紙の本
魔女狩り長官登場
2008/05/05 16:18
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
魔法使いではなく、「魔使い」の弟子になったトム。
半年たった今、たった一人で穴掘り職人や石工を指揮して、危険なリッパーという引き裂き魔を退治できるほどになっている。
だが、このリッパーに生き血を吸われていた司祭が、師匠の魔使いの兄だったことから、魔使いとトムは、葬儀のため、ある町に出かけていくことになる。そこは、地下のカタコンベに悪霊ベインが、閉じこめられている町。そして、長い年月の間に力を蓄えてきたベインは、その町に住む人々の心を徐々に蝕んでいっていた。ベインとの最終的な決着をつけようと地下に乗り込もうとする魔使い。けれども、そんな彼らの前に現れたのは、魔女や魔使いを捕らえて処刑しようとする魔女狩り長官たちの行進だった。彼らに捕らえられた人々の中に、トムは、友人で、魔女の一族の娘アリスをみつけてしまう。おまけに、魔使いのいとこの司祭の裏切りから、魔使いまでが魔女狩り長官の手に捕らえられてしまうのだ。
トムは、カタコンベを抜けて、古代の霊ベインを閉じこめている地下道の銀の扉を開き、聖堂へ彼らを救い出しに行こうとするのだった。そして、ベインとの闘いは、アリスを悪の淵へと押しやっていく…。
この物語で、トムは着実に魔使いとして成長していて、一人で戦う場面が多くなってきている。そして、アリスも、魔使いから邪悪な者に近づくなと警告されても、魔女として独自のやり方をやめようとしない。彼らが、魔使いの教えにただ従うだけではなく、自分で考え、物事を切り開いていく姿を見るのが楽しい。
そして、何よりも、今回は、師匠の魔使いが、思いがけない秘密を持っていて、絶対的な孤高の人ではないことがわかってくる。
別の国からやって来た背中にうろこのある奇妙な生物で、やがて人間に変身し、正魔女になって人々を助ける可能性もある「ラミア魔女」という存在。そして、病床の父が語る、船乗りだった若い頃の物語との奇妙な符合。
いろいろ気になる布石があちこちに置かれていて、次なる物語を待ちこがれる気持ちになってしまう。
まだまだこの世界の全貌は見えてこないけれど、巻末の上橋菜穂子さんの解説にあるように、典型的な冒険談のようで何かひと味違ってずれていくようなこの物語世界に、読者も魅力を感じてもらえるに違いない。
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非常に面白かったです。子供向けにしては残酷表現が多いですが。あれこれ面白さはありますが、特にこの世界における女性の立場に考えさせられ、にやりとさせられました。
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めまぐるしい展開で読者を楽しませる、というパターンではないけれどこのシリーズは人を飽かせません。
今回主人公トーマスの名前の由来が判明するのですが、
キリストの復活を「うたがったひと」トマスから来ているとあり、作者のセンスに感心しました。
人の言葉を鵜呑みにせず疑ってみて自分の答えを探り当てる。
これって人として生きるために絶対必要なもので、それができるのであれば魔女狩りに没頭するような信仰なんて必要ないもんね。
時代設定上、トムを除く(頭の固い)大人の男たちは女を「自分を堕落させる存在」として低く見ているのですが
この話の要所要所を押さえているのはトムの母であったり闇に近づいている少女・アリスだったりするのだから面白い
女性の言葉に耳を傾けるトムはともすると弱弱しく映って周りの男たちから歯がゆく思われているんだけど、今後の成長が楽しみです
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今度の魔使いやトムの立ち向かう相手は古代の悪霊ベイン。大聖堂の町プライズタウンのカタコンペの中に閉じ込められている。でも心の弱い人(神父も入る)の心の隙に入り込みあやつる。血や骨も得て実体を持ち始める。アリスが乗っ取られるかもしれないという危険をおかして、自分の血を飲ませ言うことを聞かせるが、トムはぎりぎりのところでベインを倒すことができる。今回もはらはらの展開でおもしろい。
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魔法使いと思いきや魔使いシリーズの第2弾。
魔使いの師匠・グレゴリーさんの過去とか少し明らかになります。
師弟愛が深まります。
アリスは闇の側か光の側かまだはっきりしませんが、トムのことを気に入っているのは確かです。
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あとがきの解説で、上橋菜穂子さんが語ってることに、まったくの同感。「七番目の息子の七番目の息子」で左利きゆえに、魔使いの弟子になったトムのハラハラドキドキの冒険&成長譚ではあるものの、ありがちな物語のようでありがちな物語じゃない。前巻は物語への導入部ということで、正直、まったくピンと来なかったんだけど、本格的に物語が動いてくるこの2巻では、途中から佇まいを正して読むことに。 前巻ではピンと来なかった「魔使い」という職業が、教会から迫害される立場、いわば教会の敵であり悪である存在というのが、ずしんと心に重く圧し掛かってくる。その教会すら、無実の人間を魔女と断定し殺してしまう、必ずしも正義であり善とはいえない存在で。この物語の中では、絶対の善も悪も存在しない。登場人物らは、絶えず善と悪のはざまで揺らぐことになる。 そんな中、主人公のトムは、自身の中で自問自答しながら判断し、自分の善と悪を見極めようとする。他人の意見に決して流されず(師匠の言いつけに逆らうことも/汗)、自分の信念が決してぶれない。そして信念に従って行動する姿は、とても好ましい。まだまだ半人前なのにー(笑)。 師匠の過去のこと、トムの母のこと、そしてアリスのこと。物語は今後、どう展開していくのか。とっても楽しみー。ほーんとに、一筋縄でいかないファンタジーです。だからこそ、大好きー♪
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人物についてよりわかってきたせいか、だんだん面白くなってきた。
世界観は中世のドロドロ。
何がいいかと言うと、ハリポタみたいな善悪の対決、というばかりではない価値観の多様性を感じるところ。
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魔使いの弟子になって半年のトム。
まだ修行中だけれど、魔使いが病気の為、いちばん上の等級、ボガートのリッパーをひとりで退治することになった。
襲われているのは司祭であり、それは魔使いの兄。なんとか退治したが、司祭は亡くなってしまう。彼の葬儀も兼ねて、20年以上前に対決して破れてしまった邪悪な霊「ベイン」のいるプライズタウンへ向かうことに。
そして魔女狩り長官に捕えられたとんがった靴のアリスの姿をみつけた。
アリスが段々と魔女に近づき、果たして彼女は正魔女になるのか、邪魔女になるのか。信用していいものなのか。そしてベインとの戦いはどうなるのか。
魔使いの昔の恋人の魔女メグ、そして、トムの父と母の出会いも描かれている。
『魔使いの弟子』の続編。トムは成長しているけれど、相変わらず言いなりになるだけではなく、自分の意志を貫いている。
今作では、師匠である魔使いが、なんとも頼りない。考えがあって行動をしているのでしょうけれど、捕まったり、危機に陥っていたりと。病気だということを差し引いても頼りない。
そのぶん頑張るトムが面白いのですが。
敵に襲われるのに、残虐な表現がとても多いのは、気になる。
でも、挿絵は素敵です。
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魔使いに弟子入りして半年――。魔使いの遣り残した仕事をやりに共にある街に行ったところ、魔女狩りで捕えられた友人アリスの姿が。
トムもどこか真っ正直なのかと思いきや師匠に逆らったり、アリスも味方なのだろうが思うように動いてくれなかったり、物語の導き手である魔使いでさえ、女性を徹底的に嫌うというどこか不完全なところがあったり、、、と、相変わらず物語の中で自由に動き回っている。
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ぼくはトム。魔使いに弟子入りして半年。修業は大変でまだまだ半人前だけど、なんとかやっている。そんなある日、人の血を好むボガート、リッパーを退治してくれという依頼があった。襲われたのは、なんと師匠である魔使いのお兄さん。病気で寝こんでいる師匠のかわりになんとかボガートは退治したが、こんどは魔使いが弱った体で、古代の悪霊ベインが巣くう大聖堂の町プライズタウンに向かうと言い出した。だが、そこには魔使いをつけ狙う、冷酷な魔女狩り長官の影が…。そして捕らえられた魔女たちのなかにぼくが見たのは、たったひとりの友だちアリスの姿だった。魔使いの弟子トムの成長と冒険を描く、シリーズ第二弾。
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面白かった。「疑う人」トーマスの名をもつ主人公トムが師匠の魔使いの言うことを聞かないが、これがまたいいんである。イギリス中世版「スーパーナチュラル」。魔女狩りなども出てくる。