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「ぼくがキミを守ってあげる」
満を飽き締める直樹の言葉が、愛の告白以外のなんだろうか。
好きだとか、愛してるは、自分の感情を相手に伝える言葉だ。
相手の意思は入らない。
守ってあげるとは、相手を丸ごと認め、受け止めると言う言葉じゃないだろうか。
恋愛を飛び越えて、直樹と満は魂で結びついている。
復讐心に取り憑かれ、悪鬼と化して仇討殺人を犯し、
死刑囚となった満が、人生の最後に、直樹と濃密な時間を過せたのは、
不幸だった分、死を前提とした短い期間でも
本当に幸福だったんじゃなかろうか。
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死刑に対する私の考えは結局決められない。
ついに明らかになった渡瀬の真実。贖罪の気持ち、死への恐怖・・・やはり彼はかっこいい。
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たくさん泣いた。でも、わたしの中での死刑の是非は定まらないままだ。もう、定まらないのかもしれないなぁ。
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2010年8月、東京・小菅の東京拘置所の刑場が、報道機関に初公開された。
森達也は著書『死刑』の中で、死刑制度を書き明かそうとして、
制度を巡る渦の中心近くにいる
様々な立場の人々への取材を行っている。
死刑囚、被害者遺族、廃止派、存置派、国会議員、
刑務官、教誨師、元裁判官、元検事、弁護士。
その森が最初に選んだ取材対象者、それが、
『モリのアサガオ』の著書・郷田マモラだ。
死刑というこの巨大な迷路を前にして、
いったいどこから手をつければいいのか見当がつかない。
(中略)
結果として、漫画という角度から死刑の取材を始めるという
鈴木(*担当編集者)のアイディアに、僕は二つ返事で乗った。
いや、正確に書こう。すがった。 (森達也『死刑』 第一章 迷宮への入口)
存置派・廃止派のどちらだ?と森から問われた郷田は、
『敢えて言うのなら、死刑は必要だと考える。ほんの数ミリ、賛成側』と応えている。
彼を賛成派たらしめるのは、2つの想いのようだ。
①最大限に優先すべきは被害者遺族の感情
②死刑囚が、反省と人間性を得てから、刑に処されることは、
被害者遺族/死刑囚/被害者当人にとって是である。救済である。
これらの心性は作中にも影響している。
特に、主人公の刑務官・及川直輝が物語の終わりに出す、
「存置すべきか、廃止すべきか」との問いへの結論に。
(森達也はこれを、「美文に逃げたとしか思えない」と論断している)
①については、揺れるところもあるが、おおむね賛同・共鳴できる。
ただ、②については、どうしても違和感が拭えない。
モリのアサガオに登場する死刑囚たちは、
準主役の渡瀬を除いて、まるで、
悪人/善人という両極端な2つのスイッチしか持っていないように
描写されている回が散見される。
主人公・及川を挽きつけてやまない、死刑囚・渡瀬というキャラクターを
ミステリアスで魅力的な人物として際立たせるために、
敢えてそうされている部分もあるのかもしれない。
では、及川(≒郷田マモラ)の言う、『反省』って何だ?
悪人から善人にスイッチが切り替わったことを、誰が何をもってどう判断する?
この部分が、物語を完結させるために、故意に看過され、
論考の網から逃がされている印象を受ける。
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とは言え、やはり郷田マモラ氏が
凄い仕事をやってのけたことに変わりは無い。
まず、死刑制度を少しでも齧ると出てくる様々な仮定話
(「○○だったらどうだろう」「XXな場合はどうだろう」)が
漫画という枠組の中で、巧妙なファンタジーとしてシミュレートされている。
例えば、現行の死刑制度では、
死刑囚に自身の処刑が知らされるのは、執行の数時間前。
自殺をする隙を与えないための措置であるが、
これでは家族に別れを告げることも出来ない。
主人公・��川は、服務規程違反を犯しながら、
処刑が間近に迫った死刑囚の娘に接触し、執行目前に面会を果たさせる。
「死刑の言い渡しが、数日前だったらどうなる?」というファンタジーだ。
次に、刑場や死刑囚の暮らしぶりの鮮明な描写。
郷田が死刑制度を『深い森』と称し、
森達也が死刑囚を『箱の中のシュレディンガーの猫』と称したことからも
伺いしれるとおり、死刑はあまりにも不可視にされている領域が大きい。
東京拘置所の刑場公開は極めて画期的な出来事だ。
そのような制約がある中で、この精緻な描きっぷりには感服を覚える。
そして、死刑というメインテーマを少し除けてみたとしても
マンガがマンガたる故の魅力的なシーンがそこここに存在している。
2巻末の及川と渡瀬の『キャッチボール』の場面。とても映画的だ。
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理不尽と矛盾と不可解と匿名性が渦を巻く、
深淵の奥にひっそりと、しかし確実に存在している死刑。
そこに分け入ろうとするなど、とてつもない勇気なんじゃないだろうか。
私ならその入口に立つことを考えただけで心が挫けてしまうのだが。
主人公の姿は、著者の投影であると一概には言えない。
しかし、及川の清々しく意思的な言葉には、
著者に拍手を送りたいような気分にさせるものがある。
【僕にはあなたが分からない…理解できないから知りたいんです!】
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図書館の本
及川と渡瀬の物語の最終章。
人を殺すにも、心理的な動きが必ず伴い、その後悔い改めるまでも気持ちの起伏がある。
渡瀬の全てを知り、親友となり、最後を見届ける。
死刑制度についてはいろいろあるとは思いますがいろんな視点から考えさせられた本でした。
わたしは刑務官の負担をもっと考慮するべきではないかと思うのです。
仕事とはいえ人を殺す仕事なのに、軽んじられているような気がします。
薦めてくれた義妹に感謝。
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3巻くらいからヒートアップします。
死刑の話。
これ、読んどいた方がいいよ。すっごい色んなこと考えさせられる。
なんのためにある?
いいの?悪いの?そもそも死刑って??
及川という新人刑務官が8年後、親友を死刑に処するところから始まります。
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心の深い深いところからこみ上げてくるものがありました。
一言“感動”という言葉では終わらせられない重い作品だと思います。
まだまだ人生経験の浅い私なので、今まで様々な漫画や小説などに触れてきても「考えさせられる作品」という言葉を簡単に使ってはいけないと思ってきました。
でもこの作品は、読者も一緒に考えなくてはならないと本気で思わせてくれました。
こんなにも一つのテーマについて自分の意見というものを考えさせられたのは初めてです。
正直、読み終わった今でも死刑はあるべきなのか否か、解決策は無いものか、色んな事が自分の心の中に残っています。
覚悟を決めた渡瀬が「生まれ変わったら一緒に野球をしたい」という言葉から手の震えが止まりませんでした。
郷田さんの絵はとても特徴的で、でも人それぞれの細かい表情作りがとても上手だと思いました。
郷田さんの作品を読んだのは、これが初めてだったのですが他の作品も読んでみたくなった。
私はこの作品と出会えて本当に良かったと思った。
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死刑という問題を題材にした、というよりも、死刑にまつわる群像劇。
郷田マモラの作品はついつい読んでしまうのだが、いつもの情報量と影の濃さにどっと疲れてしまう。
決して文字量が多かったり説明が過多だったりするわけではないし、恩着せがましく何かを問うてくるわけでもないのだけれど。
生々しい主人公の弱さも、泥臭い登場人物の人生も、深く共感できはしないのに読み終えると流れた時間分の疲労が伴う。
考えるより隙もなく、いつのまにか脳に何かが足されてしまう作品。
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このかたの漫画の線は震えている?なにかで心を刻まれるようで読んでて苦しい…。最初は主人公男二人の強い結びつきの漫画ということで腐った期待で読み始めました。しかし後悔しました。それ以上の感情が押し寄せてきて、まだこの森の中をさ迷っています。
今では抑止力にすらなっていないような死刑制度ですけど…やはり死刑は必要だと思う(冤罪は怖いけど)
犯罪者は本当に反省できているのか?裁判での様子をネットやテレビで伝え聞く限りではそんな理想的な犯人像なんて想像できない。しかもなんで死刑にならないのかと憤りすら感じる。本当に自分のおかした罪を、被害者を思い、心からの謝罪をできるようになるのは、死について(自分の死について)恐怖を覚えるところから始めるしか究極ないんじゃないかと思う。「人を殺めたら死刑」と単純に子供の頃は思っていたけど、実際は案外簡単には死刑にならないものだなぁと愕然としてしまう…。
でも…、死刑は必要だ!税金の無駄だ!と無関係な人間が無条件に無責任に叫んで済ませられるものでもないと…この物語を読むだけでもその言葉の重みを考えることができると思う。
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評論文読書案内から。内容は、死刑についての真摯な論考で、一読に値するもの。だけど、絵がどうしても…。マンガという表現形式を取っている以上、内容の良し悪しもさることながら、絵の好悪はいかんともしがたい。かといって、作家さん的には類を見ない画風ってのも重要ポイントなのだろうし、なかなか難しいところですね。