紙の本
柚木草平というオトコ
2008/02/22 23:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:田川ミメイ - この投稿者のレビュー一覧を見る
まったく、しょーもない男である。
誰がって、この小説の主人公、柚木草平。
警察を辞めて刑事事件専門のフリーライターに身をやつし、 女にだらしなく、女房に逃げられ、酒に溺れ、年中金欠で、しかたなく探偵まがいのことをやっている。 巷によくあるような2時間サスペンスの主人公(正義感が強かったり、 あるいは、人情味溢れていたり)とは全く違う。
が、このオトコ、なぜか魅力的なのだ。
それが証拠に、「イイ女」たちがいとも簡単に口説き落とされていく。口先だけのいい加減な口説き文句だと分かっていながら。
それはたぶん、彼の中に邪気のない子どものような部分があるからだ。 そしてもうひとつ、どこか投げやりな、人生に疲れたオトコの部分があるから。
柚木は、冗談交じりに自分のことをこんなふうにも言っている。
「懐疑論者さ。人生のすべてを疑っているうちは、人生に対して結論を出さずに 済む。たぶんその結論から逃げているんだろう」
牛のように愚鈍な家政婦にまで「俺は君のように経験豊富な女性が好みさ」と言ってしまう柚木は、一見調子の良い色男のようだけれど、 実は誰にも本心を見せることがない。一夜を共にしたあとでも、そのバリアを解くことはない。 だからこそ、女達は気にせずにいられないのだ。
闇や寂しさを抱えている柚木は、同じように寂しい人間の気持ちがよく分かる。だからこそ、このどうしようもないオトコの傍にいたくなる。
この短編集にも、もちろん何人もの女性が出てくるのだけれど、中でも樋口有介が書く「少女」は、誰もがとても魅力的だ。ちょっと気が強くて、どちらかといえば少年っぽく突っ張っているのだけど、そこに淋しさや切なさが透けて見える。
この柚木草平シリーズは、たしかに「探偵物」の一種ではあるのだけれど、そこに描かれているのは「ヒト」の心の内側であって、決してストーリーだけで引っ張っていくようなものではない。この短編集「不良少女」も派手な事件モノなどではなく、どれも、すっきりきっぱり一件落着、という結末ではない。だからこそ、このシリーズが好きだ、と思う。ヒトのキモチや人生は、簡単に白黒つけられるものではないはずだから。
さて、このシリーズ。2008年に、久々に新作が刊行されるのだそう。
『時代が変わって、あのアナログ人間の柚木でさえケイタイを持ち歩くようになりました。それでも柚木の女好き……もとい、柚木のいい女好きは、なぜか変わりません。まったく、困ったもんだ』(文庫版あとがき)
うふふ。
今から楽しみでありまする。
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原稿書きの仕事があるのに、ついついは事件調査のアルバイトをしてしまう
柚木草平。コンビニで出会った金髪の少女が巻き込まれた出来事に、成り行き
で巻き込まれた顛末を描く表題作「不良少女」をはじめ、吉島冴子や小高直海
から回してもらったり、クロコダイルで出会った女から直接受けたりと、憂鬱
ながらも心惹かれる依頼の数々。
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金欠のためあちこちから探偵業のアルバイトを引き受け糊口をしのぐ、俺・柚木草平。
吉島冴子の従姪に届いた不審な手紙を調査する「秋の手紙」。
深夜に出会った金髪の美少女が巻き込まれた事件を描く「不良少女」。
飲み屋で意気投合した美女からの仕事「スペインの海」。
四件の憂鬱なアルバイトの顛末と柚木自筆のエッセイを収録した、ファン待望の連作短編集。
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現代の作家の中で、最も哀愁漂う作家と言えば、私は樋口有介を真っ先にあげます。もうこの文体の虜で、実際文体がストーリーを食ってしまっているような、そんな作家。今作では、あとがきにその文体のことについても触れているので、ファンとしては要チェックです。あと解説には今までの作品に出てきた女の人リストとその名言集まで!これは、マニアの仕事だ・・・。というわけで、作品以外のところで楽しめてしまう作品でした。小説は、まあ、いつもの樋口さんと柚木さんでした。
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2007年すっかりはまった樋口有介。
で、2008年も樋口有介で始まるのであった。
柚木草平シリーズの短編集。
*秋の手紙
*薔薇虫
*不良少女
*スペインの海
*名探偵の自筆調書 柚木草平
柚木草平シリーズは、ある意味不幸で、また幸運なシリーズなのだ。
最初の出版では話題にならず(?)廃刊状態になっていた。が、ファンの気持ちか、樋口有介の力か、出版社が変わり発刊され、今に続く。
が、シリーズものって、同じテンションというか、キャラの固有の視点が必要になってくる。このままシリーズが続くとわかっていて書いてるものと、そうでないものは、やはり違ってくる。
出版界の歪みが、このシリーズを危ういものにしているのかもしれない。
そう、このシリーズはなんだか危うい。
その一番の理由は、柚木自身の視点の揺らぎなのだと思う。
ま、それはそれでもいいんだけどね。時にハードボイルド、ときにセンチで、時に明晰。柚木が作品中で美女に振り回されるように、読者は柚木そのものに振り回されるのだ。
きっと、それがこのシリーズの快感。
ってことで、この短編集は柚木のキャラの中でハードボイルドな面が強調されている。
すごい大胆な切り口で、表題作「不良少女」なんて、「え」ってまじで絶句してしまったよ。
他の作品も、一般的な作品のように、綺麗に着地しない。
着地しないから、微妙な居心地の悪さがある。居心地が悪いのに、それが快感……。
やられましたm(__)m
樋口有介、まだまだ懐が深い気がしてます。
今年も、一杯楽しませてくれそう。楽しみだな。
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再読。
探偵柚木草平シリーズ、連作短編集。
ちょっと斜に構えた自由気ままなフリーライター兼探偵の柚木草平、毎度毎度綺麗な女性が出てきて、惑わされるといういつものパータン。
この気ままな生活がひどく羨ましい。
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金欠のためあちこちから探偵業のアルバイトを引き受け糊口をしのぐ、俺・柚木草平。吉島冴子の従姪に届いた不審な手紙を調査する「秋の手紙」。深夜に出会った金髪の美少女が巻き込まれた事件を描く「不良少女」。飲み屋で意気投合した美女からの仕事「スペインの海」。四件の憂鬱なアルバイトの顛末と柚木自筆のエッセイを収録した、ファン待望の連作短編集。
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一度でも、柚木草平を色香に迷わせた女性をいとも簡単に殺人の被害者に仕向けてしまう
そんな物語のつくりかたがどこか刹那的で惹かれるところだなと
毎度思ってしまうのです
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短編集。全ての作品が不良少女を扱っていることに読みおわってから気が付く。登場人物が全て美女でしかも不良少女と言う世界、男としては羨ましいことこの上ないが、いざ体験してみれば主人公のように疲れはててしまうに違いない。一番印象的だったのはやはり表題作。悲劇的なエンディングながら弱者への優しさに溢れるセリフは読者の共感を呼ぶに十分だった。逆にどうも共感しかねる人物が他の話には多かった。
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柚木草平シリーズの文庫最新作である。短編集だか、ちょっとちょっとといった印象である。柚木さん好きなんだけど、長編じゃないと物足りないかも。
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<柚木草平>シリーズの一冊。お気に入りのシリーズ。雑誌に掲載された、過去の短編4つと、柚木草平自身による『自筆調書』が収録されている。今回の柚木草平は、かなりがんばっている。いろいろな面で。あんなことも、こんなことも。あれっ、と驚くくらいに。今までと違わない?一見ペシミストで、世の中を斜に見ているような柚木だが、実は至極真っ当な男だと思っていた。しかし、この作品を読んでもっともっと人間臭い男だと認識を新たにした。いい男だ。本書の短編それぞれで、柚木が対峙する人間たちは、現代の病巣を連想させる代表選手ばかり。病気だ。でも、その病気はどんな名医でも治せはしない。柚木の揮う、目には見えないメスの切れ味はどうか。コミカルで楽しい会話の裏で、人生の苦味に顔を顰めながら、今日も副業の探偵稼業に身を窶す草平であった。あ〜っ、面白い。
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図書館の本
内容(「BOOK」データベースより)
金欠のためあちこちから探偵業のアルバイトを引き受け糊口をしのぐ、俺・柚木草平。吉島冴子の従姪に届いた不審な手紙を調査する「秋の手紙」。深夜に出会った金髪の美少女が巻き込まれた事件を描く「不良少女」。飲み屋で意気投合した美女からの仕事「スペインの海」。四件の憂鬱なアルバイトの顛末と柚木自筆のエッセイを収録した、ファン待望の連作短編集。
タイトルロールの不良少女が一番よかったと思う。
空虚感って出せるようで出せないものだからせつなくて。
それにしても柚木の周りには美女が集まることになってるのね。。。
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2017.5.18 読了
柚木草平シリーズ 短編集。
相変わらずの不健康さに
なんか ホッとする。
てか、なんで こんなモテるんだ?!
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フリーライターの柚木は探偵業も手がけている。なぜか美女が絡んだ事件ばかり、鮮やかに推理していく。
「秋の手紙」は、高校二年生の沢井菜穂美のもとに、見ず知らずの男性菅谷からラブレターが届く。
「薔薇虫」は、元代議士の常田丈吉が三か月ほど前に亡くなった。そして、二週間前に犬が、四日前には猫が亡くなる。
「不良少女」は、深夜コンビニに入った柚木は、金髪の不良少女 小鳥遊ユカが万引きするのを目撃してしまう。
そして、「スペインの海」では、オカマバーで出会った遠野多佳子に、個人的な「エスコート業」のトラブル解決を依頼される。
とまあ、どれもたわいのない話がきっかけとなり、意外な方へ意外な方へ話が転がり柚木が鮮やかに推理する…となかなか読んでいて引き込まれる作品に仕上がっている。
話の展開もさることながら、柚木と女性たちのやり取りもなかなか面白い。生憎、私の周りには柚木のような男性はいないが、もしかしたら、私の知らない街では、柚木のような人物が夜を徘徊しているのであろうか。
内容的にも面白い短編が集まっているので、ちょっとした時間に読むには最適の文庫である。ただ、少しばかり残念なのは、柚木の推理には飛躍があり、だからこそ意外な展開が可能になるのだが、読み手としては、時々狐につままれたような感覚に襲われるだろう。だから、謎解きのつもりで読んではいけない。
この本をきっかけに、樋口氏の他の作品に挑戦してみるのもいい。
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柚木草平シリーズの珍しい短編集。珍しいだけで、柚木草平シリーズの良さが全くない。ファンだからこその苦言だが出版してほしくなかったレベル。「愛の終わりとそのつづき」でも思ったが、このシリーズで濡場はホント必要ないです。