書いた人は精々、60代、もし40代って言われても納得しますね、私。
ただし、そこらについて巻末で解説を書いている新保は85才のジェイムズの衰えない筆力に脱帽した上で、ジェイムズが「結婚はさせない」といっていたダルグリッシュに、エマという女性を与えたことや、ダルグリッシュに想いを寄せていたケイトにもよき相手を見つけたことについて、白鳥の歌と感じるといい、ジェイムズの年齢を気にしています。
年齢を感じないのは、やはり時代が現代というだけでなく、犯罪やそこに出てくる人間の行動に、今が感じられるからでしょう。まして後半でケイトが見せるセクシーな姿などは、今ならではのものでしょう。無論、ケイトの異性に対する意識のあり方も。孤島の殺人事件が単なる古きよき時代のパズラーに終らない。
でも、巻頭言に
亡夫コナー・バントリー・ホワイト(1920~1964)を追悼して。
とあるのを読むと、二重の意味で驚きます。私の勉強不足を露呈してしまいますが、まずジェイムズの夫君が今から40年以上前に亡くなっていること。彼女の作品はデビュー以来すべて読んできましたが、これは知りませんでした。そして、これが今になって本の巻頭に置かれたこと。ま、THE LIGHTHOUSE という原題のこの本、海外での出版は2005ですから、40回忌ということがあったのかもしれません。
登場人物たちの錯綜した恋物語も、ある方向が見えてきました。今回のポイントはケイト。目の前で、密に?思いを寄せているダルグリッシュのゴールインを見なければならない彼女の心の動きが、現代的で好きです。それにしても、転がり込んだ財産のことしか考えられなくなる娘、っていうのはいやなもんですね。
我が家には、娘はいても財産がないので、こういう醜い姿を見なくてすみそうですが・・・
カバー後の案内は
「詩人探偵ダルグリッシュ、孤島の謎に挑む
コーンウォール沖に浮かぶカム島。かつてある一族が私有していたそこは、現在は高級保養所としてVIPの滞在客のみを迎えていた。その島で変死事件が発生する。滞在中だった世界的作家が、無残な首吊り死体で発見されたのだ。島には被害者の娘も含めた少数の滞在客と従業員しかいない。事件の社会的影響に配慮して遠くロンドンからダルグリッシュのチームが島へ派遣されてきた。容疑者は限定されていたが、捜査は難航の兆しを見せる。事件の背後に、過去の忌まわしい歴史が潜んでいるのか・・・・・・さらには、ダルグリッシュの身に思わぬ変事が!」
です。全体は
プロローグ
第一部 沖合の島の殺人
第二部 暖炉の灰
第三部 過去の声
第四部 暗闇に紛れて
エピローグ
ジェイムズを読む楽しみも苦しみも幾歳月 ミステリ評論家 新保博久
ということになっています。これぞ巨匠、というPDJの新作、これを読んだら続きが待ち遠しくなること請け合い。著者の健在を祈ってやみません。
ちなみに登場人物も写しておけば以下のとおり。
アダム・ダルグリッシュ:警視長
ケイト・ミスキン:警部
フランシス・ベントン・スミス:部長刑事
ネイサン・オリヴァ―:作家
ミランダ:ネイサンの娘
デニス・トレムレット:ネイサンの原稿整理係
ライムント・シュバイデル:ドイツの元外交官
マーク・イェランド:ヘイズ・スコーリング研究所の所長
ルバート・メイクロフト:事務長
エイドリアン・ボイド:メイクロフトの助手
ガイ・ステイヴリー:住込みの医師
ジョー:ガイの妻。看護婦
ジェイゴー・タムリン:ボート担当
ダニエル・バジェット:用務員
ブランケット夫人:コック
バーブリッジ夫人:家事管理者
ミリー・トランター:助手
エミリー・ホールカム:一族最後の一人
アーサー・ロートウッド:執事
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『原罪』あたりから、パワーダウンしてきたかと思ったら、前作とあわせて完全復活した。(本人はそうは思ってないかもしれないが)
相変わらず、静かな筆致。そして怒涛のラスト。主人公とその周辺にいる人たちを応援したくなります。次もきっと発売と同時に買うでしょう。
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詩人にして名探偵 上司にしたい男性主人公ベストワン(私的に)のダルクリッシュ警視長シリーズ 著者85歳の最新刊です。
筆は衰えるどころかますます力強く魅力的に。孤島での連続殺人ですがP・Dジェイムス独特の暗さ・陰鬱さをあまり感じず むしろダルグリッシュの恋の行方や新しい部下ベントンの複雑な人間性 ケイトの心の動きにドキドキします。このシリーズもいよいよクライマックスかなあー。
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うわっ・・画像無し!?
P・D・ジェイムズ ダルグリッシュ・シリーズ最新刊(6月15日発行)です。
ハヤカワ・ミステリ1800番
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まったく予備知識もなく、単純に昔のペーパーバック的な装丁に惹かれてジャケ買いした一冊。クラシカルな推理モノ、という期待に応えてくれる読みやすさも◎。旅先なんかで読むのにもぴったりな気がする。
トリックをめぐる知的なゲーム要素より、キャラクターや心理描写が得意な作家らしい。同じシリーズの他の作品も読んでみたいと思わせる。それにしても83歳という、作家の年齢にびっくり!
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PDジェイムス、85歳の作品。まだまだボケてないなあ。イギリスの小さな島の殺人事件。関係者は限られ、被害者は著名な作家で嫌われ者。話は緩やかに進み、熱に浮かされたダルグリッシュがあっという間に解決する。もうちょっとケイトに活躍させて欲しかった。ダルグリッシュにもケイトにも、幸せな未来が予想される終わり方になっており、確かに「白鳥の歌」っぽいです。
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絶海の孤島という訳でもなく、
電話線が切られて連絡不能という訳でもないが、
閉鎖された島で起こった殺人事件。
2005年発表の作品だから、
SARSという単語が登場してもおかしくはないのだが、
どうも今風すぎて違和感を感じるのは私だけだろうか。
最大の山場はダルグリッシュ警視長がSARSに罹患してしまい、
ケイトが指揮をとるところか。
結局謎はダルグリッシュが解くが、
ケイトも活躍する。
そして、いよいよエマと結婚するらしい。
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英国、ミステリー女流と言えばアガサしか読んでいなかった。大好きという訳でないアガサ作品。pDジェイムズお初の当作。読み易いと言うより、知的に練り上げた熟達の味、しかも85歳の執筆というからギネスレベル。アガサと異なりトリック・殺人手法で遊ばせる流れと異なり、驚くほどの状況、キャラ、心理描写の細かさ。
最初はこの傾向が好きなので読みはじめたものの、最後の3頁くらいはほとほと疲れ果て、私の修行の取り組みをはじめなきゃと実感。
コーンウォールといや、昨今人気の英国BBCドラマが舞台の地・・風景が目に浮かぶ。
灯台というアイコン(装丁も)その島で生まれた最後の人間、しかも世界的な大作家の、奇妙な死に方を巡って蔓を引き上げ始める。
過去が見え始めるのと同時に、狭い空間の関係性。お定まりの展開に降ってわいたSARS騒動は今風。
ジェムズ一作目はなかなかのお味でした。
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イギリスの作家P・D・ジェイムズの長篇ミステリ作品『灯台(原題:The Light House)』を読みました。
『黒い塔』に続きP・D・ジェイムズの作品です。
-----story-------------
詩人探偵ダルグリッシュ、孤島の謎に挑む!
コーンウォール沖に浮かぶカム島。
かつてある一族が私有していたそこは、現在は高級保養所としてVIPの滞在客のみを迎えていた。
その島で変死事件が発生する。
滞在中だった世界的作家が、無残な首吊り死体で発見されたのだ。
島には、被害者の娘も含めた少数の滞在客と従業員しかいない。
事件の社会的影響に配慮して遠くロンドンからダルグリッシュのチームが島へ派遣されてきた。
容疑者は限定されていたが、捜査は難航の兆しを見せる。事件の背後に、過去の忌まわしい歴史が潜んでいるのか……さらには、ダルグリッシュの身に思わぬ変事が!
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2005年(平成17年)に発表されたアダム・ダルグリッシュ警視シリーズ(本作品では警視長)の第13作にあたる作品です、、、
小口と天・地が黄色に染めてある、懐かしく、心ときめく装丁のハヤカワポケミス(ハヤカワ・ミステリ、HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOK)版で読みました。
■プロローグ
■第一部 沖合の島の殺人
■第二部 暖炉の灰
■第三部 過去の声
■第四部 暗闇に紛れて
■エピローグ
■ジェイムズを読む楽しみも苦しみも幾歳月 ミステリ評論家 新保博久
イギリスはコーンウォール沖に浮かぶカム島… このVIP滞在客だけを迎える高級保養地で世界的に有名な作家ネイサン・オリヴァーが灯台で首吊りの変死体となって発見された、、、
事件の社会的影響に配慮した当局は、この、世俗から隔絶された孤島で、限られた容疑者の中から犯人を挙げるべく、地元警察ではなく、ロンドン首都警察からダルアダム・ダグリッシュ警視長、ケイト・ミスキン警部、フランシス・ベントン-スミス部長刑事の3人を捜査に派遣する… 島の滞在客やスタッフからの地道な聞き取り調査から捜査を進める3人だったが、二人目の犠牲者を出してしまう。
さらには、ダルグリッシュ本人の身にも思わぬ変事が…。
P・D・ジェイムズが85歳の時の作品… 円熟味を増して、読みやすくなった印象、、、
P・D・ジェイムズの特徴である、登場人物のきめ細かな心理描写による重厚感は残しつつ、テンポも良くなった感じで、とっつきやすい作品でした… ミステリの中でも好みの孤島モノだったこともあり、愉しく読めました。
ダグリッシュが、なんとSARS(重症急性呼吸器症候群)をうつされてしまい、ベッドから起き上がれない状況に陥ってしまったので、若手のケイトとベイトンの活躍が目立つ展開だったし、ダグリッシュは結婚しそうだったので、世代交代も考えた展開だったのかも、、、
カム島へ向かうヘリコプターの中でケイトが読んでいたペーパーバックはアレグザンダー・マコール・スミスの『No.1レディーズ探偵社』でした… このシリーズも好きなんですよねー 久し振りに読みたくなりました���