紙の本
ヴァランダーシリーズの番外編
2017/12/14 22:21
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投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
舌ガンを診断された警察官のステファンはもうすぐ自分は死ぬのではないかという妄執にとらわれる。そんなとき、かつての同僚で定年退職した元警官が殺害される事件が起こる。ステファンはガンのことを考えないようにするため、個人的に事件を調べ始める。事件には精力的に取り組むが、ふとガンのことを思い出すと、絶望にとらわれるという人間の内面の複雑さが描かれている。彼は対極にある二つの感情を抱えながら、死の恐怖から逃げるために進み続ける。
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スウェーデン社会の暗部と個人の懊悩を鮮烈に描くマンケルの最新ミステリ
2008/06/13 15:01
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐吉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヘニング・マンケルは、一見冴えない中年刑事クルト・ヴァランダーを主人公にした警察小説のシリーズで知られる、スウェーデンの国民的作家である。ヴァランダー・シリーズは当初からスウェーデン国内及び北欧で高い評価を受けていたが、2001年、5作目の『目くらましの道』がCWA(英国推理作家協会)ゴールドダガー賞を受賞すると、一躍ヨーロッパ全土に浸透し、各国でのマンケルの人気を不動のものとした。ヴァランダー・シリーズはこれまでに35ヶ国で紹介され、累計2000万部以上の売り上げを記録しているという。
ただし本書は、そのヴァランダー・シリーズが一応の完結をみたあとに書かれた、シリーズ外の長編ミステリである。老境にさしかかったヴァランダーに代わって登場するのは、37歳独身の警察官ステファン・リンドマン。しかし、さまざまな悩みや弱さを抱えた主人公が、思いがけず不可解な事件に巻き込まれ、その背後に潜む巨悪に立ち向かうという、マンケルならではの物語の構図は、ヴァランダー・シリーズと変わらない。また犯罪捜査の過程を通して、等身大の個人の苦悩を描き、同時にスウェーデン社会の暗部を鮮やかに切り取ってみせる彼の手腕も健在である。
舌ガンの宣告を受け、治療開始までの休暇を、死の恐怖と向き合いながら過ごしていたリンドマンは、かつて新米だった彼を指導し、その後退官して北部の僻地に独り暮らしていた元警察官ヘルベルト・モリーンが、何者かによって惨殺されたという新聞記事を目にする。警官時代、常に何かにおびえているようだったモリーン。彼の身にいったい何が起きたのか。目の前の現実から目を背けたいという心理も手伝って、リンドマンは一人かの地に赴く。
地元警察と協力しつつ、一方で独自に捜査を進めていたリンドマンは、モリーンに驚くべき過去があったことを知る。事件の背景に血塗られた歴史の闇が浮かんでくる。そんな矢先、捜査陣のすぐそばで第二の殺人事件が起こる。二つの事件にはどんな繋がりがあるのか。同一犯によるものか。それぞれの動機は何なのか。そして、モリーンの家に残されたタンゴステップの血の足跡が意味するものは……。
とは云うものの、第一の事件の犯人は、まだ序盤のその時点であっさり読者に明かされる。第二の事件が起こった直後から、第一の犯人の視点で語られた章が挿入されてゆくのである。
冒頭に犯行の場面が描かれることも含めて、一般に「倒叙(とうじょ)」と呼ばれるこの形式は、マンケルの作品においてしばしば見られる手法である。前作『目くらましの道』ではこれが特に効果的に用いられていて、同時進行する追う側と追われる側の丹念な心理描写に、サスペンスはいやがうえにも高まっていった。加えて本作では、その先にさらなる展開が待っている。同一犯の仕業として捜査を進める警察陣を尻目に、第一の事件の犯人もまた、彼自身の事情によって第二の犯人を追いはじめるのである。
そしてそこからが本書の圧巻である。切れ味鋭い文章と息つく暇もないスリリングな展開に、ページをめくる手を休める暇もあらばこそ、話は思いも寄らない方向に発展してゆく。スウェーデン社会、延いては世界全体に巣食う暗黒の歴史が次第にあらわになり、それと呼応するかのように、自らの心の内と向き合うリンドマンの懊悩が彼自身を苛んでゆく。
正直なところ、純粋にエンターテインメント作品として見た場合、マンケルの作品には多少の粗がないでもない。謎解きの過程において論理的説得力に乏しい展開が時折見られるし、登場人物の心理描写にもやや平板なところがある。しかし、あくまでそのエンターテインメントの文脈において、現代社会の暗闇と個人の心の痛みを鮮明に描いてみせる彼の筆致には、やはり驚嘆せずにいられない。ヴァランダー・シリーズで多くの読者を虜にしたマンケルの持ち味は、本書にも存分に発揮されている。
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この作家の単発モノを読むのは初めてだったが、やっぱり面白い。陰惨な事件を縦糸に、舞台となる土地と人々を横糸にストーリーを紡いでいく熟練の技に、相変わらずの安心感と満足感。
今回は「死」というテーマが根底に横たわっているため、全体を通して重厚なイメージが強い。過去から逃げている男と現実逃避したい男──この対極にいる者同士がめぐり合った時から、物語はゆっくりと確実に動いていく。前半は、主人公が振り切ろうとしても振り切れない事件との奇妙な繋がりを中心に描かれており、後半は、関係者の心の闇と主人公の複雑な心理がクローズ・アップされている。
ヴァランダー・シリーズは脇役も魅力的だったが、本作品でも各キャラが実にいい味を出している。微妙に「ご都合主義」と感じるシーンはあるものの、ことのほか重い事件の背景の影に、うまく沈んだように思える。ミステリとしての謎解きは肩透かし。エピローグとプロローグもどこか的外れで効果的とは思えないが、全体のバランスの良さと完成度の高さはさすが。
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2008年翻訳発行。2000年に発表されるやヨーロッパ各国で好評だったという作品。
主人公はステファン・リンドマンというボロースの警察官。
37歳にして舌ガンを宣告され、動揺しているときに、かっての同僚で指導してくれた先輩だったヘルベルト・モリーンが惨殺されたと知ります。
病気休暇中のステファンは、恋人のエレナをおいて現地に飛び、しだいに捜査にのめり込むのです。
ヘリェダーレンの森深くに隠れるように住んでいたモリーンは何を恐れていたのか?
最初に1945年当時の出来事や、犯人の視点の描写も一部あるので、推理小説というより歴史もの犯罪小説?かと思いきや、意外な第二の事件が起こり…
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スウェーデンのマンケルの作品を初めて読んだ。この国が抱えている闇の部分に切り込み、ナチ協力者や台頭するネオナチとのつながりなどを交えながら、死の恐怖を抱える主人公の警察官が複雑に絡みあった事件の解決を進める。奥行きと深みのある小説。08年IN `OCKET文庫翻訳ミステリー第5位。
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重くしっとりとした物語。
会話の妙はなく、どちらかというと淡々と進んでいく。
この作者は地名がやたらと出てくるのが気にかかる。わからないし。
■このミス2009海外6位
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「目くらましの道」の次の翻訳は、クルト・ヴァランダー・シリーズではありませんでした。でも、ちゃんと「目くらましの道」との関連がありました。感想は下巻読了後に。
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ガンを宣告された主人公が、かつての同僚だった元警察官の死の謎に迫る。といったところでしょうか。
何だかんだと自分の病気に直視せず、よその事件に首を突っ込むのはどうかと(しかしこれをやらないと話がすすまない)。犯罪すれすれの事やったり、恋人に冷たくしたり、この主人公はいつも言い訳ばっかりであんまり好きになれないなあ。
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ヴァランダーのシリーズだとばかり思っていたので読み始めて少しガッカリ
でも読み始めるとやっぱり面白い スウェーデンのナチスについての話は興味深い やはりソ連が近かった国だからだろうか
途中、他の本を読んでいたのでこの上巻を読み終わるのに時間がかかってしまったが、すぐに下巻に入ろう どう決着が付くのか楽しみだ
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ヴランダーシリーズ、一応読み終えてしまったので。ヘニング・マンケルの淡々とした、骨太のそれでいて、ちょっと情けないヒーロー像にまた接したくて。
謎が深まり、登場人物に感情移入しながらのめり込み、あっという間に読了。
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クルト・ヴァランダー警部シリーズと同じ著者なので。
こんなにもつかみどころのない主人公が、かつていただろうか。
まがりなりにも警官であり、
時折、素晴らしい観察力と記憶力、そしてやけくそとも言える行動力で、
事件解決に導いているのは間違いないのだが。
やけくそというよりも、ガン宣告からの現実逃避か。
昔、指導されことはあるものの、
それほど親しくもない元警官の殺人事件に、
流されるように関わっていく。
事件解決への情熱や執念は感じられない。
(下巻へ続く)
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またもやナチ文学。登場するナチ信奉者の悪びれなさに呆気に取られた。これが現代ヨーロッパの現実なのか。
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北欧ミステリの傑作。とにかく出来が素晴らしい。
地名、人名とか日本人には馴染みない部分もあるけど、設定もお話の進め方も素晴らしくて、読みやすいし、謎の設定も無理がなくて、楽しめる。
事件自体は、かなり生臭いんだけど、読むのが嫌になるほどではない。
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スウェーデンの小説である。今まで北欧の小説というのは読んだことがなかったけれども、今回の小説は読みやすく面白い。上巻なので結末は下巻になるだろうが、こうゆういろいろな本を紹介してくれるネットのありがたさをつくづく感じる。
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スウェーデンの作家「ヘニング・マンケル」の長篇ミステリ作品『タンゴステップ(原題:Danslararens aterkomst)』を読みました。
『目くらましの道』、『背後の足音』に続き「ヘニング・マンケル」作品です… 読み始めると北欧ミステリは続いちゃいますね。
-----story-------------
〈上〉
男は54年間、眠れぬ夜を過ごしてきた。
森の一軒家、ダークスーツを着て、人形をパートナーにタンゴを踊る。
だが、ついに敵が男を捕らえた……。
「ステファン・リンドマン」37歳、警官。
舌ガンの宣告に動揺する彼が目にしたのは、新米のころ指導をうけた先輩が、無惨に殺害されという記事だった。
治療を前に休暇をとった彼は、単身事件の現場に向かう。
CWA賞受賞作『目くらましの道』に続く、スウェーデン推理小説の記念碑的作品。
〈下〉
殺された元警官の住んでいた場所を訪ねた「リンドマン」は、独自に捜査を開始する。
だが、調べを進める彼の前に、新たな死体が。
殺されたのは「モリーン」の隣人だった。
次々とあきらかになる、先輩警察官の知られざる顔、そして意外な過去。
自らの病に苦しみ、迫り来る死の恐怖と闘いながら、「リンドマン」は真実を追い求める。
「ヘニング・マンケル」が、スウェーデン社会の闇と、一人の人間としての警察官「リンドマン」の苦悩を鮮やかに描き出す。
訳者あとがき=「柳沢由実子」
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「ヘニング・マンケル」作品ですが、これまでに読んだ警察小説「クルト・ヴァランダー」シリーズではなく、初めてのノンシリーズモノ(「クルト・ヴァランダー」シリーズのスピンオフ作品、番外編と呼ばれているようです)です… でも、作品全体に感じられる暗く、陰鬱な雰囲気等は、「クルト・ヴァランダー」シリーズと共通していましたね。
■プロローグ ドイツ 一九四五年十二月
■第一部 ヘリェダーレン 一九九九年十月から十一月
■第二部 ブエノスアイレスから来た男 一九九九年十月から十一月
■第三部 石の下の虫ども 一九九九年十一月
■エピローグ インヴァネス 二〇〇〇年四月
■訳者あとがき 柳沢由実子
1999年10月19日早朝、ヘリェダーレン地方の森で隠遁生活を送っていた元警察官の「ヘルベルト・モリーン」が殺害された… ウステルスンド警察の「ジュセッペ・ラーソン」が現場を検証すると「モリーン」の家の床には被害者の血染めの足でタンゴのステップを踏んだ跡があった、、、
ボロース警察署で「モリーン」の同僚だった「ステファン・リンドマン」は医師から舌癌の宣告を受け病気休暇をとる直前に新聞で「モリーン」が殺害されたことを知った… 常に何かに怯えていた「モリーン」の姿を思い出した「リンドマン」は休暇を取得して事件現場へ向かい、「モリーン」の過去を調べたところ、「モリーン」は1950年代初めに軍隊を辞め、名前、住居を変え、結婚して2人の子供を儲けた後1957年に警察に事務員として勤め始め1960年代に警察官となっていたことが分かった。
その���離婚し警察を退職したあとでヘリエダーレンに転居してきたが、そこでは隠れるようにひっそりと生活しており、その住居も数少ない友人の「エルサ・ベリグレン」を介して購入していた… 管轄外の場所で一個人として「モリーン」の周辺事情を探っていた「リンドマン」は「モリーン」の隣人でヴァイオリン奏者の「アブラハム・アンダソン」が殺害されているのを発見した、、、
再び「モリーン」の家を訪れた「リンドマン」が「モリーン」の隠していた日記と手紙を見つけ出したところ、その中には若い頃の軍服姿の「モリーン」が写った写真が含まれていた… しかし、その軍服は「モリーン」の経歴に記されていたスウェーデン軍の物ではなくナチス・ドイツの親衛隊の制服であった。
二つの殺人事件は同一犯の仕業として捜査が続けられ、休暇中の「リンドマン」は管轄外での事件に否応なしに巻き込まれていき、歴史の巨大な闇を知ることになる… 次々と明らかにになる、「モリーン」の知られざる顔、そして意外な過去、、、
自らの病に苦しみ、迫り来る死の恐怖と闘いながら、「リンドマン」は真実を追い求める… 現代スウェーデン社会の闇と、一人の人間としての警察官「リンドマン」の苦悩を鮮やかに描き出された作品でした。
「モリーン」を殺した「アーロン・シルベシュタイン」の正体は最初に明かされているのですが、第二の殺人犯は終盤まで伏せられているので、「リンドマン」等が同一犯の仕業として捜査を続けることにやきもきしつつ、一緒にもう一人の殺人犯を推理していくことが愉しめる作品に仕上がっていましたね… 暗く陰鬱なスウェーデン北部を舞台にした息詰まるような緊張感とハードな展開、、、
第二次世界大戦でのスウェーデンとナチス・ドイツの関係や、現代社会におけるナチズムの台頭等、社会の暗部を抉り出す筆致は単なる警察小説には留まらない、社会小説として雰囲気を感じさせますね… 濃密で重厚な作品でした。
そうそう… 本作品には、「クルト・ヴァランダー」シリーズ第5作『目くらましの道』で、最初に被害者となった元法務大臣「グスタフ・ヴェッテルステッド」の兄「エミール・ヴェッテルステッド」がナチスを崇拝する肖像画家として登場しています。
以下、主な登場人物です。
「ステファン・リンドマン」
ボロース警察署の警察官
「ヘルベルト・モリーン」
定年退職した警察官、リンドマンの元同僚
「ヴェロニカ・モリーン」
情報通信のコンサルタント、ヘルベルトの娘
「エルサ・ベリグレン」
ヘルベルトの友人
「アブラハム・アンダソン」
モリーンの隣人
「ハンナ・ツンベリ」
モリーンの家の清掃人
「エレナ」
ステファンの恋人
「ハンス・マークルンド」
不動産業者
「ビュルン・ヴィーグレン」
エルサの隣人
「エミール・ヴェッテルステッド」
肖像画家
「マグヌス・ホルムストルム」
ヴェッテルステッドの護衛
「ハンス・ヤコービ」
老弁護士
「ジュセ���ペ・ラーソン」
ウステルスンド警察署の警察官
「ニッセ・ルンドストルム」
ウステルスンド警察署の警察官
「エリック・ヨアンソン」
スヴェーグの警察官
「オラウソン」
ボローズ警察署の捜査課長
「アーロン・シルヴェシュタイン」
ブエノスアイレスから来た男
「マリア・シルヴェシュタイン」
アーロンの妻
「フルナー」
ブエノスアイレスのドイツ人
「スタックフォード」
戦犯処理担当の英軍人