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紙の本

衝撃の向こうにある慄然たるネット社会の姿に立ちつくすばかり

2007/12/04 21:38

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る

 書名が内容を言い表す好例は意外に少ない。しかし、本書は「衝撃」という強い語感の言葉を用いているが、それに負けることなく、的を鋭く射ていると言えるだろう。

 メディアの変貌ぶりはすさまじい。もちろん、ネットの伸張のことである。これまでは、新聞やテレビといったマスメディアが情報を伝える媒体として独占的な地位を得ていた。

 ところが、90年代半ばからネットの時代を迎え、個人でもホームページの作成ができるようになり、今ではブログというさらに簡単な情報発信ツールを手に入れた。そして、「オーマイニュース」などのネットメディアと呼ばれる新興勢力が注目を集めている。

 しかし、こうした事象を、業界に詳しい人によって本格的に論じられることは少なかった。
 既存のマスメディアにしてみれば、ネットが伸びると、自分たちがこれまでやってきたことが通用しなくなるので、どちらかと言えば距離を置いてきた。このところ、ようやく大手マスコミもネット重視の姿勢を打ち出し、産経は紙よりもネットで先に記事を上げるようになり、毎日はブロガーとの連携を図り、朝日・読売・日経にいたっては、共同してニュースポータルを立ち上げる準備にかかっている。
 一方、ネットの側は新たなテクノロジーの開発に余念がないものの、自分たちの社会的影響力についての自覚が乏しい。ネットメディアなどは新興勢力ながら、進むべき方向性を見いだすのに苦労しているのが実情だ。「新たなテクノロジーを用いれば何かができそうだ」という予感だけで走っているので、俯瞰的に物事を捉えきれていない。

 そんな中、本書が編まれた意味は大きい。既存のメディアに所属する人、新しいメディアの人、それにブロガーなど、たくさんの人が対論形式で考察を深めていく。話し言葉を書き言葉にしているので、必ずしも読みやすい記述ではないが、難解なわけではない。新しいメディアに興味さえあれば、ワクワクしながら読み進めることになるだろう。

 意見を戦わす人たちも、あらかじめ結論をもって集まっているわけではなく、いろいろな属性の人たちと接触する中で、新しい発見をし、考えをまとめていく。そのおかげで読者は、その場に居合わせているかのような臨場感の中で、読み進めることができる。

 ふだん検索エンジンでグーグルを使っている人は多いはずだが、グーグルをひとつのメディアと見なし、そのジャーナリズム性を議論する場面では、読者も少なからず驚きを覚える。

 いわゆる「グーグル八分」に遭い、グーグルの検索にかからないようになってしまうと、ネット世界には存在しないことになる。今ではグーグルは、新聞社の編集局長のようにニュース価値を決める存在となっているのだ。しかし、このことにグーグル自身は無自覚、書中の言葉を用いれば「無邪気」なのである。

 グーグルは、世界中の情報をフラットに収集するという純粋な動機を持ちながら、ページランクの付け方によって、事の軽重の判断をして世の中に提示している。人々が検索結果を見るのは、米国の調査機関によるとせいぜい30ページほどであり、上位に表示されたものに信頼を置いてしまうという。

 そして、ページランクをあげる手法を探る試みがいくつもの会社によってなされており、手法がうまくいったときには、意図的に「世論形成」がなされるおそれがある。

 ブログの炎上も、これを仕掛ける人たちがいて、人為的に作り出せてしまう。そして、これは実際になされていることだという。
ネットを使う人でスパムメールに悩まされていない人はいないだろうが、スパムメールはコンピュータ・プログラムによって自動的に生成されているのだという。一定のキーワードを設定すれば、幾通りものパターンの文面のメールが自動的にできてしまう。

 そして、これはブログに関してもあてはまるという。したがって、ある新商品やイベントを盛り上げたいときに、同じことを話題にしたブログが同時的に大量に立ち上がるような状況も作り出せるという。これをマスコミの人が、「ネットでは今、この話題で盛り上がっています」と取り上げれば、売り込み戦略は成功となる。

 新しいテクノロジーは、善意にも悪意にも用いられる怖さを秘めている。マスメディアが長い歴史をかけて積み上げてきた倫理規範をネットが持ちあわせていないことを考えれば、歯止めのきかないネットの暴走ともいえる事態が生じてしまう。

 こうした時代に私たちはどう向き合えばいいのだろうか。本書を読み終えたとき、「衝撃」が体を駆け抜けるが、答えがすぐには出て来ない。ウェブテクノロジーの進歩の速さに呆然とするばかりだ。本書は今夏の刊行だが、対論をした当時とのズレをすでに生じているほどなのだから。

 最近の新刊書を見ていると、いかにも書店で人の関心を呼ぼうと待ちかまえているかのような書名が散見される。そして、名前倒れのことが少なくない。しかし本書は、もっと大げさな書名でもよかったのではと思わせるほどの充実ぶりである。

 ネット社会をいやでも生き抜く私たちは、本書のような好著で「ネットリテラシー」を磨いておかないことには、思わぬ目に遭ったり、知らないところで操られる可能性がある。慄然たるネット社会の行く末をかいま見た気がした。

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2012/12/11 04:48

投稿元:ブクログ

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