紙の本
石文(いしふみ) と 白鳥
2009/03/29 21:39
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
『おくりびと』は、映画『おくりびと』のノベライズとして、百瀬しのぶさんが書き下ろした作品です。映画『おくりびと』は、本木雅弘さんが青木新門著『納棺夫日記』を読んで感銘を受けて、『納棺夫日記』とは全く別の作品として映画化されました。第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した後、インタビューを受けた本木雅弘さんの静かな語り口と、潤んだ瞳が印象的でした。なので、どうしても主人公・小林大悟が本木君になってしまいます。仕方のないことですが、そこが残念に思いました。
大悟はチェロ奏者の夢をあきらめ、東京と訣別して、妻・美香と冬がそこまで来ている晩秋の酒田に帰ります。すでに母は亡くなり、大悟が小学校に上がる前に家を出て行った父が経営していた喫茶店の家が残されていました。
『おくりびと』は納棺夫として大悟が一人前になっていく話ですが、故郷に帰り、チェロ奏者の夢をあきらめた大悟がチェロを弾く場面が心に残りました。一つは、満月の夜、大悟は喫茶店のレコードの棚の脇に子どものときに使っていた小さなチェロを見つけます。ケースを開けると、そこには父に渡された石が入っていました。大悟は満月の夜、父と母と家族だった頃のことを思い出しながら、初雪の粉雪が舞う中、チェロを引き続けます。
もう一つは、納棺夫の仕事をしていることが美香にわかってしまい、美香は実家に帰ってしまいます。美香のいない寂しいクリスマスの夜、大悟は社長の佐々木と事務員の上村百合子とクリスマスを祝い、雑然とした事務所でアヴェ・マリアを弾きます。
「大悟は無心でチェロを弾いた。佐々木は目を閉じて腕を組み、聴き入っている。同じように聴いていた百合子の頬を、すーっとひとすじの涙が流れていった。」(155頁)
百合子もまた、悲しみを背負っていました。
大悟のもとに美香が帰ってきます。夕焼けに染まる最上川の河原に二羽の白鳥が愛を確かめ合っています。大悟は「冬は必ず、春となる」とつぶやき、美香に石を差し出します。
初めてノベライズ作品を読みました。やはり、本は素晴らしいです。本は思うままに時空を操ることができるから。
紙の本
命について考える。
2009/11/17 21:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
おくりびと 百瀬しのぶ 小学館文庫
すばらしい出だしです。大笑いしました。舞台は山形県、主人公は大悟さん、納棺師業の会社社長が佐々木生栄さん、先輩職員が上村百合子さんです。オーケストラの「解散」という言葉にはホームレス中学生の田村君が思い浮かびました。この物語を読んでいるときに、ビッグバンドジャズのコンサートを聴きに行きました。大悟さんは、本来チェロリストです。物語の場面を想像しつつ、オーケストラが解散するということが身近に感じられました。
その頃、複数の本を同時進行で読書中のわたしの心は、「エバーグリーン」豊島ミホ著で東北地方にあり、この「おくりびと」で山形県にあり、「悼む人」天童荒太著で函館にありました。東北から北海道にかけての視界が開けていました。
大悟さんの奥さん美香さんは、なんていい人なのでしょう。白鳥(はくちょう)の仲の良さとか、親子で交わした石による手紙のやりとりが伏線になっていきます。読み始めのあたりで、結末はどうもっていくのだろうかと興味津々(しんしん)でした。
物語に登場する銭湯での葬式は若い頃に見かけたことがあります。銭湯通いだったわたしが、洗面器を小脇に抱えて、のれんをくぐると、脱衣所の奥に棺(ひつぎ)が据えてあり、葬式会場になっていました。
さて、この本のテーマは「命」です。大悟さんが6歳のときに失踪した父親を殴りたい気持ちは痛いほどわかります。父が病死したときに12歳だったわたしは、自宅に安置された父親の遺体に向かって、仁王(におう)立ちになりげんこつを握り締めながら、これからどうやって生活していくのだと強い怒りをぶつけていました。
奥さんである美香さんの大悟さんの職業に対する偏見とも言える反対意見の表明は解(げ)せません。結婚生活は、相手が好きとか嫌いとかいう前に、働いて食べていけなければ話になりません。あきらめることも必要です。この物語に流れている太い芯は間違っておらず、正当です。
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今の時代 人は病院で死ぬのが当たり前です。しかし 死といううものは 誰にも必ずあるものです。最期はみんなで送ってあげないと。。。。。。
そのためには そこで手伝ってくれる人が必要です 悲しい話しですが なんか勇気をもらえる話しです
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同名映画のノベライズ。
チェロ奏者の大悟は妻の美香とそれなりに幸せな暮らしをしていた。
しかし所属する楽団の突然の解散。
職を失った大悟はチェロを諦め、新潟にある実家に美香と移り住む。
そこで見つけた仕事は納棺師という仕事だった。
田舎の素朴な感じがいい。
でも言葉はみんな標準語だから、あまり地方性は出てない気がする。
途中までほほえましいシーンが多かったが、ラストで泣かせる展開。
流れはゆっくりとしているようだが、テンポよく最後まで進んだ。
予想外に泣けてびっくり。
映像で見るとかなりまとまっていると思う。
最後までうまくまとめている。
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「納棺師」という職業を初めて知った。
周りから反感の目を向けられ、妻からも理解を得られず、始めは後ろ向きだった大吾だが、それでもいつの間にか納棺師であることに大きな意味を見つけ、死者に新しい魂を注いでいく。
ノベライズであったものの、やっぱり最後は泣きました。
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映画は観てないけど、本だけ読んだ!
私はすっごく心を揺さぶられるってことはなかったけど、色々感じさせられた。
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誰もが一度は経験するであろう葬儀、それを執り行う「納棺師」をテーマにした作品。
話自体はとても短くさらりと読めるこの作品だが、書かれている内容はとても深い。
主人公はそれまで所属していたオーケストラが解散したのをきっかけに実家があった山形に帰る。
そしてそこで仕事を探している内にひょんな琴から納棺師として働くことになるのだが、彼が納棺師として生きていく中での葛藤や周囲の反応、見送られる人々やその家族の様子が非常に細かく描写されており、自身の「死」に対するイメージを考えさせられる。
特に納棺師という死体に接する仕事に対するイメージは納棺師として働く人々とそれ以外の人々では大きく違っている。
納棺師の仕事自体を受け入れない人々からの主人公に対する冷たい反応は、作品を読んでいる時には酷いと思うが、実際に身近に納棺師が居たら同じ様な反応をする人が大半ではないだろうかと考えてしまう。
口先だけでなく、心の底から「死」というものに敬意を持って接することを誓いたくなる作品だった。
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9月公開された同名映画のノベライズ版。
楽団でチェロを演奏する小林大吾。 突然の楽団解散に伴い郷里新潟に戻り就職活動。 広告記事の誤植のせいで掴んだ職業が「納棺師」。 死去した人を棺おけに納める仕事。 扱う死体は綺麗なものだけではなく、時には見るに耐えない腐敗死体や自殺死体をも扱うことになる主人公。 職業柄人から忌み嫌われる一方で、納棺師という職業を通じて人間の生と死を見つめて行く。
本書は人の勧めで読んでみた。 公開されるや話題に登り、モントリオール世界映画祭でもグランプリ受賞もした映画「おくりびと」は、見てみたいという興味に駆られていたので、薦められるがままに読んでみた。
約190ページの本書は読みやすく1時間ぐらいで読めてしまった。
世の中に無数の職業があるなかで、この納棺師という職業にスポットを当てている処に本小説の妙味がある。 人間ドラマの面白さに加え命の大切さを教えてくれる物語。
本書はあくまでノベライズ版なので、とってつけた感は否めない。 本書の元となった本があるらしいのでそちらを読んでみたい。
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時間つぶしに入った本屋さんでなんとなく目に入り買った本。
映画の宣伝でみたせいかもしれないけど本のイメージともっくんと広末がぴったりあってる!!
本の中の世界がとても静かで懐かしいようイメージで。
ラストのシーンはとても切なくて。
なんとなく購入したわりに良かったです。
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チェロ奏者の大悟はオーケストラの解散で失業し、
故郷の山形に帰る。そこで見つけたのは
「旅のお手伝い」をするという求人広告。
面接に訪れてみると、それは「安らかな旅立ちのお手伝い」をするの間違いで、
ご遺体を棺に納める納棺師の仕事だった。
予想外の厚遇に働くことを決意する大悟だったが、
初めて目にするご遺体の前で、最初は戸惑うばかり。
新しい仕事のことを詳しく話していなかった妻にも大反対され、
彼女は家を出てしまう。
新人の納棺師としてさまざまな人びとの別れに立ち会ううちに、
自らの生き方にも目覚めていく大悟だったが、やがて彼の身近でも……。
最後は、涙・涙の連続でした。
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自分が夢だと信じていたチェロ奏者はたぶん夢ではなく幻想だったと思った主人公は東京とは決別し故郷の山形へ引っ越し生活のため納棺師になる。同じ手を使う仕事だけどその二つの仕事に対して社会や家族から向けられる目は全然違う姿が描かれているのが印象的だった。
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映画見たいな。つい最近おばが亡くなったばかりだからオーバーラップした。身近にある「死」なのに、葬儀屋さんや火葬場などに勤めている人を忌み嫌う人もいる。。妻が夫の仕事に対して理解する、というか受け入れる場面もじーんときた。なかなか出来ない仕事だと思った。人が死んでしまうことを受け止めて、その人の旅立ちをお手伝いをする。この本を読むと、本当はそうやってみんなで送りたかったなと思う。おばの時はなんだか事務的で、なんでこんなことするんだろう?とか疑問に思ったりした・・・
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チェリストを首になり、田舎で見つけた仕事が納棺師だった。この職が妻(美香)にばれないよう細心の注意を払う大悟。これに気づいた美香は、この職を「汚らわしい」と揶揄し、家を出て行く。その後、大悟との子供を宿したことを知った美香は大悟のもとへ戻り、ひょんなことからこの仕事に大きな意味を見出す二人。そして・・・
というように、納棺師という仕事に対する大悟と美香の考えの移り変わりを見る中で、死との向き合い方やその仕事に携わる重みなど、非日常だが、誰しもが避けて通ることができないことについて考えさせられる内容です。
文章も読みやすく、あまり本を読まない方にもお勧めできると思います。
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映画「おくりびと」のノベライズ本。映画からの小説化した本なんだって。さっき知った〜。
映画自体は本木さんが青木新門著『納棺夫日記』からの影響が大きいそうで…。そちらも読まなきゃ。
こちらの本は軽〜く読めたけど
それ以上のものはなく、心情の動きの描き方が
いまひとつというか
「そんな風に実際はなるかな〜?」みたいな
部分が多くて…。
原作じゃないと知って安心。
早速原作本に取り組みたいところ。
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アカデミー賞をとったのがわかりました。
当たり前の儀式なんだけ
納棺師の仕事って
仕事に対して偏見ってあるんだなぁ〜と
読んで改めて思いました。
テーマは「命をつないでいくこと」や「家族愛」で
読みながら、なぜか穏やかな気持ちになり
一気に読み終えてしまい
最後は、泣きながら読みました。
映画を観たいと思っています。