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総務省「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」で中心になっていた慶応大学の中村さんがそのものずばりのテーマで書かれた本です。
骨子は2章と3章。個人的にはそこだけで十分納得感があります。アニメなどのポップカルチャー/コンテンツ産業が、世界で日本の存在感を高める上で非常に重要、なのに日本の行政はそれをきちんとサポートできていないどころか足を引っ張っている、という辺りの主張は、政治家でいうと麻生さん(そういえば元総務大臣)と近しいものがあります。その上で、情報通信法といった通信と放送の法制度を統合してレイヤごとの規制緩和を伴う法制度に変えましょう、という論立てで、これまでの著者の主張をあらためて順序立てて説明をしています。
確かに今のあり方は旧来の体制と旧来の技術に引きずられていて、全く現時点では(著作権関連法含めて)時代遅れになっているんだなあと著者の意図通り思わせてくれます。もし可能であれば、TV放送のプログラム構成や番組編成にこっちが合わせて観るのではなく、こちらの都合に合わせてTVで好きなようにコンテンツを観たいとは思うのは自然なんでしょう。DVRがその一部を実現するツールになってはいるのですが、IPTVなどの技術を使うと(コスト面やビジネス面はおいておいて)技術的にはさらに色々とできるでしょ、ということだと思います。
法改正の議論は、この人が最後まで引っ張るのであればいいのかもしれませんが、誰か別の手に渡ったあとに換骨奪胎されて逆に変な風にならなければと思います。いずれにせよ、2011年のアナログ停波を向かえて、このまま何も変わらないということは、海外での動向(YouTubeやJoostなんか)を考えると、ないんでしょうね。
規制含めてこの辺りの議論を知るには、意見が偏っているかもしれませんが、よい本で、楽しめて読める本だと思います。