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東京のその当時の様子を書いているような小説。ザクロの話、千駄ヶ谷のタイルの話が印象に残った。多少は知っている町の知らない時代の物語。
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なんとか時代って、いっぱいあって、
むかーしのなんとかの時代から時代へ、
それで今まで、やっぱ
人で繋がってるんだよなぁー
って、今さらのようにおもえた。
読んでて、辛くて、さみしくて、おかしくて
きれいに、スマートに繋がってないんだけど
いろんな人が何かしらやってきて
この時にも、なんらかしら
繋がっているのかも。
って想う。
こんなカンジの読み物って初めて。
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江戸時代から戦後まで、江戸の巣から始まり、品川、本郷、市ヶ谷、渋谷などのそれぞれの地名に絡んだお話が連なった連作短編集『茗荷谷の猫』を読了。9つの話で構成されているが、ぞれぞれが独立してあるのではなくけれど同じ話が続いて行く訳ではなく、著者がわずかながらの話をつなげる手がかりをうまく隠し味のように埋め込んであるので、読み手はそれらに少しばかり助けられながら描かれた市井の人々の思いを追いかけて行く事が出来る。描かれている人たちは江戸や東京と言った大都市の中でつつましく暮らす目立たない人たちで、けれど目立たない人たちにも暮らしがあり、人に話せない思いがあったりするという千差万別の人の生き様への著者の愛情が感じられる小説だ。
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東京の町々を舞台に、江戸末期から第二次大戦後までの時代を背景として、庶民を主人公にした連作短編集。連作とは言ってもそれぞれの短編のかかわりは薄い。でもかえってそれによって、私とも薄いつながりがあるであろう、過去に生きた人達の人生のことをなんとなく想うことができた。特に浅草六区の映画館を舞台にした一編が気になった。
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全部猫の話かなと思ったら全然違っていました。
9つの物語が収められていましたが、関連性があるようなないような…。
なんとも不思議な連作小説でした。
第1章染井の桜(巣鴨染井)で幕末の江戸の庶民の姿を描かれていました。第2章、第3章と続くうちに時も流れ、最後の9章で昭和の東京の姿を描いています。
タイトルの「茗荷谷の猫」は第3章。
かわいい猫の活躍を期待していたのですが…。
うっすらとした恐怖が残りました。
どの物語でも夢や人生の挫折を味わう
名もなき平凡な人々の姿が生き生きと描かれ、
昔も今も、人間とはこのようなものかとも考えさせられました。
第1章で登場する桜と茗荷谷の猫が中心となる縁で、
9つの物語が百年近い時をつながっているようです。
一度は切れたように見えても、またしばらくするとつながってくる。
時空を超えて再びつながる、そんな「つながり」を見つけた時、
たとえようもない切なさを感じました。
派手なアクションもなく、
推理小説のハラハラドキドキ感もありません。
主人公は地味な一般庶民ばかりなのに、
なぜか、この物語は、胸の奥にズシンと残ります。
人情モノにはやはり人の心に訴えかけるモノがあるのでしょうか。
作者の木内昇さんのストーリー仕立ても一役かっているようです。
小説の冒頭部分で、その本にのめりこめるかどうかわかるのですが、
この物語どの章をとっても、
最初の冒頭分でグッとのめりこみ、最後まで読み切ってしまいました。
これも猫の神通力か、桜の神木の力か…。
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短篇集。それぞれの作品が微妙に繋がっている。江戸の末期から戦後の昭和の時代までのお話。悲しかったり、寂しかったり、ほんの少し微笑ましかったりする。
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一話一話が閉じていない。ゆるーくうしろに繋がっていく。
え、これで終わり?と思っていると、ずーーーっと後になって回収される伏線だったりする。それも、ものすごーーーくさりげなく。
私は、第一話の結末が第六話に繋がったのが嬉しかった。
どうぞ途中で止めないで、最後まで読んでください。
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不気味な趣のある短編集。それぞれの話は中途半端に終わり、落ち着かない気分になる。読み進むうちに話と話が連結し、ああ、そういうことか思い当たることになるが、完全には腑に落ちない。妙に落ち着かない気分にさせられる小説である。
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以前から気になっていた作品。
第一話「染井の桜」は武士の身分を捨て植木職人として様々な新種を生み出す男と、武家の女としての生き方を頑なに守る妻との歪みが描かれていく。
てっきり二人の間に決定的な溝が…と思いきや意外な結末。しかしこういう天才肌の人間と生きるのは大変そうだ。
第二話「黒焼道話」は様々な生き物の黒焼に人生を掛ける男の孤独。端から見れば滑稽なような、ちょっと引いてしまうような、でも本人は真剣。
第三話の表題作は女性画家と絵を引き取り画商に売る仲介屋の男、そして物置に住み着いた猫の親子の話。
タイトルほど猫が何かをするわけではなく、むしろ仲介屋の男の謎めいた感じに興味を引かれ、さらに十年前に亡くなったという画家の夫の二重生活にも興味を持つ。
しかしここで?という幕切れ。
これは微妙な作品か?と思っていたら、第四話「仲之町の大入道」からこれが連作集であることに気付く。
東京に出て来て職人として働いている青年が、下宿の大家に頼まれ借金取りに行くのだが、その相手である大入道はかなりのくせ者。一年通っても返す気配なし。
第五話「隠れる」は誰にも干渉されない自由な生活を手にした筈の男が、彼の思惑と反対にどんどん周囲に取り込まれていく。
江戸時代~昭和にかけて、東京の様々な場所を舞台にゆるく繋がった物語が展開していく。
掴み所のない怖さと切なさと可笑しさが交錯していくこの物語をどう評すれば良いのかと悩んでいたら、第六話「庄助さん」に第四話の主人公が『見事に踏み外さなかった』とかつての大家に言われているのを読んでなるほど、と腑に落ちた。
つまりこれは『踏み外した』人々の物語だった。自らの意志であったり仕方なくであったり、その状況は様々だが何かしらを『踏み外した』話。
そんな中で度々踏み外しそうになる機会がありながら『見事に踏み外さなかった』彼は確かに見事。
先の尻切れトンボのような話も後の話でその後の顛末が語られたりするのでスッキリしたい私には満足。
しかし最終話に出てくる老人は?まさかあの人?
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【収録作品】一 染井の桜-巣鴨染井/二 黒焼道話-品川/三 茗荷谷の猫-茗荷谷町/四 仲之町の大入道-市谷仲之町/五 隠れる-本郷菊坂/六 庄助さん-浅草/七 ぽけっとの、深く-池袋/八 てのひら-池之端/九 スペインタイルの家-千駄ヶ谷
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ここ最近、何度も繰り返し読んでいる『直木賞受賞エッセイ集成』という本に、木内さんのエッセイが掲載されていて、それがすごくよかったので借りてみた。時代小説はもともと大の苦手で、今まで何度か挑戦したけれど、『蜩の記』くらいしか読み終えられたことがない。というか読み終えたけれどかなりきつかったし内容はひとつも覚えていない。そして正直を言うと、この『茗荷谷の猫』も最後まで読むことができなかった。二頁ごとに猛烈に瞼が・・・本当に情けない。でも、木内さんという方に対する興味を失ったわけではない。エッセイ、めちゃくちゃおもしろかったもの。実は学生時代、体育会系の部活でスポーツをしていたという過去にもとても惹かれる。だから読了できなかったことがとても悔しい。でもでも、中学の頃に村上春樹氏の作品を背伸びして読んだときは意味不明でのたうち回ったけれど、大人になってから改めて読んでみたら共感できるところが格段に増えていたりとか、昔大好きだった作家さんの作品から今は心がすっかり離れてしまったりとか、趣味趣向はいろいろ変わる。だから諦めずに、折を見てまた読んでみたいと思う。
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「考えるな。生きたもん勝ちだ」考えさせられます。たとえ、偶然であっても、理由がなくても、後悔しても、生き残ってしまっても。
明治初期(染井吉野)から、昭和三十年頃までの、江戸から東京へ移り行く断面を切り取った短編集。
時代が変わり、世の中も価値観も思い入れまでもが変わっていく。東京の街で、自分の「夢」に向かって、打ち込んで生きてゆく。一人ひとり、名も知れず。けど、どこかで何かが繋がってゆく。そして、それは今東京に住む私たちにも拡がる。
東京は、お金を稼いだり、自由を求めたり、逃げ込んだり、夢を描いたり、可能性に挑戦してみたり、悔やんだり、諦めたり、焼け野原になっても生き延びてみたり。田舎者と都会人との格差を見せつける街、貨幣経済の中心の街、東京人はそれをいち早く当たり前とし、お金以外の価値観を捨てる。それを便利と呼び、いつしかすべてを忘れてゆく。
『八 てのひら』が印象的でした。目頭が熱くなってしまいました。誰もが、こんな経験を繰り返しているんだ、って。それも東京。
最後に、千駄ヶ谷のスペインタイルの家。今はどうなっているのでしょうか。あれから、50年。きっと残っていないんでしょうねぇ。▼日本全国の染井吉野は、全てクローンだと聞く。本当に景色が造られたんですね。
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東京を舞台にした連作短編集。江戸時代の話かな…と思って読み始めたら、次の短編では明治時代になっており…なるほど少しずつ時がたっていることに気がつく。妖怪めいたものが出て怪しい話もあれば、戦後の闇市で生きる青年たちの闇だったり、地方から上京した母をもてなそうとして互いに上手くいかない母娘など。つい泣いてしまうような話もある。一つ一つテイストが違うので飽きずに読むことができたし、登場人物や場所に不思議なつながりもあって楽しめた。
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東京(江戸)の下町を舞台とした、摩訶不思議な味わいの9篇から成る。各物語は時代(江戸〜昭和)が異なるが、人物とか場所とか、…がオーバーラップする。短編集らしくない短編集。全ての物語が印象的。
『かたばみ』、『漂砂のうたう』が良かったので、著者の初期の作品を読みたく手に取りました。次はデビュー作、 『新選組幕末の青嵐』を読みます。