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中篇を3篇収録した怪談アンソロジー。
「シートンおばさん」 ウォルター・デ・ラ・メア
荒れゆくままの広大な屋敷、シートンに対するおばさんの不可解な敵意、得体の知れない婚約者・・・・・
曖昧さが一層不気味さをかきたてているかのような一篇。
この世のものならぬ存在であるかのようにシートンに示唆されるおばさんは、その行動の奇矯さを含めて確かに怖ろしげだが、暗い想念に蝕まれているかのような、生気のないシートンの方が、私は怖い。
「水晶の瑕」 メイ・シンクレア
精神に変調をきたしたハーディング・ポウエルが見ているであろう世界を、主人公アガサが体感するシーンの、生々しい恐怖感・・
「地獄」 アルジャノン・ブラックウッド
今にも何かが起こりそうなのに起こらない、その緊迫感。地の底から湧き出る声と、重い扉が閉まるかのような音が暗示するもの。
3篇ともに、読み手の想像力をかきたてずにはおかない作品。
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怪談中篇傑作集とありますが、怪談というと「耳袋」のような話を想像してしまいがちですが(というか、私が持ってるイメージがそれだった)どちらかというと「世にも奇妙な物語」系。
3つの中篇からなる本作。読み終わってみると意外にも最初の「シートンのおばさん」が一番、怪談っぽいんじゃないかと思ってしまいました。でもこの話を説明しろといわれるとまるきりわからない。人によっていろんな解釈があるのでしょうけれど。英国ではテレビドラマにもなってるようですね。カテゴリはホラーのようです。機会があれば見てみたいものです。
しかしどの話も抽象的すぎて、お手軽にコワイ話が読みたい!という人には不向きなんじゃないかと思います。
じっくり腰をすえて何かわからないもの、不思議なことに向かい合ってみたい方にはオススメかも?
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薄気味悪い表紙といい、のたくる様な本文フォントといい一見さんお断り雰囲気が満ち溢れているもののそれ程怖くは無いのでご安心を。
「シートンのおばさん」:如何にも友達の少なそうな少年に友人だと思われた主人公は、彼の自宅へ誘われる。するとそこには不気味なおばさんが…/白髪で髪の量の多いおばさんと聞いて湯婆婆が浮かびくすっと笑ってしまった(ただしターゲットにされたくはない)。チャーミングだけど(そこで油断させて?)狙った獲物は確実に仕留めるタイプの妖怪だと思われる。
「水晶の瑕」:人の精神状態をコントロールすることが出来るアガサ。しかし、自分の心理状態も清らかなものでなくてはならないという条件がある。精神が不安定な隣人の夫を落ち着かせるために奮闘しようとするが、アガサには不倫をしているという後ろめたさがあり…/不安定な女性心理をホラーという媒体を使って書きたかった気持ちは分かるものの、何分設定が甘い。ヒーリングセラピストという職業がこの時代にあったなら、もっと上手い物語になったかも。
「地獄」:同居している芸術家の卵兄妹。妹のフランシスは外国から戻って来て淋しいと思われる未亡人の家に住むことになった。フランシスからの手紙には穏やかながらも何か重大なことを伏せている様子。兄のビルがお屋敷へ向かうと、確かにただならぬ雰囲気がそこには待ち受けていた。東西怪談よみくらべ(https://goo.gl/EHZtSK)にて気になった収録作の中でも目玉作品。訳者の仰っていた内容通り、確かに決定的に恐ろしいことが起こらないかわりにすっと冷たいものが背筋を走る気持ちの悪さを堪能。流石英国怪談。
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最近のホラーだと血塗れで殺戮とグロテスクなイメージが前面に出ているが、本作は英国怪談らしい不気味さ、奇っ怪さと言ったものが出ている。
三篇が収められているが、一筋縄ではいかずなかなかにゾクッとさせる。古い作品だが逆に新鮮である。