紙の本
「一瞬の風になれ」より面白い
2008/09/26 21:10
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐藤多佳子さんは陸上青春小説「一瞬の風になれ」で吉川英治文学新人賞や、本屋大賞を受賞した。全3巻を読んだ時、走るシーンの臨場感溢れる描写に魅せられ、特にリレーについては「なんだ、この自分が走っている感覚は?」と舌をまいたのだが、こういうことか、と納得した。
長期にわたる綿密な取材の成果というだけでなく、彼女の適性は小説よりむしろ、ノンフィクションにあるように思う。とりわけ人物の描き方にそれが顕著だ。「一瞬の風になれ」だけでなく「しゃべれどもしゃべれども」「サマータイム」どの作品を見ても、佐藤さんの描く人物は格好良すぎる。優柔不断で地味という仮面をかぶらせても、やはり格好良い。理想なのだろうなと思う。
計算し作り込まれた人物よりも、現実の人物のほうが味わい深く説得力がある。小説家としては悩ましい問題かもしれないが、生身の人間にどこまで切り込んでいけるか、その点で佐藤さんの筆が冴えている。
肝心の内容だが、これがとても面白い。
「第一部 世界陸上大阪大会」「第二部 スプリンター」の2部構成になっており、第一部では、38秒03のアジア新記録を出し5位となった世界陸上大阪大会での予選、本選の戦いを、第二部ではそれぞれのスプリンターの生き様を描いている。
第一部では特に、第一走者から第四走者まで、順にスタート前の内面に切り込んだ部分が興味深く、第二部では何といっても4継のリザーブメンバー小島茂之の章が読み応えがあった。
リレーって、面白い。ただ足の速い人を4人集めただけでは勝てないのだ。各人を走力と性格に適したポジションに置き、全員の調子を等しく上げていかねばならない。何より、超高速のバトンパスが3回。この成否がタイムおよび順位に大きな影響を与える。
バトンゾーンのどの位置でバトンを受け渡すのか、その為に次走者はいつスタートするのか。次走者のスタートが早すぎれば前走者が追いつけずバトンが渡らないこともありえる。反対にスタートが遅くバトンが詰まれば大きなタイムロスとなるし、最悪バトンを落とすかもしれない。
ちなみに、代表4継の主とも言える朝原宣治が常に4走をつとめるのは、彼が不器用でバトンパスが下手だからだと、冗談交じりに恩師が言う。「もらって走ることはできるけど、持って渡せない」タイプなのだと。
4継は、“信頼”の競技だ。(p48)
作者の想いが、この言葉に凝縮されている。充実の一冊だが、ものすごく惜しいのは、北京五輪での劇的な銅メダル獲得を織り込むことが出来なかったこと。
出版社もまさかオリンピックでメダルが獲れるとは思わなかったのだろう。大会前に出版してオリンピックブームにのって売り上げ倍増、さらに本書を読んで4×100メートルリレーに興味と期待を抱いて、盛り上がってオリンピック観戦! という思惑があったに違いない。正しい戦略だと思う。いや、だったと言うべきか。
結果を知ってしまった今となっては、後一歩、食い足りないと思ってしまう。読者は贅沢なものだ。
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9.29読了。日本代表4×100についてのドキュメントのようなもの。北京オリンピックを終えタイムリーに読めた。まぁまぁかな。3.5.
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リレーメンバーの大阪世界大会のドキュメント。淡々としすぎの感じはあるが、ベストメンバーなことがよくわかった
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2007年大阪世界陸上から北京へ向かうまで。陸上の“4継”の四人と補欠の小島選手を追った。選手はプレッシャーあるだろうに、結構淡々としているんだな。
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ノンフィクションに慣れていない感じはややあるものの、読みやすかった。続きとして北京オリンピックのことを書いてほしい!!
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「一瞬の風になれ」の佐藤多佳子さんの4継ドキュメントということで読んでみました。
ああー、北京の前に読んでたら絶対オリンピックチェックしていたな。
自分は北京前に図書館への予約を入れてたのでそんなに待ちなく借りられましたが、北京後はメダル効果か予約数が一気に増えてました(笑)
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「一瞬の風になれ」で、高校生スプリンターの小説を書いた佐藤氏による、日本陸上4×100mのリレーメンバーを取材しその様子をまとめた本。前半は、アジア&日本新記録を出した大阪世界陸上の様子をレポートしています。リレーを走る前の様子や、レースの緊張感、メンバーの人間関係がよく分かります。後半は大阪世界陸上後に、北京オリンピックを目指すメンバーの様子が綴られています。リレーメンバーの人柄や練習への姿勢、陸上競技への思いが伝わってきます。北京オリンピックのリレーでの活躍に感動した人には、その活躍の背景が分かるのでオススメです。(2008.8.31)
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ずいぶん前に読み終わりました。ちょうど、「引退レースが明日!」なんていうニュースが出ていたころです。
このリレーチームはとてもしびれます。ちょうど本の中で書いていたころのレースも、近くに居てタイムリー。
日本の短距離界は確かに高野選手が出てくるまで大変だったとオリンピックのレポートを聞いた気がします。
いろんなことが思い出される一冊で、佐藤多佳子さんの前作から持っていたイメージもだいぶん変わってきました。
いい意味でドキュメンタリーで、その割りに筆者のパーソナリティーなのかさわやかで。良かったです。
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オリンピックで感動をくれた、男子リレーのドキュメントということで読書。
・あらすじ
『一瞬の風になれ』の佐藤多佳子が描く日本男子リレー。
大阪世界陸上から、北京オリンピック直前までを描いた作品。
いや〜、すごい!! 前半はずーっとウルウルしっ放しでした;
若手の塚原、高平。ベテランの末次。そしてそんな彼らが尊敬して止まない、長年日本の頂点に立ち続ける男・朝原宣治。
とにかく朝原選手の愚直とも言える陸上に対する姿勢には本当に涙が出ました。彼らの陸上人生、陸上に取り組む姿勢、そして厳しい競技生活とは別にある、普通の生活。これを読んでから、北京の銅メダルの走りを見てみてください。涙が枯れます;;
残念ながら北京の手前までしか描かれてませんが、北京の走りを見れば、彼らの信じた道が正しかったのだと確信できます。
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『一瞬の風になれ』で本屋大賞を取った佐藤多佳子が、
北京五輪400mリレーでメダルを取った4人に取材したノンフィクション。
ただしこれは、その1年前の大阪世界陸上から北京五輪前までのものなので、五輪時のマル秘エピソード的なネタは一切ありません。
世界陸上を見て、この本を読んで、あのレースを見たら号泣したでしょうねー。
文庫版で出すときは、北京五輪ネタの加筆をお願いします。まあよかよか。
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日本代表リレーチーム、メダルへの熱き挑戦!
『一瞬の風になれ』で本屋大賞を受賞した著者が、
2007年の世界陸上から日本陸上選手権大会までを日本代表チームに取材し、
世界に挑む日本のトップアスリートたちの熱き闘いを描いたノンフィクション。
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〈内容〉走れ!!陸上日本代表男子リレーチーム。『一瞬の風になれ』の佐藤多佳子初の書き下ろしノンフィクション。
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陸上、特に4継の魅力のとりこになっている著者による、日本のトップアスリートのルポ。
この本の奥付が2008年7月、ということはそのほんのすぐ後、この4継メンバーはメダルを獲得したことになりますね。
正直なところ、北京のとき、真っ先に「一瞬の風になれ」を想い出しました。多くの小学生、中高生のスプリンターが、あれをみて自分もあそこで走りたいと思ったんじゃないでしょうか。
陸上っていいよなあ。もっとテレビでやるといいのにな。
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リアル「一瞬の風になれ」
リーダー朝原・末續をはじめとしたチームの4継リレーについて佐藤多佳子の視点からみたドキュメント小説。本編とは違い、現実のリレーチームを追ったものであり小説のようにうまくは行かない。
本文中では北京前でいったん完結しており、これが北京の銅メダル獲得までやっていれば大傑作になっていたかもしれない・・・
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世界陸上大阪大会、北京五輪を戦った日本陸上男子リレーの「つなぐ力」を描いた、スポーツ・ノンフィクションです。四継と呼ばれる(100m×4)リレーの大阪大会を中心に、代表選手の一人一人の姿とそれぞれの信頼関係がとても身近に感じました。
強く感じるのは、選手の練習(そして本番)における集中のすごさ。走った後に一緒に練習しているメンバーの誰よりもバテるのは、それだけその1本に深く集中しているから。レストのあと、また誰よりも早く走るというのだからすごい。
そして、陸上競技はとてもメンタルなスポーツだということ。練習方法にしてもそれぞれにいろいろな方法を試し、組み合わせ、自分に合ったものを取り入れていっている。自分のベストを試合に持っていけるように、頭をすごく使って計算をしている・・・という、本当に想像ができない世界だなぁと感じました。
自分の知らない世界だからこそ面白い。一流のパフォーマンスに見せられる・・・スポーツ・ノンフィクションは本当に面白いです。
著者の文章が陸上と選手への愛情が溢れていて、温かく、読みやすいですよ。