紙の本
人工生命の最先端に関する貴重な本
2008/06/17 17:43
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
「人工生命」といっても,単に生命のようなふるまいを人工的につくりだすだけではない.言語の発生をシミュレートする研究もあるが,この本では著者の研究テーマでもある「心の発生と進化」に重点をおいている.最先端の研究もふくんでいるが,それをできるだけ平易に説明しようとしている.
1994 年から 1998 年くらいまでのあいだに 20 冊くらい,人工生命に関する本が出版されているが,2003 年以降この本が出版されるまでの約 5 年間に出版された本はほとんどない.そういう意味でも貴重な本だといえるだろう.
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人工生命のお話。人工知能系の話はあまり出てこない(各所でニューラルネットワークという単語は出てくるが)。9 章構成で章毎に参考文献リストがあり、その点は大変有益である。概要を本書で読み興味がわいたら論文に当たることもできる。ちなみに 1 章は「蟻の群」から学んだ方法を用いて問題を解く例が紹介されている。これはもしかするとニューラルネットワークの重みづけに帰着できるのかもねと思った。第 6 章で言及されている「Repeated Occurrences of the Baldwin Effect Can
Guide Evolution on Rugged Fitness Landscapes」は面白そうだなぁとおもったが、日本語の論文も希望。
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[ 内容 ]
人工生命の研究で、生命の長い進化の歴史をコンピュータで再現するには、進化をデザインしたり、理解できる豊かなイマジネーションが重要です。
本書は、人類最後の謎といえる“心”を解き明かそうと、著者が夢中で取り組んできたビックリするようなアプローチを取り上げます。
[ 目次 ]
第1章 蟻たちの真似をして儲ける話
第2章 進化の力を借りてアートを創る試み
第3章 デジタル生命で進化を研究する時代の到来
第4章 人工生命というムーブメントの本質
第5章 利己的であるからこそ利他性が生まれる
第6章 進化と学習が生む生命と心
第7章 暗闇で不安そうに動くロボット
第8章 計算機の中で心を進化させる
付章 計算機の中で心を進化させる
おもしろロボットFile
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人工生命に関するお話。
本書では人工生命の世界を浅く広く紹介しており、人工生命への導入として気軽に読める内容となっています。
それでは人工生命とは何か?
人工知能と比較すると解りやすいです。
人工知能=人間が設計したシステムに基づき、知能を持っているかのように振る舞うソフトウェアのことで、その全容は解析可能。
人工生命=最初に単純なルールを与えて、あとは置かれた環境の中で学習しプログラムを自動的に作成するソフトウェア。システムを作った人の設計を超えるため、出来上がったものを理解できるとは限らない。
人工生命は文理問わず様々な分野で応用可能らしいので、人工生命の研究が進むにつれて、これまで解らなかったことが徐々に解明されてくるのではないだろうか、という期待が膨らみました。
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人工生命について
昔の典型的人工知能とは反対の研究。
人工生命は創発現象を起こし、人間に理解できない高度な処理を達成する。
ダーウィンの進化論の自然淘汰・突然変異といった、進化を用いる。
群知能・蟻 ←石黒先生のイグノーベル賞取った奴みたいなの
囚人のジレンマにおける「しっぺ返し」&「パブロフ」戦略の有効性。協調性・利他的な行為をすると結果的に生き残る!?
心の進化
心は文化だけでなく+遺伝的な進化によっている
人間はほとんど狩猟採集時代(EEA)に生きてきた。今は農耕牧畜時代。
人間の心には高いレベルの再帰がある。それは人間が適度な社会性を持っていたから。
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進化論に基づく、感情、心の捉え方が非常に面白い。人の「心」はプログラムできるのか。心という概念に対してスピリチュアルな幻想を抱いている人は、本書を読み少々興が覚めるかもしれない。本書の中で取り上げられる「心」の解釈は、極めて科学的で、無味乾燥に映るだろう。心は脳の機能であり、心の一部である感情もまた機能である。第7章「暗闇を不安そうに動くロボット」で、ロボットに感情を持たせるという研究について叙述されている。人間が見て感情があると見える、ということに重きを置かず、人工生命学に基づくロボット自身のための感情であることが強調されている。将来、自己学習、自己判断し、自立して行動するロボットが生まれると予感させられる。心はプログラムできると私は思う。
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<アリのフェロモン>
場所と時間の2情報
<バイオモルフ>
遺伝的アルゴリズムの応用としての対話型進化計算
<デジタル生命ティエラ>
創発を備えたデジタル生命
機械語+遺伝的アルゴリズム
アヴィーダ
<利他的行動>
最終的に利己的行動であるとすれば進化の説明になる
→血縁選択説/互恵主義説/マルチレベル選択説
<学習と進化>
適応度地形
ボールドウィン効果
<感情>
モジュレータ:外在性、活性度、正確さ、集中度
<心>
ダニエル・デネット:進化の4段階
ダーウィン型→スキナ―型→ポパー型→グレゴリー型
デビット・プレマック:再帰的推測
進化ロボティクス
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人工生命に関する入門として良書。
人工知能が如何なるものかはある程度知識はあったので、
対比する形で読み進められる。
1990年前後から計算機パワーの進化とともに、人工生命のアイデア
について研究が深まっている。
利他的な行動が、本来利己的であるはずの個体にとってどんなアルゴリズムによって成立するのかの実験からの考察部分は面白く読めた。
一度に全部理解するのは難しいと感じたが、この分野を探索するに
あたって、立ち戻る本として挙げられると感じた。
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還元主義的な研究の限界を突破するため、「全体」を理解することの重要性がいま注目されている。部分に分解しないで、どうやって研究するのか。「創る」のだ。モデルをつくって、実際に動かして、振る舞いを観察して、フィードバックして、学習させて、競争させて、進化させて……。生命とは何か、進化とは何か、言語とは何か、心とは何か、自分とは何者かという問いかけを、そういうやりかたでしていこう……という学問分野をこの本は、わかりやすく解説してくれている。
前からなんとはなしに好きだった、ライフゲーム、ゲーム理論、人工知能。そこらへんがどういうふうにつながっているのかがわかって、おもしろかった。
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Fri, 24 Jul 2009
さてさて,著者の有田先生は名大の先生で,日本では持続的に人工生命研究(GAつかって最適化とかは人工生命研究とは呼びません!)をされている,数少ないりっぱな研究者.
人工生命の研究って言うのは,サイエンスかどうかと言われると,しばしば微妙な「構成論的方法」の王様というか,象徴的存在. 進化を始めとした生命現象を,モデル化し,計算機を用いて実験することで,生命の本質を知ろうということだ.
本書では人の「心」にはそんなに迫ってないので,そのあたりの哲学論議が好きな方には物足りない面はある.
内容からいくと,タイトルがなんか変. 本書の内容をあらわしてないなー.
# タイトルは営業と編集が中心になって着けることが多いので,そういうこともあるかもしれない.
だけど,人工生命の研究の雰囲気をしるためには,イラストも豊富でかなりいいと思う.
アントコロニ-,社会性の進化,ティエラ,ボールドウィン効果,ハードウェア進化 ふんだんにトピックがある.
僕の大事にしている「創発」・「ミクロマクロループ」というキーワードも,人工生命・複雑系のベースがないと感覚がつかみにくい. その意味でも大切な研究だとおもう.
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著者がコンピュータ雑誌に書いていたエッセイを読んで、数学科入学を決意したと言う過去があるので....
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人工生命についての解説本です。群知能がどのように働いていくのか、計算機の中で再現する考え方が紹介されています。分子、細胞レベルでの行動を定義し、その動きを定義しコンピュータに導入して、どのように進化するのか観察するとのことで、そこで得られた結果が実社会での動静に合致する結果は驚きです。また群知能が思わぬ動態を示すことも驚きであり、このような研究の積み重ねで、「心」が計算機の中で生成されることも夢ではないと感じました。