紙の本
女の意地とプライドがつまったサスペンス。好きです。
2012/01/12 13:56
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビ朝日系で2夜連続で本作品のドラマが放映された。視聴率のほどはいかほどだったのだろうか。ご覧になった方も多いのではないだろうか。そしてわたしも、見ました。感想は…はっきり言って、原作の本の方が何倍も何倍も楽しめます。
ドラマは見どころを作るためか、妙にキャストを派手にしたり、原作では男性のキャラクターを女性にしたり、刑事をコミカルにしたり、と、なんだかんだとごちゃごちゃしすぎていて、「おぉっ」と思わずうなってしまうような、「ここぞ」という点がなかった。大方の筋は決して原作からかけ離れてはいないのだけれど、このお粗末な結果はなんなんだろう、と正直、がっかりしたというのが本音。
それにしても最近、ベストセラーや漫画をドラマ化・映画化するっていうのがとてつもなく多い気がする。その傾向を悪いとは言わないけれど、どうせ作るならば、思わず原作を読みたくなるような、もしくは、原作を知っている視聴者がうなるくらいの作品を仕上げてもらいたいものだと思う。
さてさて、作品の話に戻って…主人公の恭子はお金持ち。贅沢なお屋敷に住んで、家事は一切合切、お手伝いさんにお任せで、習い事に忙しい日々。夫の隆之は、恭子の叔父が専務を務めていた会社の部長。結婚して十数年。子どもは出来ないが、それなりに楽しい日々を送っていた。
ある日、恭子の元へかかってきた一本の電話。相手は隆之の不倫相手だという。しかも彼女は妊娠5か月。恭子の女のプライドに火が点いた。恭子は彼女のアパートに忍び込み、彼女を毒殺することに成功する。
と、物語はいきなり主人公の殺人が成功するところから始まる。その毒殺事件を追うのがベテラン刑事・戸田。戸田は恭子が犯人だと確信するも、物証を挙げることができない。恭子は自尊心の高い、ものすごく頭の切れる女なのだ。追う戸田と追われる恭子。物語はこの二人を軸に進んでいく。
しかしこの作品は、その追いかけっこだけが見どころではない。罠。復讐。いくつもの核が絡み合っていて、そのどれもが作品に奥行を与えているのだが、これはネタばれになるので、ここでは書かないでおく。読んだ人だけのお楽しみ。ただ、この作品の真相を見抜くヒントをひとつだけ、「恭子はプライドが高い女」です。このことを頭に置いて読むと、意外とすんなりと真相に辿りつけるかもしれません。
最後に作者の天野節子について少しだけ。彼女は1946年生まれの62歳。幼稚園の教諭をしていたという経歴の持ち主だ。どういう経緯で小説を書くことにしたのかはよくわからないが、なんと本作品が処女作という。正直、驚いた。どうして初めてにしてこんな入り組んでいて隙のない、それでいて無駄のない作品が書けるのか。ただただ驚くだけです。
紙の本
デビュー作とは思えないプロの手腕だが、人間像としてはもうひとつか
2011/06/16 13:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
その後も活躍を続けている作者のこれがデビュー作。そのせいか、練達の達人のような余裕とか風格とかは感じないが、才能ある新人の力作という感じは強い。なんでもデビュー時に60歳とか。歳を取ればよくなるという単純なものではあるまいが、頭のいい作者で、プロではなかったとしても、書くことに関して磨きもかけてきたということなのだろう。いかにも緻密で細かい。
内容的には本格もので、そのディテールの積み上げが魅力がある。だから堅実な作りで、あっと驚くような工夫はないのだが、いわゆる倒叙ものとwho-dun-it(犯人探し)を合体させて見せるなどはなかなかの離れ業といってもいいかもしれない。
だが、本格ミステリーにありがちなように、犯罪を丁寧に作り上げるのが主眼で、人間の描き方に魅力はあまり感じなかった。刑事は地味で好ましいがそれだけだ。犯人は悪女タイプの魅力を出そうとしたものかもしれないが、個人的には引いてしまった。好悪の問題を別にしても、あまり人間の問題としては深みを感じない。それはここで絡む二人の恋人についても同じ。
しかし、繰り返せば才能は十分に感じられる力作なので、楽しめるのはたしかだろう。デビュー作には、ちょっと評判になっても素人臭い作品も少なくないと思うが、これはプロの仕事である。最終的には倒叙ものだから、刑事と犯人の対決のがっぷり組んだ感じもいい。
最近作の『烙印』は、あっと驚く結末と共に、感動の終わりがあるらしい。ここで物足りないと思われたものを乗り越えたものではないかという期待がある。
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面白くて、一気に読んでしまいました。よくある筋なのですが、構成が素晴らしい 是非、一読をおすすめします。
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あらすじを見ただけでワクワクする小説です。
分厚いながら、妻視点と刑事視点、両方から綴られるストーリーに夢中になりました。
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展開のスピードがいい。 伏線の細やかさも感心。
悪女というよりは、確かに育てられた感あるね。
ドラマ化が念頭にあって読んでいたのだけど、米倉さんは
ぴったりですね。
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自分の秘密を知っており、さらに夫と浮気を言われ脅迫された主人公がその脅迫主を殺そうと企む。頭のいい主人公と自分の勘を信じて捜査する警察官。すごく読みやすくて新たにわかる事実に吸い寄せられてどんどんページが進んだ作品でした。
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http://coco6calcio.blog96.fc2.com/blog-entry-130.html
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予想以上に面白かった!!恭子のキャラクターがいい。特別奇抜なキャラクターじゃないのに、彼女の人間性は嫌いになれず、どこか惹かれてしまうものがある。「どんな状況下でも臆することのない強靱な精神力と、冷徹なまでの鋭い洞察力」を持ち、そして「何よりもプライドを重んずる」彼女。解説では悪女と表現されているけれど、うちは全然そう思わなかった。彼女が最後まで守ったものを考えると、可愛らしさを感じる。それに比べて他のキャラクターはちょっと弱かった印象。というよりも、他のキャラクターには生活感が感じられず、生きてなかった。あと、いろいろと気になるところも多々。刑事が目撃証言してくれた人の名前や住所を容疑者に喋っていいの!?いいのかそれ!それに、再ダイヤル、ヘヤダイなどという表現に目が点。うちは再と書いてリと詠むのかと勘繰り、ヘヤダイは辞書で調べてしまった。いったい昭和何年に書かれた作品やねんって思って調べると・・どうやら2006年に世に出たそうで。つい最近やん!なんで!?しかし疑問は解決。作者が60歳のときに初めて書いた作品で、しかも最初は自費出版らしい。あ〜納得・・やっぱり凄い作品です。
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事件の発端となる犯人は始めから分かっているのだけれど、その犯人を犯行に向けさせた背景が、徐々に分かってくる面白さ。
人間の考える裏の賢さ(?)みたいなものを感じた1冊でした。
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刑事の勘は、こんなに当たるものなのかしら。推理がうまくいきすぎている感じがした。
それと、殺人を犯した人が、こんなに冷静に刑事の尋問に対応できるものなのかな。
現実とのギャップみたいなものを感じずにはいられない。
1つよかったのは、事件の真相は結局表にでてこなかったこと。
人間の深層心理は、そう簡単にわかるものではない。
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ミステリーとしてのプロットはいい。しかし、携帯電話とUSBメモリは登場するが、一切Eメールやネットが出てこない。カメラはデジカメではなく使い捨てカメラ。登場人物のキャラを丁寧に書くために部屋の調度品や洋服のディテールが書かれているが、著者の年齢が高いためか、30代半ばのはずの登場人物が50-60代の人物に見えてくる。あるいは、昭和50年代を舞台にしているかのような錯覚に陥る。
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気分が乗らない時には、まったくもってページが進まないのですが、久しぶりにとてもはまって
一気に読んでしまいました。けっこう本は厚いのですが、プロットの進行がとても早く、
展開していくのにさらに謎が謎を呼び、、、と先が最後の最後まで分からず気になってしまって、
読み進んでしまいました。
どんでん返しものは好きですが、これほどまでに用意されると感心します。
しかもこれが天野さん、60歳にしての処女作となると、さらに感心です。
途中、松本清張の「砂の器」が出てきたりするので、ミステリー小説が大好きな方なのでしょうか。
心理描写もとても鮮明で、読んでいて感情移入してしまいました。
さて、先日「クロイドン発12時30分」という小説を読みました。
犯人を推理するのではなく、犯人の目線で事件を追う倒叙推理の三大傑作のひとつと言われている
作品です。傑作に数えられているだけあっておもしろいのですが、古典であり
結末が最後まで分からない、というわけではなく、追い詰められていく犯人を犯人の緊迫した
心理描写で読み進めていく内容であったため、私にはハラハラ感が少し物足りなく
思えました。
が、「氷の華」は、現代版・倒叙推理作品と言えるではないでしょうか。
犯人=主人公(だけではなく刑事の目線も入りますが)の目線でストーリーを追いながら、
犯人を取り巻く状況を把握できていないことのおもしろさ。そして、犯人の目線で見ながらも、
すべてをその都度見せないので、読み手にちゃんとサプライズを与えてくれる心憎さ。
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すごいよ恭子さん。
プライドの高い女性ってこういうことを言うのか、と認識。
なんか高潔って感じだった。
すっごい頭の中に映像が出てくるなぁと思ったら、
やっぱりTV化されてたのね。(読んでからタイトルで気づいた)
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プライドの高い資産家の女性・恭子はある日
夫の愛人の存在を知り、殺害を企てます。
計画は上手く行ったかに思えたのですが
どうやら罠にはめられたらしいと分かります。
恭子の目線でのストーリーに、事件を追う刑事
戸田の目線でも同時に展開して行き
どうなっていくのか、気になって結構入り込んで読めました。
ミステリとして、張ってあった伏線も生きているし
恭子の人物像が、とてもよかったと思います。
ドラマは観ませんでしたが、米倉涼子さん主演だったのかな?
とてもはまり役だっただろうなぁ…。
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ドラマを観て、原作が気になっていた作品。二夜連続ドラマで時間たっぷりだったせいか、割と内容に差異がなかったような。面白かった。
ドラマ化にあたり設定を変えている部分があったけど、その変えた部分により原作よりエグみが増していたというか…。恭子さん、たまらなかっただろうな。