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みんなのレビュー18件

みんなの評価3.8

評価内訳

18 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

新しい『新しい太陽の書』

2008/05/22 21:34

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:峰形 五介 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 早川書房創立六十周年記念リバイバルフェアなる企画で再版されてから五年も経っていないというのに、『新しい太陽の書』がリニューアルされた。リバイバルフェアの時にあわてて購入した私としては釈然としないものがある。しかし、未訳だった『新しい太陽のウールス(仮題)』も発売されると聞けば、新装版を買わずに済ますことはできない(なんだかハヤカワさんに踊らされているような気がするけども)。
 というわけで、新装版を買って読んでみたのだが……おもしろーい!
 正直、旧版を読んでいた時は「おもしろくないこともないけど、ちょっと疲れるなー」などと思っていた。世界観に圧倒されて筋を追うだけで精一杯だったからだ。しかし、今回は物語の全体像を把握した上で読んだので、余裕を持ってウールスという世界に挑むことができた。結果、初読時に見落としていた多くの伏線を見つけ、ジーン・ウルフの超絶な技巧(と、読み手としての自分のレベルの低さ)を思い知った。数年前のリバイバルフェアで『新しい太陽の書』に入門した新参者がこんなことを言うのは生意気かもしれないが、この新装版で初めて『新しい太陽の書』に触れる人に忠告しておこう。一回目で肌が合わなかったとしても、投げ出さないほうがいい。この物語は二回目からがおもしろい。もしかしたら、三回目はもっとおもしろいかもしれない。
 古参の読者にも報告しておくことがある。今回のリニューアルで変わったのは外側だけではない。そう、本文にも手が加えられているのだ。たとえば、「ウールス」や「高貴人」という言葉に付いていた注釈(それが原注なのか訳注なのかは判らない)がなくなっている。読み進めていくうちに意味は判るだろうから、わざわざ注釈を付けるのは野暮だと判断したのだろうか? それから、五章と六章におけるセヴェリアンの口調が変わっている。旧版では大郷士や絵画清掃人ばかりかウルタン師にまでもタメ口をきき、そのことついてウルタン師に咎められてから口調を改めるのだが、新装版では全員に対して丁寧な口調を使い、つい油断して発した「おれ」という一人称を咎められている。他にも、セヴェリアンとアギアの乗る辻馬車を引いているのが驢馬になっていたり、漢字にルビが付いていたり(若年層への配慮?)、逆にルビが排除されていたり(「櫓(バービカン)」や「鍔(キヨン)」など)、台詞の語尾が変わっていたり、「一張羅」が「唯一の衣服」に、「エスコートしている男」が「付き添っている男」に、「イッキ飲みをするから」が「一息に飲むから」に、「より経験のあるメンバー」が「より経験のある者」に、「活人画です」が「劇的場面です」に……などなど、数え切れないほどの変更点がある。誤訳の修正だけで済まさなかった訳者のこだわりには感服の至り。時間に余裕のある人は1ページずつ旧版と読み比べてみるのもいいかもしれない。
 ちなみに本文以外でリニューアル・ポイントは以下の通り。

1 裏表紙の概略が変わった
2 カバーの折り返しに著者の紹介文がついた
3 背表紙が黒くなった
4 柳下毅一郎の解説がついた
5 訳者のあとがきがなくなった
6 表紙のイラストが小畑健

 個人的には3と4がよかった。5はちょっと残念。訳者のあとがきがないと、ウールス(Urth)の本来の発音が「アース」であることが判らない。
 6については……う~ん、どうだろう? 新たな読者層を狙ったということなのかもしれないが、『DEATH NOTE』のブームが過去のものとなった今では証文の出し遅れのような気がしないでもない。

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紙の本

私は再読にかかります

2008/09/05 17:33

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:消息子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 書物を読むことの他には代え難い楽しみを教えてくれる小説がある。たとえば『薔薇の名前』、あるいは『不滅』、そして『新しい太陽の書』。
 『拷問者の影』『調停者の鉤爪』『警士の剣』『独裁者の城塞』は4部作ではなく、ひとつの長編を便宜上4分冊にしてあるものである。『拷問者の影』ならば、ある門から始まり、別の門にいたって終わるというような技巧は凝らされているにせよ。それゆえ、『拷問者の影』を読み終わっても、書評めいたものは何も書けずにいた。しかも、解説でも述べられているように、様々な伏線、語り/騙りの網が張り巡らされ、一読ではその綾なす糸の一部しか見えてこないだろうという代物である。
 ただそれは裏の裏のことであって、表面的にはそんなに難しい話ではない。文明が衰え、太陽もエネルギーを枯渇させつつある、遠未来の地球と思しき惑星ウールスと中世を思わせる社会。独裁者の支配する共和国、独裁者の城塞にある拷問者組合の徒弟セヴェリアン、すなわち「わたし」は刑の執行とときには取り調べを担う専門家の修行をしている。拷問者の手に引き渡された、執行を猶予された囚われの貴人セクラの相手をさせられたセヴェリアンは彼女に恋してしまい、彼女の自殺を幇助、組合を追われ、辺境のスラックスの警士の任に就くため出立する、そして……という話。本巻では城塞のある都市、ネッソスを出るまでが語られる。
 共和国は北方──北へ行くと暖かくなるのだ──で戦争をしているらしい。他方、国内には独裁者に反旗を翻すヴォダルスの勢力がある。冒頭ですぐにセヴェリアンはヴォダルスを助け、彼に忠誠を誓うというようにセヴェリアンの行動原理は明確ではない。われわれ自身のように。不本意ながらスラックスに向かうセヴェリアンの行動は様々な個性的な登場人物に巻き込まれ、状況に流されていくだけのようにも見える。その様々な出来事がどう関連してくるのかなかなか見えてこないのだから。われわれ自身の人生のように。ひょんなことから入手した「調停者の鉤爪」なる不思議な宝石を本来の持ち主であるペルリーヌ尼僧団に返そうというのが、唯一彼の自発的な、しかし副次的な目的である。
 人間に身体的特徴の異なるいくつかの階級があり、過去に遺伝子操作が行われたらしいし、どうやら異星人もいるらしい。技術的には中世レベルだが、しばしば古代科学の産物が登場する。世界の全貌はなかなか見えてこない。冒頭のヴォダラスとの出会いの場面において、ヴォダラスは自身を「ヴォダラリウス」、また「何千ものヴォダラリアイの一人だ」と名乗るといった謎かけのような記述もあちこちにちりばめられている。しかしとりあえず目の前のことは片付けていかねばならない。われわれの日々の生活のように。もちろんセヴェリアンにはわれわれの生活よりは新奇なことがいろいろ生起するので、本書を読み進めるのは苦痛ではないのだけれども。
 手に汗握り、次は次はと読み進めさせられてしまう小説もあるが、これは佳境にはいればはいるほど先に進みたくない、今を噛み締めておきたいといった類の本である。そして私が今この書評を書いているのは、『独裁者の城塞』を読み終わって、すぐさま『拷問者の影』の再読に取りかかろうしているからである。読み始める前には再読など面倒と思っていたにもかかわらず。何しろセヴェリアンは完全記憶の持ち主で何ごとも忘れることができないのだ。われわれの貧弱な記憶力を持ってしては二読三読して挑戦するしかないではないか。最終巻のタイトルが『独裁者の城塞』であることにたとえ気付かなくとも、最初の章にすでに「私は長い旅を始め、それによって私は玉座に戻ったのである」と記されている。徒弟のセヴェリアンが玉座に戻るとはどういう意味か、初読の際には訳がわからず、記憶にも残りがたい。再読はそのような発見の楽しみになりそうなのだ。

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2008/10/02 11:10

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2009/03/10 22:08

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2012/10/21 18:40

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