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アンチミステリの大傑作
2020/12/19 12:39
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投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
本格ミステリ低迷期に発表された本格ミステリの大傑作ですが、初めて佐々木丸美さんの作品を読みました。評価の高いことは知っていましたが、読み終わって「これはすごい!」と思いました。登場人物が限定された雪の館ミステリの典型的なパターンの本格ミステリですが、従兄弟同士の人間関係をものすごく丁寧に書き上げています。不可能犯罪、論理的推理、いくつかの小トリックが組み合わされた紛れもない本格ミステリですが、それ以上に作者は哲学的に犯罪動機を語るのに力を入れていて、これは文学小説として書かれたアンチミステリであると感じました。ここまで深いミステリにはなかなか巡り合わないです。本当に大傑作だと思います。
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古本で購入した当時、すでにぼろぼろだった文庫を覚えている。
汚れを気にせず読み返していたのはもう十年以上昔になるのか。
それはいつも真夜中で、でも壁の向こうには必ず誰かがいて、なのに
とても孤独でしかたなかった。とても寂しい、冷たい、寒い、凍えるような。
この世の果てに建っているかのごとき洋館が舞台なせいなのか。
誰が、どうして、なんのために…
涼子ちゃんの小さな疑問は不安に替わり、やがて恐れへと変貌する。
伝染した緊張に後押しされ、ページをめくる手が止まらない。
階段を転げ落ちるゴムまりのように、
落ちるところまで落ちてしまうまで。
これまでの私は、自分で小説を選ぶという事をしたことがなかった。
本を読むという行為がまず、20年近くの人生で皆無に近いものだったから。
課題図書すら覚えていない。
感想文はいつもでっちあげ。枚数があれば点数が稼げる楽な宿題。
そんな読書音痴が、どうして説明できるだろう。むしろ教えてほしかった。
なんでこの本は面白いの?って。
今なら、少しだけ助言できる。すべてではないけれど。
昔から全然成長していない。
お前が好きなのは謎と解決、これがいつも登場してるじゃないか、と。
本作は積ん読の作品ではないけれど、
やっぱり1冊目はこれかな、と思いました。
すでに絶版になり久しく、著者が再販を望まれないこともあり
図書館か古本屋で探すくらいしか読む手立てがありませんでした。
そんな丸美先生の著作の全てを!このたび復刊していただける運びになったこと
本当に有難く、ひたすら感謝です。復刊ドットコムありがとう。。
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館シリーズ第1弾。
なんだかサラっと読めてしまった。
可もなく不可もなくというか。
主人公を含め、出てくるキャラクターの味が薄いのがその原因かも。濃ゆいキャラ、毒のあるキャラがいないので、淡々としている感じ。
館シリーズ第2弾もとりあえず読もう。
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佐々木丸美さん初挑戦。読むまでは、叙情的ミステリテイストサスペンス、だと何かを勘違いしていました。きちんとトリックあり犯人探しありのミステリでしたね。妙な先入観は間違いのもと……。
とにかく文章が綺麗。情景の描写が繊細で美しい。「崖の館」が目に浮かびます。そしてなんだかひどく淋しげな佇まい、という印象も。物語もなかなかに哀しいものでしたし。後味はすごく尾を引くけれど、悪くはないかなあ。