紙の本
「量子力学の解釈問題」についてはまったく解らず
2009/02/22 18:02
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
粒子が存在する確率を表す指標としての波動関数が、観測により収縮するというコペンハーゲン解釈の謎をはじめ、「量子力学の解釈問題」については、この本を読んでもまったく解らなかった。「多世界解釈」というオクスフォードの代替案についても同様である。波動関数の絡み合いと確率波の収縮という問題のかわりの解釈として「多世界解釈」が提案されているのであるが、なにも理解できなかった。偏光した光子の干渉実験等の最新の実験によれば、結果は「多世界解釈」を支持しているというのが、著者の言い分だが。
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すでに何冊か彼の本を紹介しているが、相変わらず面白い。
光子が波であり、粒であると言う話は物理学を触ったことがあるものなら、
すでに知っていると思うが、なぜそういった結論にたどり着くのか、
どういう解釈をもって、光が波であり粒であるかを考察する一冊。
タイトルからすれば随分と取っ付きにくいだろうが、
原題は『シュレーディンガーの兎』であると聞けば、
多少興味の度合いも変化してくるのではないだろうか。
多少物理学に関する知識が無ければ読破は難しいが、
多少でもあれば、あとはぼんやりなりとでも把握できる内容。
所々で挟んでくるジョークまがいの小話も頭の整理に有効。
数式は殆ど出てこないのだが、
腰をすえて読むつもりが無いならお勧めできない。
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古典力学の様な決定論的な規則に従うマルチバースというのが、著書のコリンブルースが考えているオックスフォード解釈の究極の形。
量子力学を解説した教科書やサイエンス本は沢山あるけれど、どれも「解釈問題」には踏み込まないよう、慎重に避けているように見える。とりあえず最も“計算しやすい”モデルで説明して、その意味については深く考えないようにしている、というか「そんなことを考えても仕方ない」という立場をとっているという印象を受けます。
しかし、著者はこの立場を真っ向から反対するという立場をとっている。結果を予測するということを超えて「自然を理解する」というのが科学という営みの本質ではないのか、だとすれば量子力学の解釈問題を避けて通るべきではない、と。
まず、これまでに提唱されてきた様々な「解釈」について評価していく。コペンハーゲン解釈、ガイド波モデル、意識による観測が引き起こす収束という解釈、そして多世界解釈。その上で、著者は多世界解釈をベースに拡張した理論こそが本命であるとして、それを「オックスフォード解釈」として打ち出す。
ちなみに、昔は多世界解釈というとキワモノのSF扱いだけど、現在では様々な理由から主流になっているモデル。本書に登場するエピソードですが、量子物理学の国際会議でどの解釈を支持するか非公式に投票したところ、90人の物理学者のうちコペンハーゲン解釈に投票したのは4人、ガイド波解釈2人、その他の未知のメカニズム4人、多世界解釈が30人だったそうです。ただし、態度保留が50人だったそうで、まだ合意がとれているとは言えない。
さて、解釈問題に踏み込んだ本は「現時点では多世界解釈が最も有望」くらいの結論を出したところで無難に終わることが多いのですが、本書は前半だけでここまで進みます。そして後半が凄い。
まず、多世界解釈でないと説明困難な実験が紹介されます。これは以前に『日経サイエンス』の記事で読んでびっくりしたことがありますが、ありがたいことに本書ではさらに詳しい解説が載っています。対象物に全く何の影響も与えないでそれを「観測」する、という魔法のような実験。対象物を「観測」した他の世界との干渉現象を利用するのだけど、考えれば考えるほど驚くべき実験です。
続いて多世界解釈を積極的に利用して動作する量子コンピュータの原理を説明し、さらに多世界解釈が引き起こす哲学的問題の数々について触れる。面白いのはその次で、多世界解釈を支持している科学者の間にも様々な意見の対立があるということが紹介されます。まだ多世界解釈は未完成だということがよく分かります。そして、多世界解釈に反対する二人の科学者(ペンローズとツァイリンガー)の主張を吟味する。
後半は本書ではじめて知った話が多く、読んでいて興奮させられました。知的好奇心をビリビリ刺激してくれる本。「無数のパラレルワールドが物理的に実在する」と多くの科学者が心から信じている、難しいことは分からなくてもそれだけでもわくわくしませんか?
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[ 内容 ]
「意識をもつ観測者」が状態を収縮させる力を認めるか、自分のコピーが無数に存在することを受け入れるか―。
長らく信じられてきた「コペンハーゲン解釈」に代わり、最近の実験は「多世界解釈」を明確に支持している。
本書は、解釈問題の歴史を丁寧に振り返ったうえで、並行世界を利用して“爆弾”を検知しているとしか思えない驚きの実験などを紹介しながら、なぜ「多世界解釈」が合理的なのかを論証していく。
[ 目次 ]
不思議な世界
従来の描像に固執すると
推論による収縮
拡大されたホラー物語
先人の証言
ヒルベルト空間に移動せよ
望まれる局所性
多世界への導入
多世界を利用する1―信じがたい観測
多世界を利用する2―量子コンピュータ
多世界解釈の推進者たち
多世界の恐怖
古典戦士―ロジャー・ペンローズ
新時代の戦士―アントン・ツァイリンガー
多世界解釈の証明と改良
[ POP ]
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☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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[ 関連図書 ]
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これは文系の私には難しすぎた。量子力学をある程度理解してる前提で書かれているので、前提がわからなくて置いてけぼりになったり、実験から結論が導き出される過程がよくわからなかったり。理解できればとっても面白そうなんだけど。ある程度量子力学がわかってる人で、最近の解釈問題の流れを概観したい人には良いのかも。ネタとして量子力学を楽しむために読むなら、もうちょっと知識と気合いが必要そうです。
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「状態の重ね合わせ」である「コペンハーゲン解釈」から「多世界の存在」を認める「オックスフォード解釈」への転換を迫る一冊。コペンハーゲン解釈では様々な不具合が生じることを示し、「多世界」を導入することで解決しようとするものである。確かに、状態の重ね合わせではシュレーディンガーの猫の例のように相反する状態が重なっている事になるのだが、実際には箱を空けるまでもなく猫の生死は決定しているはずである。多世界解釈によれば、猫が生きている世界と死んでいる世界に分岐し、我々の世界で認識できる世界の方の結果を観測することになる、というものである。すでに多世界を証明する実験が行われており結果も出ているのだが、やはり直感的に理解するのは難しい。観測できない世界が「確実に存在している」ことを認めることも難しいが、何より研究者によって多世界の解釈が異なっており統一された見解がないというのも大きい。現状では「多世界」という解釈が成り立ちうるということを理解するに留めておくのが良いだろう。
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多世界を思わせる実験について記載がある。
光の粒子を経路に分けて、複数経路の存在から多世界の存在を説明。確かに、粒子が絶対に分けれないというような前提を置くと多世界と捕らえることもできるし、その説明のほうがしっくり来る気もする。
ただし、そもそも前提に不明点が多すぎて、確実にいえるものではないのは確か(当然だが)。しかし、コペンハーゲン解釈を鵜呑みにするべきではないということはわかった。(昨今は、多世界解釈がそれなりに普及しているとのこと)
ただし、その解釈の違いで人生の選択は変わらない(結局、良くわからないからとうのもあるが・・・)。
多世界解釈の肝は、世界自体が雲のように確率として存在しているイメージ。素粒子の状態をマクロに展開しただけ。言葉尻どおりの多世界ではない。
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