紙の本
静かな生活に持ち込まれる美のミステリー
2008/02/20 17:25
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
連作短編のミステリーですが、
珠玉の短編集といってもいいくらい雰囲気のある作品。
主夫の八駒敬典(やこまたかのり)は
家事をこなしながら中学生の娘つばめ
仕事の忙しい妻と埼玉県の住宅地で暮らす。
おしゃれで静かな生活に突然、
19世紀のフランス人形(「人形の部屋」)が
トラブルとともに持ち込まれます。
隣の家に引っ越してきた夫婦は訳ありで
敬典に敵意を見せる(「お花当番」)。
中三になった娘はボーイフレンドと駆け落ち(「お子様ランチで晩酌を」)。
特に「お花当番」が心に痛い。
傷つけようとしているわけではなく
それでも人を傷つけてしまう。
しかし、傷つけたと思った人のメールを読み解けば
そこには冷静な答えが書いてあるだけでした。
しかも、そこに至るまでの転々とする「解」がうまい。
また1年に一度の二日間の休みにまで
敬典はなぞ解きをする羽目になる(「外泊1 銀座のビスマルク」
「外泊2 夢見る人の奈良」)。
家事も頭の回転も性格も完璧な敬典ですが
嫌味にならないのは娘のつばめが
父親をなにかと試そうとするから。
親離れしたがる娘と子離れできない父親の
物語としても堪能できます。
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本編より合間の『休日』に起こるミステリが興味深かったです。物事の捕らえ方の違いでがらりと変わってしまうこと、気付かぬうちに身近に起こっているのかもしれません…。/(2008.02.16読了)
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「じつはフランス製じゃないんだ、フランス人形は」「そうなの?」ある春の日、八駒家に持ち込まれたプラスチックの箱の中身は、「冬の室内」といった趣の舞台装置と、その右のほうに置かれた椅子に行儀よく腰かけている少女の人形。子供らしい快活を示すように、ひょいと天を向けた少女の左足のつま先は――こなごなになっていた。破損の責任を押しつけられそうな敬典の姿を見て、娘のつばめは憤慨するが、敬典は不思議と落ち着いていて……。
きっかけは小さな謎でも、それらは八駒家の食卓の上で壮大なペダントリに発展する。『天才たちの値段』で鮮烈な印象を与えた新鋭が贈る、あたたかなタッチで描かれた愉しい連作。
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表題作のほか、「お花当番」 「お子様ランチで晩酌を」。
そして、そのあいだに挟まれるように、敬典に与えられた休日の過ごし方である「外泊1――銀座のビスマルク」 「外泊2――夢みる人の奈良」
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主人公の八駒敬典は、妻・陽子と中学生の娘・つばめの三人家族。つばめを産むと同時に当然のように家庭に入り専業主婦になっていた陽子が、ひょんなことから仕事に復帰し、しかも超のつく多忙になったのを機に、敬典は、思うところもあって職を辞し、主夫――本人曰く家主――になって家のこと全般を取り仕切るのにもずいぶん慣れてきた。
隣人との立ち話や、自由時間である休日の小さな外出の折などに現れる、いわゆる日常の謎を、家事の合間の食卓で娘のつばめ相手に解き明かしたり、旅先で出会った人にヒントを与えたりする物語である。
ことさら小難しくしち面倒くさい言い回しが多用されているが、これが敬典のキャラクターを表わすのにまことにしっくりくるのが可笑しくもある。
形はどうあれ、ほほえましい家族であり、一冊である。
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(収録作品)人形の部屋/外泊1―銀座のビスマルク/お花当番/外泊2―夢みる人の奈良/お子様ランチで晩酌を
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表題作「人形の部屋」を含む連作集。
専業主夫(本人いわく『家主』)の八駒敬典と一人娘のつばめを中心に、日常生活の中の小さな謎を取り上げた物語。
個人的には「外泊1-銀座のビスマルク」と「お花当番」が好き。
八駒さんの博識ぶりには脱帽でした。
随所に散りばめられた父と娘のやりとりが微笑ましいです。
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八駒敬典の自宅に元同僚(上司?)が壊れたフランス人形を持ち込んできた。
フランス・ジュモー社製作の人形で大変な価値のあるものらしい。
これをどうにか修復するようにとのことなのだが、敬典はその人形に隠された秘密を見つける。
美術関係にとてもお詳しい著者のようです。
この一話も、続く他の話も、ちょっと専門的すぎて、わかりやすく説明はしてくれてるんだけど、それを全部きちんと読むのはちょっとまだるっこしい。
けどどれも洗練された謎解きミステリで、一話ずつの長さは適当であり、このシリーズを続けて欲しいというほどは思わないけど、それなりに楽しめる本でした。
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デビュー作『天才たちの値段』が面白すぎたのであまり正直期待はしていなかったのですが、わりとおもしろかった。
ハートフルな親子物語だった。(そうなのか)
日常系ミステリの連作。蘊蓄がためになります。
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日常の謎を父娘で解決する家庭系の和みもの...風で
あるんですが...何故か個人的にはあまり内容も
父娘の関係性も頭にスッと入ってこない。
謎自体がいまいちミステリー的に魅力に欠けているのと、
その解決、解決後の状況も...だから?みたいに
サラリと読み流してしまいます。
父娘関係もなんだか、歯にもの挟まったような描写で、
結局のところ何だか良く分からない煮え切らない読後。
主夫である主人公が作る料理に似て、一見見栄えはいいご飯ですが、
生活臭なく、なんだかウワベだけ整えた感じが...苦手ス。
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専業主夫・敬典とその娘・つばめ。
小さな謎を二人で解きます。
妻であり母である陽子が最後にようやく出てくるところなんざニクイ。
面白かったです!
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日常の謎ミステリ。アンティークや花言葉等、さまざまな薀蓄も楽しめて、優雅な気分に浸れてためになる、そんな一冊。
お気に入りは「銀座のビスマルク」。幕間の番外編、といった感じの位置づけで短い話なのですが、これが一番気に入りました。便利なものばかりが良いとは限らないなあ、としんみりした気分になります。
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専業主夫の父と娘を主人公にした日常の謎系短篇集。過剰なまでのペダントリーによって人間の心の綾を照らす手腕が素晴らしい。作中に凝らされた伏線とその回収も見事。お気に入りは「お花当番」。
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読み始めて感じたことは、このお父さん薀蓄がくどい!
「お探しの本は」を読んだ時も気になったけれど、知識を作品の中に詰め込まれても、息苦しいだけ。もっとそぎ落とすか、目線を少し下げてはもらえないものか。
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日常の謎、がテーマの連作集。
専業主夫な父親と娘を中心に話が進んでいく。舞台tが埼京線沿線なのには理由があってちょっと面白かった。今度金沢行くときに実行しようかと。しかし、こんな父娘、の関係は…なかなか、ちょっと無理があるような。
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主夫と思春期真っ只中の娘の連作集。壊れた人形の正体、花言葉の暗号、娘の家出と結末が優しい短編が並ぶ。生意気盛りの娘との接し方に悩む父親の心中がリアルで楽しい。どんな話でもユーモア色を失わなかったのが作品全体のハートフルな色合いとよくマッチしている。個人的には万年筆とビスマルク氏と言う短い作品がよかった。万年筆と塩の製法の原理が同じと言うのは全く気が付かなかったし、意外。勉強させていただきました。ただタレーランはそんなに人気のある人物ではないんですけどね、本国でも。
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これは面白い!主人公が豊富な知識を策し、様々な問題を解決していく。その流れに関わる娘の存在、発言が面白いが、一般的な中学生がこまっしゃくれた感じがする。最後の章の話は人間味溢れた内容だけど、上記の理由から一寸…。