紙の本
組織の通信簿
2007/09/06 13:39
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の冒頭における、実証的組織論研究の停滞についての整理は非常に重要であると思う。アメリカ流の経営戦略論の日本への導入が進み定着し、経営戦略論から技術経営論へと進んでいく一方で、地道な組織特性、組織の具体的様相を研究することがおろそかにされていく様がサーベイされている。この組織論というと、ゲーム理論、契約・情報の経済学を使った、新制度派経済学的研究ばかりが目に付いた。
しかし、藤本隆宏教授のアーキテクチャ論が生産現場の実態を分析する視点として定着しつつあるなか、組織論においても実証化の波が来そうな気配。
このような研究にキチンと資金が配分されると、この国の企業統治、組織統治の度合いを測る適切な「通信簿」への道が開かれるのではないかと思われるのです。
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最近の仕事ではお客様の組織に関する課題解決をお手伝いすることが凄く増えているのですが、合理性にかける課題が多いと感じていて、本書を買ってみた。
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書名同様重かった。
思うところは数多くあるが、
理解するまでにまだまだ時間がかかりそう。
読み過ぎると、診断士試験の事例Ⅰ(組織戦略)に影響しそう(かも?)。
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組織論をここまで実証分析した本って中々なくないかという程、数多くの会社組織にアンケートをとって定量化した本。
この本は過剰な「和」志向が組織を<重く>してしまって創発性を欠乏させてしまうというシナリオ。従って、アメリカ企業の組織劣化に見られるような、計画・ルール・ヒエラルキー・体制という機械的組織デザインニングの失敗ではなく、内向きの弛んだ共同体意識(馴れ合い)が齎したものだと説く。
こういう柔らかい議論を統計という言語で捉えているので興味深かった。そして何といってもちゃっかり榊原先生の名が載っている本でもある笑 やはり先生は偉大だw
経済学も経営学も追いかけ続けるバブル後の『失われた10年』の検証の様な物でもある。しかしこの本の示唆は極めて大きい。
実はこうした日本企業の経営劣化の議論は、経済学でもコーポレートガバナンスの分野で議論されており、読者である私にヒントをくれた本でもある。
それにしても日本は依然として『失われた10年』を引きづり続けているのだから「日本は、変らない」。
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組織の重さと諸要因の関係を科学的に把握するための貴重な研究。
ミドル層へのアンケート調査をもとに定量分析を行っている。
参加企業はプロジェクトに賛同した計18社。BU数は107。
組織の重さを
①過剰な「和」志向
②経済合理性から離れた内向きの合意形成
③フリーライダー問題(口は出すが責任は取らない人、決断力の不足)
④経営リテラシー不足
の4つの変数から推定。
因子分析にかけて①②を「内向き調整志向」変数、
③④を「組織弛緩性」変数として組織の重さを計測する。
本研究の一番のインプリケーションとしては
機械的組織と有機的組織、
縦横における公式と非公式の繋がり
これらがバランス良く設計されている組織は
組織の重さが軽くなる可能性が高い、ということ。
そして本研究では組織の重さと業績面での統計的相関分析は行わず、(そもそも選択バイアスがあるため無意味)
調整比率と組織の重さの相関分析を行っている。
調整比率はモデルチェンジの日数、新規事業日数、撤退日数に際して、組織内での調整にかかる時間をアンケートで定量的に把握して分析している。
日数(比率)が減れば、コスト削減や市場への迅速な対応に繋がり、業績に好影響が出るという仮定が裏にある。