投稿元:
レビューを見る
「忠臣蔵」を内匠頭の妻と吉良上野介の妻の視点から描いた「おんな泉岳寺」他4つの短編集。浅野内匠頭の妻・瑤泉院と吉良上野介の妻・富子の泉岳寺の墓前においての一瞬の邂逅。仇討ちから時が過ぎ、余生を過ごす二人の未亡人に去来する想い。これまで考えたことがなかったが、吉良上野介にも若い頃や家族はあった訳で、松の廊下で起こった騒動が近しい人たちにどのように受け止められていたのか、そして討ち入りまでの時をどのような想いで過ごしたのか、そして仇討ち後の胸の内は…新たな視点から「忠臣蔵」を考えることができる作品だった。他にも牢屋奉行を代々世襲で受け継ぐ石出帯刀の悲恋、大政と幼馴染みのやりとり、西園寺公望を狙う若者の話など、とかくままならぬ浮き世の儚さ、諦念がしっとりと描かれた短編集。
投稿元:
レビューを見る
『おんな泉岳寺』!
フィクション小説ではございますが、今まで持っていた吉良上野介の印象が少し変わりました。
相変わらず視点がステキです。
他の3作もとても感慨深く読ましていただきました。
どれもこれも余韻が後を引きます。
ありがとうございました。
(H23.12 図)
投稿元:
レビューを見る
歴史上の人物を主人公にした4編からなる短編集。
表題作は松の廊下の刃傷事件から赤穂浪士の討ち入りまでを、浅野内匠頭と吉良上野介、それぞれの妻の視点で描く。
こういう見方は嫌いなほうだが、あのあまりにも有名な事件を妻の側から描くという発想はやはり女性作家ならでは、ではないだろうか。
いろいろなところで扱われ過ぎている題材にもかかわらず新鮮味を感じた。
投稿元:
レビューを見る
忠臣蔵つながりで購入した一書だが、その余の作品もなかなか。吉良上野介の妻富子の目線で上野介、実家上杉家と実子ら家族、内匠頭やその妻瑶泉院への想いを描く「おんな泉岳寺」。助けた女が恨みに思うのは自らの家業と実家。その2人の恋情と相克を描く「悲恋」。時代の趨勢に取り残されつつある清水の次郎長一の高弟らの煩悶と迷走を描く「いびつ」。明治維新期から昭和初期までを駆け抜け、体制破壊者から擁護者へと変転した西園寺公望の心持ちを描く「坐漁の人」。いずれも、乾いた描写で時代や世間の目線の変遷に翻弄される模様が描写。
投稿元:
レビューを見る
「忠臣蔵」が好きです。
今まで、数多く映像や舞台化されたものを見てきましたが、
そのほとんどが浅野内匠頭哀れ、吉良憎しでした。
多分に誇張、脚色された部分もあるのだと思いますが、
あの忠義の世界がなんともいえず好きなんですよね。
ちなみに『里見八犬伝』も好き。
本書にも書かれていましたが、その吉良殿、実は名君だったとか。
何事も片方からだけ見てはいけないということなんですね。
ただ舞台などは、大げさなくらい偏ってくれた方が面白かったりしますが…。
見事本懐を遂げた四十七士、
彼らが讃えられるその陰で、苦労を共にし、涙した女性たち。
彼らをひっそりと支えた彼女たちの悲哀も、もっと世に語られてほしかったりします。
表題作の浅野内匠頭の妻・瑤泉院と吉良上野介の妻・富子の物語。
江戸の大火で罪人を解き放った、あの牢屋奉行・石出帯刀の悲恋。
清水の次郎長一家の大政の葛藤。
西園寺公望の命を狙う若者の心模様。
それぞれ感慨深かったです。
投稿元:
レビューを見る
表題作『おんな泉岳寺』は吉良上野介の妻富子、『悲恋』は牢屋奉行石出帯刀、『いびつ』は次郎長一家の大政、『座漁の人』は西園寺公望公と、いずれも歴史上の人物が主人公。
作家の想像力を駆使し、それぞれ趣を異にした楽しめる好短編4編。
忠臣蔵というと、討ち入りを果たした赤穂の浪士にばかり脚光を浴び、相手方は常に敵役となっている。
しかし、表題作は浅野内匠頭の妻瑶泉院と対比させながら、吉良の妻富子に焦点を置いて、夫を案じ家族を思う一人の女性の心を浮き彫りにさせた異色作。
同著者に『四十八人目の忠臣』という長編があるが、こちらは「浪士と将軍に愛された女性」を主人公に、史実と作家の想像力を融合させた傑作。
投稿元:
レビューを見る
いわゆる「忠臣蔵」、鼠小僧、清水次郎長、西園寺公望。さてさて、共通点はどこに?結局、最後までわからんかった(笑)
さすがに表題作は、視点を吉良上野介夫人・上杉富子にしているだけあって、面白い切り口の話だった。いつの時代も苦労するのは女性たち…って最近、こればっかりだ!