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文藝春秋発刊の本でこれだけ笑えるとは思いませんでした。
友人の結婚式のスピーチ&二次会の幹事を引き受けることになった「誰かを呼びつけた記憶のない」女性ヨシノは、結婚式に出席しているところを上司の父親の葬式に呼び出され。これだけでも十分波乱含みなのに、さらにこまごまと引っ掻き回されます。
肝心ところのうねり、盛り上がりがすこしばかり小さいところが惜しい。しかし人が結ぶ縁とは奇なるもの。ヨシノと一緒に「どいつもこいつも!」と毒づきたくなります。話の締め方も好みに合いました。併録の「冷たい十字路」も良い小品です。
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葬式>結婚披露宴>旅行
行きたい思いとはまったく別に、面識のない上司の身内の葬儀にかり出されてしまったヨシノ。元校長だという故人の人となりは相当ひどい。2人の愛人の争い、小学校1年の時に故人からぶさいくだと言われたという孫。「じゃあもっと人間は死んだとき悲しんでもらえるような生き方をしなければいけないんじゃないですか」というなつみ。
さんざんな1日を終えてホンダさんとラーメンを食べる最後がよい。
ほかに「冷たい十字路」。
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表題作と、「冷たい交差点」2編を収録。
婚礼の最中に葬礼に呼び出される主人公。慌ただしい時間の中、さまざまな人生模様が垣間見えて非常に面白かったです。笑った。
人名がおよそ片仮名なのも面白かった。
「冷たい交差点」は交差点での自転車同士の接触事故を多人数多視点からかいたもので、こっちも面白かったです。雰囲気がすき。
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津村記久子の紡ぐ文章に今のところ文句なしに惹かれている。何がいいとかどんな風にいいとか中々言い表すことはできないけれど、彼女の文章の中に見え隠れするある価値観のようなものに魅せられているのかも知れないと思う。一方で、この本に収められている二篇からは技巧と言い表してもよいような何か銀色の反射光に似た鋭さを感じたりもする。
パラレルに進行する物語。それが少しずつリンクし始めたかと思うと一気に収束されるような加速度を持つ。そのままではミステリーのような単純な解放に行き過ぎてしまう、と思う刹那、その収束点については文字に置き換えられないことで、バランスが保たれる。だが、語られなかった言葉たちは当然のこと読み手の中で結実して、心地よい非安定を生む。
そんな面倒くさい感情の起伏を起こすこと、それが津村記久子なのだと言えば言えると思うけれど、そして「婚礼、葬礼、その他」の津村記久子は間違いない無く、そんな気持ちを起こさせてくれる津村記久子なのであるけれど、自分にとって、津村記久子はもう少しひたすらであって欲しいとも思うのである。川上弘美が、真面目すぎるのかも知れない、と感じたというこの一篇にしても、その真面目さが怖いくらいの真面目さで非日常を生み出すくらいのひたすらさであってもよいと思うのだ。
だから、入り組んだ暗黙の意図の錯綜などで物語の行方を指し示して欲しくはない。むしろ自分が何を受け入れ、何を拒絶するのか、そのしきいを探るようなそんな小説を彼女にはもっと期待したいと思うのである。読みやすい小説は津村記久子には似合わない、と不遜にもそう思ってしまうのである。
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★…3.5くらい。やっぱり表紙のデザインがまず好きなんだなぁ。表題作はほんと次々にトラブルがドミノ倒しでそこもウケるし、その事態に毒づくヨシノの言葉にも笑えた。もう一つのお話の「冷たい十字路」も割と好き。‘急いでいる人は急がせる世界の奴隷である’という言葉が印象的。
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いろいろ賞とったりしてる方なので、期待して読み進めるも…。
むー、これはそんなに面白くないなー、と思ってしまった。
文章は丁寧に練り上げられているけど、それだけ。日常な些細なことをつづってるのは分かるんだけども、さらさらと軽くひっかかりがない。もうちょっと何かこう、何でもいいからフックが欲しい。
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OLのヨシノは人を呼ぶ側に立った記憶があまりない。
呼びつけられる事が増え、今年3度目の披露宴に出席することになったのは、同じ日に旅行を予約した当日。
友美と内田君だからスピーチと二次会の幹事まで引き受けることに。
当日、飲まず食わずで準備して会場入りしたら、スピーチ前に上司から連絡が入り、マジマ部長の父が亡くなったのでお通夜に駆けつけろと言われる。生と死と…ありそうなてんやわんやの中での思い。
同時収録の「冷たい十字路」は、二つの高校の通学生が自転車をとばす危険な道で、衝突事故が。
目撃したOLのイマザト、注意事項を配布する仕事にかり出される高校生、怪我人と一時付き合っていたミドリバシ、その教え子で現場を通学する小学生のひかる、その母イタカノ…さまざまな視点から語られる。
2008年7月発行。
作者は1978年生まれ。
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友人の結婚式、上司の葬式、旅行(一人旅)・・・・。
この中で優先順位をつけるとしたら、あなたならどうするか。
ヨシノは一人旅を計画し、旅行会社に申し込む。
そこに学生時代の友人でハイキングサークルの仲間の結婚式招待状が届く。
友人からは「結婚報告」を受けた際、二次会の幹事とスピーチも頼まれている。
慌ただしく準備をし、式を終えていざ、披露宴という段階になり、上司から電話がかかってくる。
「部長のお父さんが亡くなった。特別な事情がない限り出席しろ」と。
すぐさま着替え、葬儀場にかけつけるがすでに会社の人間は全員、顔を揃えている。
全員で出かけて通夜の準備を手伝う、いわば、家族主義的な会社なのである。
ヨシノは死んだ人間に毒づく。
「どうしてあと一日、遅く亡くなってくれなかったのか」
一方の結婚式場・・・。
ヨシノはピンチヒッターとしてコタニ君にスピーチを頼んだのであるが、彼がトイレへ行っている間に、泥酔している一学年上のホンダさんがステージに連れて行かれる。
ヨシノは葬儀場のトイレから携帯電話でホンダさんに指示を出すのだが・・・。
葬儀場では故人と遺族の人間模様が浮き彫りになっていく。
しかし、決して湿っぽくない。
故人の愛人同士の喧嘩。
「なんで葬式ってやんなきゃいけないんだ」と毒づく孫。
葬儀場の場面を軸にコタ二君、ホンダさんからのメールや画像で結婚式の様子が伝えられていく。
方やこれから人生の門出を迎えるカップル、方や葬儀場。
バタバタしているスピーディーな展開が飽きさせない。
結婚式も葬式も「日常いつでも起こり得る世界」でありながら出席者をハイテンションにさせてしまう「日常じゃない世界」の面白さが描けている。
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表題作と「冷たい十字路」の二編収録。
(内容)二十代後半のOL。せっかくの旅行をキャンセルして友人の二次会の幹事になる。しかし当日、家族的雰囲気な職場の上司の父親が亡くなり、通夜に参加することに。
おもしろかったわー。とことん主人公がついてないの。それが日常的範囲なところが上手いと思う。また登場人物もいろいろ喜劇的な人が多くて、主人公の突っ込みがいちいち面白い。
「冷たい〜」は高校生同士の自転車衝突事故をきっかけに、当事者以外の群像を描く。
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私的、津村作品3作目。
会社の休暇を利用して、旅行に行くための手続きを取って来た夜に、大学のサークルで比較的仲の良かった友達カップルの結婚式の招待状が届く。
しかも、披露宴の司会や、二次会の運営まで・・・・
旅行にも未練はあるけど、とりあえず友達の式を優先にして面倒な準備を頑張って当日を迎える。
その披露宴が始まる前。
職場から電話たが・・・・上司の父上が亡くなったとの事
通夜に行かなければならなくなり、披露宴を前にして、家に戻り、喪服に着替えて通夜の席へ。
故人は元校長先生というが、愛人が2人もいて・・・。
陰ではドロドロの様相を呈している。
主人公の嵐の1日を綴った本です。
でも、ありそうな1日を書いているから、そして津村さんらしい、馴染みやすい文章で書いているから、親しみやすい。
冷たい十字路。
事故を起こした高校生の同級生、近隣の小学校の教師、前に自転車にぶつかって中学受験に失敗してしまった母、そしてその娘。
色々な視線で1つの交通事故の感想が書かれている。
ちょっと頭が混乱しがちだったけど、面白かった。
高校生の自転車、危ないよね〜
我が家の近所でも数年前に死亡事故がありました。
念願の県立高校に合格して新学期を迎えたばかりの1年生。
本人の無念さは計り知れません。
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主人公の女の子は家族的会社勤めのOL。友達の婚礼に参列中に、会社の上司の身内の急死で葬式に緊急に参列するよう呼び出しを食う。婚礼よりも葬礼が比重重しで急遽そちらへ向かう。そのそれぞれに対するOLの心情・行動がつらつらと描かれている。彼女の心の内に同化する自分もいたりして地味おもろであった。もう1篇は、最後があまり読解出来なかった。読みが浅すぎたのであろうか?
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夜はまだもう少し長かった。それを埋めるのは、結婚式よりめでたくはなく、葬式よりも重要ではないことになりそうだったけれど、それでよかった。他者の事情がどれだけの時間を奪っても、それがはけた後自分が何をするのかは自由だ。
(P.80)
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「婚礼、葬礼、その他」と「冷たい十字路」の2編からなる。
「冷たい十字路」は初期の作品で少々こなれない感がありますが、「婚礼、葬礼、その他」は津村節炸裂で、さすが!面白い。
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表題である「婚礼、葬礼、その他」は文章のテンポの良さと、主人公の自分のことなのにどこか遠い事の様に思うその心情や、世間的に重要なことよりもまずは自分の空腹をどうにかしたいという欲求がうまく織り交ぜ書かれていて失礼なんだろうな、と思いながらも楽しかった。次の「白い十字路」はもうち「婚礼~」のテンポで読んでしまったが、もうちょっとゆっくり時間をかけて読んだ方が良かったのかも、と反省中。
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ヨシノは友達の結婚式のために今日予約した旅行をキャンセルした。
さらに電話で二次会の幹事まで任されてしまうが
呼ばれる人生を送るヨシノはしょうがないかと納得する。
しかしこれから披露宴という時に上司から電話があり
部長のお父さんの通夜に借り出された。
生前あまり評判がよくなかったと孫娘に聞かされた通り
愛人同士で喧嘩しているわ
行けなくなった二次会で幹事は痴話喧嘩しているわ
お腹が空いているわでまいってしまう。
装丁:野中深雪
お腹が空く話です。おいしいものがたくさん出ているからではなく。
ヨシノと一緒に思わずイライラしてしまった。
周りが自由すぎるというか自分勝手というか。
「冷たい十字架」もそうだけれど描写に生活感がある。