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紙の本

響きと怒り

2011/10/25 17:50

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る

戦後オーストリア最大の作家トーマス・ベルンハルトの最後の戯曲。
まごうかなき傑作。ヘルデンプラッツとは直訳すれば「英雄広場」で、オーストリアを支配下に置いたヒトラーがムッソリーニとともにパレードを行ったこの広場を一望できる建物に居を構えたシュースター教授が、そのときの群集の歓呼の叫びが幻聴となって苦しめられるという妻のためにオックスフォードへの移転を決意するが、その寸前に窓から飛び降りて自死してしまうという物語を背景に、第一幕では、教授ともっとも親しく随伴していたとされる老家政婦のツィッテル夫人が、オックスフォード行きを楽しみにしていた夫人の親戚筋でまだ新前の若い女中ヘルタに、故人のかならずしも楽しいことばかりではない思い出話とみずからの年老いた母親の介護にまつわる話などをとりとめなく語り続ける。
二幕では故人の葬儀帰りに、故人のすでに中年となった独身の娘二人と、故人の弟で田舎で隠棲生活を送るローベルト教授の会話がえんえんと続く。三幕では、故人の家で行われる葬儀の夜の会食でのこれまでの登場人物に故人の同僚夫妻、信奉者、さらに故人の妻と息子を加えて、互いにまったく噛み合ない会話が繰り広げられる。
ベルンハルトの技法的特徴と言える間接話法が、場面ごとに饒舌な人物を入れ換えて、自殺した老教授の絶望をめぐる長い長い複数の語りとして蘇り、しかもその妻にだけ聞こえるという群集の声の幻聴が、最後に語りの完全な拒絶とも取れるようなカタストロフを生み出す。
緊密できわめて幾何学的な美しい形式的均衡とひろがりを兼ね備えた作品が、グロテスクなまでに誇張された悲劇の不可能性を残酷に露呈させる現代性は、オーストリア初演時には大変なスキャンダルになったらしいのだが、たしかにここにある西欧文明全体に対する悪意は生半なものではない。やはりベルンハルトは二十世紀の大作家だ。

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