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小川国夫さんの作品は高校国語教科書に「物と心」「海鵜」などが掲載されていました。
2008年4月に80歳で亡くなられました。
「週刊ブックレビュー」で、「虹よ消えるな」とて「止島」が取りあげられました。
マイミクさんで「虹よ消えるな」を読んでいるという方もあり、図書館でリクエストして読みました。
日本経済新聞に載った30編ほどの短いエッセイが収められています。
戦中戦後のことが背景となっています。
2007年に書かれたもの、つまり亡くなる直前に書かれたものがほとんどです。
小川さんは煙草を吸うようですが、「悪魔的な煙草は体には悪いそうだが目が冴える」と言います。
いまの煙草に対する攻撃に対して、自分にも三分の理があると言っています。
日中戦争の指揮官の留守宅に戦死した兵士の家族が石を投げつけ、指揮官の奥さんがそのために自殺したということが書かれていました。
戦前の日本でそんなことが本当にあったのだろうか、信じがたい内容でした。
小川さんは1954年頃、バイクで40日間のイタリア旅行をしています。
28歳頃です。
このころの小川さんは学業も就職もかえりみずに無謀な生き方に明け暮れていたといいます。
旧制高校時代には登校拒否になり、学校に行かずにスケッチブックを持って、さまよっていたそうです。
作家のこだわりについて書いてあります。
万年筆、椅子、靴、以上の三つだそうです。
万年筆は現代ならパソコンに置き換えられるでしょう。
椅子の大切さは私にもよく分かります。
長時間座っていられるかどうかは大切なことです。
散歩するのに靴も大切です。
歩きながら着想が浮かんだりすることを思えば、靴は大切です。
菊池寛は試験の類は籤(くじ)で結果を出すべきだと言っていたということですが、競争に伴う弊害は深刻だということです。
受験準備には意味があるけれども、結果にこだわるべきではないと小川さんは力説しています。
戦後の焼け跡の様子、南フランスへの憧れなど、しみじみとしたエッセイがたくさん収められています。
心が洗われるようなエッセイ集でした。
なお、短編小説も2編収められています。