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淡々と語られる。『ギフト』から20年程度後、文化的に洗練された学問の街とも言える都市が、騎馬民族に蹂躙され圧政で抑圧された状態の中で始まる物語。主人公の少女、メマーは典型的なヒロインとはほど遠いのは、ル・グウィンの作品らしい。脇役だがオレックとグライも重要な役で登場。オレックのギフトがようやくはっきりと分かる。
キリスト教徒やイスラム教徒が侵略を繰り返して土着の文化破壊を行ってきたことへの批判も込められているという見方も出来る作品。
短編集で、オレックとグライの旅の物語ものも期待してしまう。
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文字を邪悪なものとして書物を持つことを禁止するだなんて、私には耐えられない!伝承もとても素晴らしいものだけど、形に残しておかないと、後に伝えるのにも限界があるんじゃないかなぁ。
2008/2/28
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秘密の部屋へ進む冒頭の描写と、オレックとグライに出会うまでの前半部分は、本当に素晴らしい。でも、後半になると、設定や思想、意図など、なんやらかんやら混沌として、全体としてはポッカリ穴があいているような。うむむむむ。『ゲド戦記』もそうだけど、突如あらわれる「男とは…」という思想は、苦手だなぁ。(2008.9.15)
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何故か第一作の『ギフト』が見当たらないのでこっちを上げておく。
三部作だそうなので楽しみに待っています。ちゃんと時間を取って、大事にゆっくり読むつもり。
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さすが、ル・グウィンの作品!…と言いたいほどに、奥の深いいいお話でした。とてもシビアで温かな作者の視線を感じると言うか、とにかく人物が魅力的でした。
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前作「ギフト」から、根底に流れるテーマは変わらず、より深みを増している気がします。
文字を読める、書ける、ということの素晴らしさ。
本を読める、というのは私達に与えられた素晴らしい“ギフト”なのだなぁと思いました。
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ここにレビューを書きました。
http://blog.goo.ne.jp/luar_28/e/cdd34354af16010e774fd266e12db66f
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小野不由美さんの十二国記を思い出しました。
女の子が主人公っていうのもあるのかな。
気になるのは、この本はいくつくらいの人を対象に書かれているのかってトコ。
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「西のはての年代記」三部作の二作目。
ル・グウィンが80歳近くなってから書き始めたシリーズで、若々しい知性とパワーに圧倒されます。
一作目から20年後、南の国アンサルの首都が舞台。
オルド人に侵略され、見る影のない荒廃した姿になったアンサル。
砂漠地帯で一神教を信じるオルド人は、武力に優れた民で、口承のみで文字を持たないのです。
アンサルの都は交通の要衝で、かっては大学や図書館でも有名でしたが、駐留するオルド人は文字は邪悪な魔物として、本をすべて水中に投じます。
ガルヴァ館に住む少女メマーは、オルド人の落とし子。
ガルヴァ館の娘だった母がオルド人の兵士に襲われて生んだ子で、もしゃもしゃの羊のようなオルド人の髪とアンサル人の黒い目を持っていました。
事情をよく理解していない幼い頃から隠された図書館に出入りし、「読み手」として「道の長」の教えを受けながら成長します。
お告げの家であるガルヴァ館はアンサル人の精神的な支柱だったのでした。
前作の2人がすっかり大人になって登場。
著名な存在となっているオレックとグライはオルド人にも一目置かれ、民人の尊敬を集め、反乱の指導者に担ぎ上げられそうになりながら、慎重に場を選んでいきます。
一途なものを秘めたメマーはまだ男の子のようでさばさばした良い子だし、才能溢れるオレックとりりしいグライの夫婦が素敵。
緊迫した情勢の中でも次第に、親のないメマーと彼ら(それにハーフライオン!)が仲良くなっていくのは切ない幸福感があります。
一作目の「ギフト」では家に伝わる超能力が問題でした。
家を継ぐようなギフトではない才能のあるオレックが詩の語り手として自らの人生を見い出した今、民族全体が抑圧された状態で育った17歳のメマーは、お告げの家の役割を知るのです。
アイルランドや古代ローマを合わせたような構造の世界ですが、お告げ(ヴォイス)のファンタジックな意味合いはル・グウィンならでは~圧巻です。
前作の民話的でもあり荘重でもある雰囲気とはまた違って、社会が変わっていく活気と希望があり、グウィンにしてはわかりやすい方の作品といえるでしょう。
オルド人も一枚岩ではなく、アンサル側にも考えを異にする色々な人がいる…
安易な押しつけや暴力への根強い「NO!」の意志が感じられます。
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ゲドシリーズよりも判りやすい(とっつき易い)かもしれない。
一冊目を読んでいなくても楽しめる。
自分の好みでは1ギフトよりもこちらが、更に面白かった。
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「西のはての年代記」の第2作。作者が80歳近くにして紡ぎあげた新たな作品世界の豊かさは、「ゲド戦記」シリーズを超えていると思う。年齢を重ねて枯れることなく、ますます瑞々しい作者の言葉の力には敬服する。
図書館で名高かった都市国家アンサルは、他国の侵略により、本を読むこと、文字を使うことを禁じられる。
焚書から逃れた書物を密かに守り続けるアンサルの長、秘密の部屋で彼から文字を習う主人公の少女メマー、アンサルを訪れた当代随一の詩人オレック。メマーにとって父とも師ともいえる2人との交流は、アンサルの運命を動かし、やがて独立闘争へとつながる。
全編を通して、言葉を読み、話すことの素晴らしさ、その巨大な力を教えられる思いがする。
「男は女と比べると、人間を生身の肉体をもつ命としてではなく、数として――頭の中の戦場で思いのままに動かす、頭の中のおもちゃとして――とらえがちなのではないだろうか。この非肉体化によって、男たちは快感を感じ、興奮し、行動したいから行動することをためらわなくなる。人間を数として、ゲームの駒のように操縦することを何とも思わなくなる。その場合、愛国心とか名誉とか自由とかいうのは、神に対して、そしてゲームの中で苦しみ、殺し、死ぬ人々に対して言い訳をするために、その快感に与える美名に過ぎない。こうして、そういう言葉――愛、名誉、自由――は、ほんとうの意味を失い、価値が下落する。すると人々はそれらの言葉を無意味だと見下すようになり、詩人たちは、それらの言葉に真実の意味を取り返してやるため、奮闘しなくてはならない」
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一つの都市が自由を取り戻し、1人の少女が伝えられてきた力(?)を受け取るおはなし。そしてその始まりにグライとオレックの登場があることが嬉しい。1巻では少年少女だった彼らが大人となりとても魅力的な人物として描かれている。メマーと同じく私も彼らが大好きだ。互いに想いあって生きてきただろう時間の話もいつか読んでみたい。本を通して伝えられるもの。歴史、物語、知恵、そしてなにものかの声。色々なところに神がいる、という考え方は好き。八百万の国、日本、ということだし。つまりそれはあらゆるものに尊敬の念をもって生きるということだろう。そーゆー意味で道の長やメマーの在り方はとても素敵。そしてそのなにものかに、畏れを抱きながらも利用されたくはない、自分の言葉で話したい、と思うメマーの強さに憧れる。最終的には自分の頭で考え判断する、その力が必要。それは人にも、そして国にもいえることなのだろう。
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第1部よりも起伏に富んだストーリー。文字とか言葉とか本とか、国による歴史や文化の背景がしっかりしてる話が好きだなー。
第1部のふたりが素敵に成長していてよかった。
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本、言語が伝えていくものはいずれ古めいてくるが、上書きはされない。
受け継がれていくって、大事なことだと思った。物語にしたって音楽にしたって。思想だって、そう。
どこを向いて生きていかなきゃならないかは、人それぞれ。
目を閉ざす時期があってもいい。
オレックとグライが落ち着いて力強い大人になっていて、いいなぁ。
やっぱり色々な経験が人間を深くしてくんだな。
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深い物語だ。テーマは自由と暴力なのだろう。
他民族の占領下にある国における独立運動の機運が高まっている中で、
占領者に対する憎しみと自由への欲求とともに、平和主義がいかにあるべきかを考えさせられる。占領者たちもその全てが憎むべき存在というわけでもなく、中には開明的な穏健派も含まれ、味方の中にも過激な好戦論者がいる。
ルグインはこうしたマクロな問題を、主人公のまわりの人間関係に上手に置き換え、リアルな物語世界を構築している。全盛期の彼女の作品群に勝るとも劣らぬできばえだ。