紙の本
古代ギリシアの独特な雰囲気をもった哲学者ディオゲノスの思想を追った稀有な一冊です!
2020/03/12 13:21
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、古代ギリシアにおける哲学者ディオゲノスの思想を追った稀有な一冊です。ディオゲノスは、当時、非常に独特な雰囲気をまとった人物で、カメの中に住み、アテナイの町を歩く時には、ぼろをまとって、頭陀袋を下げ、あたかも浮浪者のようないで立ちだったと述べられています。そんな彼が町中で人々に説教を繰り返すのですが、それは一体どのようなものだったのでしょうか。彼の思想は、当時有名な哲学者アリストテレスの人間観などを全否定し、「世界市民」という概念をいち早く提唱したとも言われています。そんな彼の思想を、同書では丁寧に追いながら、紹介していきます。
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ディオゲネスの思想はとにかく素晴らしい。アリストテレスとディオゲネスが対立した存在として描かれていて興味深い。ただ検証が詳しすぎて読み飛ばした部分も多かった。
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あまりに分厚い本だと思ってはいたが、それもそのはず、ディオギネスに関する文献は「ディオギネス伝」と彼の散逸した著書「国家」ぐらいのものである。それであるがゆえに、ここまで大きくなってしまったのであろう。
大半が彼のエピソードに関する検討や、文献の比較検討に付き合わされる。すこし退屈であるかもしれない。
彼は「自由」「平等」「友愛」を何よりも尊重した。彼の生き方そのものはそれの発露だし、あらゆる問答の中にもそれが現れている。「等価交換は不等価交換ではないか?」といい、「モノをねだってそれを私は受け取った。君にもその恩恵が伝わったはずだ。」というなど、よく考えればそのとおりかもしれないと思う行動や発言が多い。
また、アリストテレスのように侃々諤々の議論を嫌っているのか、それともそれに論駁しうるためなのか、正義に関する議論はあまりない。むしろ色々な事柄は「飾りだ。」とまでいう。アリストテレスは「何が何に値するか」を考えるあまり「生まれつき奴隷の身分に相応する人もいるのではないか。」とまでいうが、ディオギネスはロールズの無知のヴェールを先取りするかのように、「名声だの財産だのは飾りだ。どうせ皆一緒なんだ。みんな満たされるものは同じだし、目があり鼻があり手で飯を食べる。奴隷なんていうのも呼称に過ぎない。」とまで云った。ゆえに、彼の唯一の合法政府は「世界政府」だとする。
彼のような哲学者は、時代を問わず一定程度いるのだな、という気も同時にした。
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『古代ギリシアの思想』ですっかり虜になってしまった山川偉也先生渾身の一撃である。丹念な考証や、ときには軽妙な比喩を交えつつ一歩一歩着実に結論へと向かう確固たる文体は健在。ディオゲネス伝にも名の見えるアレクサンドロスとの対比から、彼の師でもあったアリストテレスの人間定義及び正義論を切り崩していく様はスリリングですらある。学術文庫とはいえ、専門書ではない一般書での、かように読み応えある思想分析は見事というほかない。あとは断腸の思いでカットせざるをえなかった「貨幣変造事件真相解明」部分の書籍化を切に願うばかり。
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[ 内容 ]
甕の中に住まい、頭陀袋を下げ、襤褸をまとって犬のようにアテナイの町をうろつき、教説を説いたシノペのディオゲネス。
おびただしい数の逸話で知られる「犬哲学者」の思想とは、いったいどのようなものだったのか。
アリストテレス的人間観や当時の伝統・習慣を全否定し、「世界市民」という新しい理念を唱導・実践した思想家の実像を探り出し、われわれ現代人の生き方を模索する。
[ 目次 ]
序章 「世界市民」の原像としてのディオゲネス
第1章 「ディオゲネス伝」読解のために
第2章 シノペ―通貨変造事件前夜
第3章 シノペ―通貨変造事件当日
第4章 通貨変造事件直前・直後の顛末
第5章 象徴戦略としての「犬」、そのシンボリズム
第6章 狂ったソクラテス
第7章 ディオゲネスとアレクサンドロス
第8章 ポリス的動物と「獣」のアナロギア
第9章 ディオゲネスの奴隷制批判
第10章 自足して生きる
第11章 アリストテレスの正義論
第12章 世界市民への道
終章 世界市民主義の地平
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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甕の中に住まい、頭陀袋を下げ、襤褸をまとって 犬のようにアテナイの町をうろつき、教説を説い たシノペのディオゲネス。おびただしい数の逸話 で知られる「犬哲学者」の思想とは、いったいど のようなものだったのか。アリストテレス的人間 観や当時の伝統・習慣を全否定し、「世界市民」 という新しい理念を唱導・実践した思想家の実像 を探り出し、われわれ現代人の生き方を模索す る。