- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
カフカ田舎医者 みんなのレビュー
- 山村 浩二 (文・絵), フランツ・カフカ (原作)
- 税込価格:2,200円(20pt)
- 出版社:プチグラパブリッシング
- 発行年月:2007.11
- 発送可能日:購入できません
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
8 件中 1 件~ 8 件を表示 |
紙の本
錬金術めいた「田舎医者」の誕生
2008/02/13 07:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:仙人掌きのこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アニメーション作家・山村浩二氏は、本作でオタワ国際アニメーション映画祭グランプリを獲得した。2002年製作の「頭山」と合わせると、世界四大アニメーション映画祭のグランプリを制覇するという世界初の快挙である。アニメというと大人数でつくるものというイメージが強いが、「カフカ田舎医者」の製作スタッフは山村氏をのぞくと4名だという。一年半をかけてコツコツと創られてきた労作、職人技の作品なのだ。
その「カフカ田舎医者」を絵本化したのが本書だが、いわゆるフィルムブックではない。原画をもう一度スキャンし直し、再構成されている。アニメを観た人はお判りだと思うが、本作では魚眼レンズをのぞいたような異常なデフォルメやブレた動きが多用され、カフカ作品に内在する不安や焦燥を実に見事に表現している。そうした「動き」やパソコンによる加工が除かれた事で、よりナマに近い形で山村氏の発想や狙いを見てとる事ができるだろう。既にアニメを観た人にもお勧めの一冊である。
「田舎医者」では全てが裏目だ。吹雪のなか、急患の呼び出しに応じなければならないのに、馬が死んでいる。突然あらわれて馬車を用意してくれた男は、医者の家の下働きの娘を襲おうとする。それを止める間もなく馬車は走り出し、あっという間に十六キロ離れた患者の家についてしまう。そんな思いをしてまで診にきた当の患者の少年は、開口一番「せんせい、僕を死なせて」とささやく。さらに……。彼でなくても「いったい私にどうしろというのだ!」と叫びたくなるだろう。
自分の役割を果たそうと努力しても報われず、近付こうと思うほど遠ざかる……そんな人生の真実を、カフカはプラハの「錬金術師通り」と呼ばれる暖房設備もろくにない極寒の一室で書いた。あげく結核に倒れ41歳で「すべての作品を灰に」するよう遺言して死んだ。(友人がその約束を破ったのは有名なエピソードだ)その40年後に生まれた山村浩二氏が、41歳になった時に「田舎医者」をアニメにしようと決意する。
人生はときに不条理で残酷だ。しかし、遺したものが思わぬ反応を見せて「金」を生む。なかなか面白いものではないか。
8 件中 1 件~ 8 件を表示 |