紙の本
粋と縁とカラッとした爽やかさが魅力のサクセスストーリー
2009/12/23 19:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
<あらすじ>
父の作った借金を取り立てに来る渡世人の伸助に気に懸けられながら、つばきの家族はかつかつの生活を続けていた。
つばきが九歳の頃に大火事が起こったことで、つばき達の運命が転がり始める。
父の借金は帳消しになり、火事の後に始まった炊き出しで抜きんでた飯炊きの技を見せたつばき。
すぐに評判になり、飯炊きの技術を買われて、母とつばきは多くの給金をもらい賄いの仕事をすることになった。
幼いながら、飯炊きのすべてに才能をみせていたつばきは、自分の作った賄いを食べて喜ぶ火の見番達の姿を見て、大人になったらごはん屋さんを始める思いを固めた。
十七歳になったつばきは、賄いの給金を貯めた金で一膳飯屋『だいこん』を始め、商才を発揮し始めると、困難に遭いながらも多くの縁と強い運で歩き始めた。
<感想>
本書の特徴は、粋な江戸っ子である主人公と取り巻く登場人物たちが織りなす、カラッとした爽やかな物語である。
テンポのいい短い段落構成が読みやすく、厚さに気後れさせる本書をあっというまに読み進ませる。
多くの困難や難題を機転や人の縁によって乗り越えていく商才に満ちたつばきだけでなく、妹たちを母親代わりに面倒を見てきたため、年相応に甘える妹たちを見てうらやましく感じる様子、『だいこん』を営んでいるために恋を諦めるところなど、長女特有の悩み、年相応の悩みなども描かれており、つばきの人間像が魅力的なものになっている。
本書の話の中心は、序章にあるつばきが深川に新しい『だいこん』を始めるまでの、つばきと家族、そして一膳飯屋『だいこん』の物語である。
物語の構成は、始めに物語の終点が示してあり、最後にそこへ戻るという形なので、読み終えて少々期待外れに感じてしまった。
物語は現在に至るつばきと『だいこん』のサクセスストーリーであり、読み進めていくにしたがって、読者が一緒になってつばきと『だいこん』の成長を楽しむというスタイルではないのが、不満を感じた理由。
そして終章前の展開は、それまでの一歩一歩歩くような話の進め方から比べると、少々駆け足的なものであり、終章に向けてまとめにかかった印象を受けた。
主人公つばきは、抜きんでた飯炊きの技術、客の事を考えた料理、利発性格で粋な江戸の大人達に人気者となり、その縁によって様々な困難を乗り越えていくが、頭が良く利発なつばきと粋な人物たちなので、数々の問題や難題はあっさりと解決してしまい(穿った見方をすると都合のいい展開)、好みでないと感じる人がいるかもしれない。
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いつもの通り腕のある働く人の話。面白い。けど、成功してもイマイチ報われない主人公。長女ってこーゆーもんだよなー...と思って微妙な気持ちに。
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2.22読了。山本 一力読むのはは2作目だな。やっぱり長編の時代物。でも、主人公つばき魅力がありどんどん読み進められる。でも、長女ゆえか最後まで幸せをつかみきれていない。というか、つばきの幸せはまだまだこれからか。
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分厚いので読めるか!?と思ったけど面白かった。
日本版「大草原の小さな家」みたいな?
「おしん」みたいな?
そんな感じです。(よく分からない例えですみません^^;)
頑張れば報われる。正直に生きよう。
今の時代では陳腐に聞こえるかもしれないけれど、でも元気が出ます。(^^)
主人公つばきちゃんには幸せになってほしいな〜。
時代小説も結構面白いかもしれない。と思いました。
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直木賞作家・山本一力氏による細腕繁盛記の様なお話。家族の絆や働く事の尊さ、真面目に生きる普通の人々を丁寧に優しいまなざしで描いた素晴らしい作品。好きです!
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この本を読んだ後は、無性に今の仕事との向き合い方を、考えさせられる話でした。真っすぐで一生懸命な主人公が羨ましくもあります。
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本文より
『知恵を使い、こころざしを捨てず、ひたむきに汗を流せば、
道は開ける。ひとが力を貸してくれる・・・・。』
主人公つばきの商売の才気と直向きさを羨ましいと感じてしまった。
そして、同時にそのための孤独もよく解った。
自分の仕事・家族を重ね合わせて考えると、
深く染み入る言葉がありました。
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あかね空に並ぶ、山本一力の秀作だと思う。
ここのお店のご飯食べたい!!と思わせる描写。
江戸時代の素敵な人情話。
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母が最近の一力先生は説教臭くなったって・・・うーん、そうかも?そういえば?なんとなく触手が動きにくくなってきた、けど、文庫新刊が出たらまだまだ「買い」ですね、私的には。この本は何故か気になるシーンが多くなんども手にとってぱらぱら。
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まっすぐで、実直な女性の半生が描かれている・・・
とても読みやすい作品です。
山本一力さんの作品はどれも好きでよく読んでいます。
この作品を読み終えると、白いご飯と、味噌汁が飲みたくなりますよ。
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繁盛していた一膳飯屋を人に譲って新しい土地で開店しようという飯炊き上手なつばきが、土地の渡世人<閻魔堂の弐蔵>に呼び出され、というところから始まり、それまでのつばきの人生を弐蔵との因縁を解き明かしつつ回想してゆくお話。かなり分厚い本ですが面白いしテンポが良いのでするするっとあっという間に読み終わってしまいました。腕もあるし知恵もあるが博打と酒に弱いつばきの父、しっかり者で器量良しだけれど子供の頃から家族を支えて自分で道を切り開いで生きてきたので、惚れた男があっても誰かに添って生きることはできそうもない、と思い定めているつばき、父を支え続けてふんばってくれたけれど、亭主第一で子供は二の次だった母親、など、出来た人物でもそれぞれ事情があり泣きどころもあり、ということが見事に描きだされています。続編が連載中だそうで早く読みたいです。
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本の帯に「白いご飯が食べたくなる」とありましたが、まさにそんな感じ
美味しいご飯とおかず、お味噌汁が欲しくなる小説です
時代は江戸
長屋の3姉妹の長女に生まれた「つばき」
もって生まれた商才とご飯を美味しく炊ける才能で一膳飯屋を大きくしていく話
読み始めは、なんだかとっちらかってて読みにくいなあと思ったけれど
途中から一気でした
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出世話に多いご都合主義の誹りを免れないでしょう。しかし、それがどうした。読者は貧しいながらも矜持を持ち、健気に働く女性主人公と周りの人情にホロリとさせられ、主人公が幸せを手に入れることに心から拍手を贈るだろう。それで良いではないか。
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え、これで終わり?という終わり方・・・。
本筋はこれからだと思ってたので正直びっくりしました。
これまでの思い出話がメインだったんですねえ。
商才があって、器量も良くて、大成功!みたいな展開は・・・・ですが、
炊きたてごはんが美味しそうです。
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健気な少女が 働く事を 通して
最近希薄な 「人との関わり」を 読者に
伝えてくれます
時代設定は あくまでも時代設定
読み終わることには 著者が 「だいこん」で
伝えたかった事が 心に 染みて来ます