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紙の本
法学教育の病巣
2008/10/07 04:58
18人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は京都大学のロースクール教材として作成された演習本である。確かに設問自体は一筋縄でいくものではなく、その手ごたえたるや例えば、「司法試験石山教授の新会社法論文演習」や弥永教授の「演習会社法」「会社法100問」よりも上であることは間違いない。しかし、本書が一部でもてはやされている理由は、京大の有力教授の手になるということと、この難しさにあるだけで、他に素晴らしい点はない。
そもそも、解答が付いてないのは演習書として失格である。たとえば、受験法の神様を自称(それなりに支持者もいるし、まあ本人の力量は高い)するLECの柴田講師が言っていたが「自分で回答を示さない者にケチをつける資格はない」というのは本当だ。教授はこれという解答例はないとか自分で考える力を・・とかいろいろ言い訳はする。
しかし、採点をするばかりで解答例を書いて見せないのは卑怯である。解答を示し、これ以外にも書き方はある・・とすれば済む。そして、教育効果という観点からも、自分でやらず丸のみするだけでは実力がつかない(実際はそんなこともない。何事もまねごとから始まるというのは、100問の高名な実務家が100問のなかで指摘しているとおりだ)というならば、それだけの話で著者らの責任ではない。
そしてそもそも教授たちが書いた答案例はほぼ絶無である。一度は見本を見せなければいくら「この書き方じゃ評価されない」と言っても誰も技を盗むことはできない。
特に本書は設問が難解であり、自学自習はまず不可能である。一人でやるとするなら、資料調べで1日終わりは覚悟しておくことだ。そして江頭とケースブックは読んでいる前提になっているようだ。
こんな演習本として失格の本より、実務判例を重視し、会社法を立法担当した実務家たちが「自ら」解答を書き下ろし、勉強の仕方まで詳細に書いてくれている100問の方が遥かに優れていると私は思う。ロースクールとはいえ、みんなで議論して手分けして回答をつくってなんかやってらんない人だっているだろう。そんな苦労をするよりも、100問をやった方がいいだろう。100問には少なくとも100選掲載判例の使い方は分かるし、さらに足りなければ、判例をしっかり「読ませ」設問も判例にしっかり関連しているケースブックの方が100倍優れている。
解答例が絶無で、なおかつ設問が、それだけをコピーすれば足りる程度に判例から遊離している本書は、新司法試験や司法書士試験という観点からも全く不要であるといってよい。強いて言えば、学者志望が理解を深める上ではいいかもというのがせめてものフォローだ。司法研修所では、法律文章を「書く」訓練が日々行われているのであり、そういう教育を禁止している法科大学院教育を中心とする法学教育の病巣はまさしく本書にある教育者の勘違いにある。学生諸氏は、権威に納得するだけでなく、おかしいものはやはりおかしいと声をあげていいのではないだろうか。
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