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再読。日本の防衛論議はともすれば両極端の完全主義に陥る。自衛力の増大か非武装中立か。両極によるのではなく、最小限度の軍備をし、アメリカと一定程度の結びつきを持つことを筆者は主張する。60年代の著書だが、日本が外に開かれた国であるためには、冒険心を持った「あぶれ者」を「あぶれ者」で終わらせるのではなく、政府が支援しなければならないという忠告は現代にも通じるものがある。
日本と西洋の関わり方に対する筆者の見方がわかりやすいので要約しておく。世界のコミュニケーション手段は歴史的に海、ステップ、そして砂漠だった。ヨーロッパが地中海を中心とした円だったこと、そして、モンゴル帝国が支配したステップがその代表例である。日本は周りを海に囲まれているが、世界のコミュニケーションネットワークに組み込まれたのは大航海時代以降である。日本にとって太平洋は「海」ではなかったが、19世紀のアメリカの西漸運動は否応なく太平洋を「海」とした。20世紀に入って太平洋はアメリカの「海」となっただけでなく、世界の海がアメリカの「海」となっている。