紙の本
手軽に読める古典です
2015/07/14 23:23
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は犯罪を題材とした4作品を収録した短編集です。
本作を読み終えて、新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」に似ていると感じました。ただし、乱歩にはない独特のジメジメした雰囲気というか、何というか独特な雰囲気がありました。初めて谷崎作品を読んだのでうまく説明できません。。。
紙の本
谷崎潤一郎の東京物語であり、謎物語。
2016/04/03 10:54
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投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大正時代に書かれた谷崎潤一郎の犯罪小説集。
短編『柳湯の事件』『途上』『私』中編『白昼鬼語』の4編です。
谷崎潤一郎は日本橋の生まれであり、この短編集は匂いや触感など五感をくすぐる要素もあり、東京の街が舞台となっている東京物語でもあり、謎物語でもあってお得感満載です。
たまたま私は先日、江戸三十三観音巡りをして、今まで行った事のない東京の色々な街に行ったり、都電や地下鉄に乗って東京お寺めぐりをしたばかりなので、白山上から三田電車に乗る、とか新橋、銀座、京橋、水天宮へと歩きながら謎解きをする『途上』など地図がよみがえるようでした。
川本三郎さんが『大正幻影』の中で、谷崎潤一郎の東京の土地感は生まれ持った素養であろう、と書かれている通り。
また、触感とか嗅覚といった五感を刺激する独特のねちこい表現も見逃せません。
『柳湯の事件』はとにかくぬらぬらしているのです。ぬらぬら、にょろにょろ、もくもく、うねうねという言葉が言い募るように使われ、大正当時の湯屋(銭湯)の様子がよくわかるようです。
日本人は風呂好きって言っても今、ここまで銭湯がもくもくぬらぬらするほどではないでしょう。
そんな時代の違いも興味深い。
そして中編『白昼鬼話』は、あえていうならば中編のタイトルが今ひとつぴんとこなくて、『痴人の愛』のようなセンセーショナルで内容をずばり表すようなものでなかったのが残念です。
ただ、美しい女の描写になると、ここぞ、とばかりに筆を走らす谷崎先生、本領発揮。
壁の穴からのぞく恐ろしくも美しい殺人。しかも首謀者は若い美しい女。
「何と云うなまめかしい、何というしなやかな姿だろう。寂然と身に纏う柔かい羅衣(うすもの)の皺一つ揺るがせずに据わっているにも拘らず、そのなまめかしさとしなやかさとは体中の曲線のあらゆる部分に行きわたっていて、何かこう、蛇がするするとのた打ってでもいるような滑らかな波が這っているのである」
後に江戸川乱歩や横溝正史に影響を与えたというのがよくわかる耽美な、そしてインモラルな雰囲気満載。
女性の描写の細かさは、もう、谷崎潤一郎ならではのものがあって、真相がどうというより、やはり文章の耽美さを味わうという意味合いの方が私には大きかったと思います。
文月更夜さんの読書タグ: ミステリー 小説
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うおおお、われわれは、谷崎に、バカにされている!
そんな風に感じるミステリー(に分類しておく)4編。「柳湯の事件」「途上」「私」「白昼鬼語」と、「谷崎に騙される度」がだんだん高くなっていきます。
あと、さすが谷崎、ヘンタイの描写がすごいのよ(笑)
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「変態性欲」を扱った作品の方が有名なものが多いので、「谷崎=探偵小説」と云われてもピンと来ないかもしれません。ミステリや推理ものが好きな方にお薦めです。
「白昼鬼語」は特にお薦めです。覗き見ると云う行為い付随する恐怖とどこかエロティックな気持ちが味わえます。
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今までに読んだ谷崎の作品の中で一番好きです。
今までに読んだミステリ短編の中でも1、2を争うと思う。
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こんな谷崎潤一郎もあったのか。
とも思えるし、
やはりこれぞ谷崎潤一郎と思わせる描写も山の如し。
女性の描写、とくに艶めいて香ってきそうな描写は
谷崎潤一郎の右に出るものはいないのではないかと思ってしまう。
単に事件を解決するよりも、
人間の内に潜む恐ろしさや、弱いところが
引っ張り出されて書かれたかんじ。
スリル満点で面白い。まったく古さを感じない。
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艶かしい女性描写を期待して読んだせいか、描写の穏やかさに肩透かしを食らった感じでしたが、最後に収録されている「白昼鬼語」の登場人物が誇大妄想により繰り広げる、事件への推察は、狂気を感じられて秀逸でした。
「白昼鬼語」のためだけにでも読む価値はあったかな。
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愛すべき変態…と、いうところだろうか。谷崎ファンに聞かれると怒られそうだけど、私は谷崎さんが大好きです。
全編を通して、嗜好が掻き立てる衝動が描かれていて、新しい「犯罪小説」集だったと思う。
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〈真〉や〈善〉との紐帯から解き放たれ自律した〈美〉、〈悪〉や〈狂気〉や〈死〉と結び付けられる〈美〉に陶酔沈潜して、世俗の市民的価値観の垢が雪がれていく。
"恐ろしい薬だから綺麗なんだわ。悪魔は神様と同じように美しいッて云うじゃないの"(「白昼鬼語」)
探偵小説の本質を云々する渡部直巳の解説は、衒学的な文体が不快感を催すが、なかなか興味深い。探偵小説とは、作者に対する読者の劣位と云う読書行為に内在する構図を最大限に利用するジャンルだ、と云う。予め語られる全てを知悉している作者と、語られつつあることを追うことによってしかそれを知ることが出来ない読者。そして作中に配される真犯人・探偵・視点人物等々のうちの誰に、作者の優位性を与えるか・読者の劣位性を共有させるか、そのヴァリエーションによって様々なスタイルの探偵小説が立ち現れてくることになる(しかも、作中人物のこの役割分担は物語の途中で変化していくかもしれない・・・)。ここで重要なのは、この役割分担自体が、読者にとってはその劣位性によって予め隠蔽されている"謎"であるということだ。そこに、クリスティ「アクロイド殺人事件」や谷崎「途上」の面白さが成り立つ要因が在るのだと云える。
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「お這いり」この一つのセリフに谷崎と登場人物の顔が凝縮されています。 人の肌や声に関する描写が緻密で美しい。谷崎の目線を思わせるような、艶のある映像が頭の中に浮かんできます。
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この作品が乱歩やクリスティより以前に書かれたという歴史的意義はもちろん、内容も充実した質の高い短編集だと思います。
【柳湯の事件】物語のはじまりが探偵小説っぽくて良いです。サイコで陰鬱な内容もおもしろい。
【途上】個人的にプロバブリティの犯罪というのが好きなので、これはとても楽しめました。優しい夫像がひっくり返っていく様はゾクゾクします。
【私】このトリックでもっとレベルの高い作品はたくさんあるでしょうが、これはトリック一発物でなく、人の暗部や複雑さを描いている所も秀逸なのだと思います。
【白昼鬼語】覗きという行為は、わくわくする話が多いです。2段構えの落ちの展開も楽しく、結末にいたってキャラクターが一層際立ちました。
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11066
4編収録。ヌルヌルフェチの一篇目、語り手に仕掛けのある3篇目、フックに次ぐフックと意外などんでん返しの4篇目。
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風邪ひいて寝てるだけじゃ暇なんで、読了。
「白昼鬼語」がすっごく好き
っていうか女性が艶っぽい事!
なんか、幻想的な怪しげな空間に浸れた
・・・が、風邪ひいて集中力足りない時に読むのは間違ったかも
復活したら読み直す!
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乱歩が多大に影響されたというだけあって、谷崎を読んでいるはずなのに、乱歩を読んでるような錯覚に陥った『白昼鬼語』。本当は逆なんだけど。谷崎はいろいろ読んでみてるけど、こんなのもあるのね、と、面白かった。
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何かの小説(なんだったかは忘れた)に出てきた「途上」が入っていたので、どんなもんだろうと思って手に取った。
なにこれ、期待以上!
乱歩だったか誰だったかが、谷崎が探偵小説に行かなくて良かったとかなんとか言ってた(書いてた?)エピソードをどこかで聞いたような気がするんだけど(うろ覚えにもホドがある…)、
なんでもっと書いてくれなかったのか!!と、思ってしまう。
収録されている全ての短編が良かった。
あの時代の空気をどことなく感じながら、
妖しくも美しい犯罪の世界に連れて行ってくれます。