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ズッと長らく今年80歳になる草間彌生を、オノ・ヨーコと同じような前衛芸術家という風に勝手に思い込んでいましたが、どこでそうなったのかよく分かりませんでした。
おそらく彼女が彫刻家とか画家とかという範疇を大いに逸脱したことをして来られたからだと思います。
60年代を探究していた頃に、世界を股に掛ける傑出した女性芸術家として2人の名前がありました。そのうちの草間彌生に強く惹かれた私は、追っかけて行けば行くほど、彼女がとんでもない存在であることに気がつきました。
ただの平常な美術家ではなく、男根状のオブジェをはりつけた立体作品や、ボディ・ペインティングとか数々のハプニングを交えたパフォーマンスを行ったり、ヴェネツィア・ビエンナーレに突如ゲリラ参加したりして、1960年代に、前衛の女王と言われ、反戦・平和運動にも積極的にかかわるなど、オノ・ヨーコにも似た経歴の持ち主ですが、私は何と言っても70年以降の活動に最も注目しています。
それは小説家としての行為で・・・・・
『マンハッタン自殺未遂常習犯』(1978年工作社刊・のち1984年角川文庫)
『クリストファー男娼窟』(1984年角川書店)
『ウッドストック陰茎切り』(1988年ペヨトル工房)
他にも書いてますが、この3冊の独自性・特異性は、日本文学の中でも特筆されるべきものがあります。単なる猟奇性・異常性ではない、アナロジーするなら例えばセリーヌにも通じるものを感じるくらいです。
そして、この本です。これは描き下ろし詩画集・絵画シリーズ「愛はとこしえ」全50点を見ることができる本ですが、これを読むと、彼女は詩人としても優れた才能の持ち主だということが分かります。
同じものを映像化した『ニアイコール』というDVDもありますが、これは彼女が描く100号のモノクロシリーズの50作を密着映像で見せてくれる貴重なドキュメンタリーです。
実際に見たことがないのがとても残念なので、何とかして実物を見るような機会を作ろうと思っています。