紙の本
氷河を融かすのは
2009/08/28 23:07
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
グローバル化とはどういうことか?
世界のどんな所からでも、簡単に手早く望むもの/必要なものが手に入ることだ。
実にすばらしい!
ところが、この「望むもの」「必要なもの」には、労働力も入っていた。
生産拠点・製造拠点を特定の海外に移せば、もちろんコストが安くなる。なら、国内でコストを安くするにはどうすれば良いのか?
かくして労働力のダンピングが始まった。
このしわ寄せをもろに受けたのが、派遣社員、そして本書に登場する就職氷河期時代の若者である。勤務時間は際限なく長くなり、給料はなかなか上がらない。挫けそうになった時に、「やりがいがあれば続けていける」と思い直してはみても、日々の労働に、その決心も挫けそうになる。
バブルや右肩上がりの頃に働いた人の論理は、全く通用しない。
「親と時代は選べない」というが、単純に、「生まれた時代が悪かった」とまとめるだけで良いのか?対岸の火事としてただ眺めるだけで良いのか?今さかんに言われている「責任力」は、この数年、どうして彼等の人生を支える力と成り得なかったのか?
激しい憤りに駆られる書であった。
やがて自分達が歳を取った時、働き盛りとしてこの国を、社会を支える若者達が、心も体も病んでしまってよいものか。我々は、この現実を変えてゆかなければならない。
投稿元:
レビューを見る
(2008/8/24読了)「正社員になりたい」に比べると、貧困という意味において切迫感のない実例も多々ありましたが…どちらかというと、正社員の実例なだけに、古典的な労働問題の提起に近いかと。ファミレスや大手量販店の店長は本気で悲惨だと思います。
投稿元:
レビューを見る
図書館で借りた。
1970〜1980年に生まれた就職氷河期世代が
働いている姿を取材している。
取材がSE、介護職、営業、銀行など多岐に渡っていて
各業界の働き方を部分なりとも知ることが出来る。
男女共に取り上げられていて、興味を持って読み続けられる。
国外での日本企業の人の使い方、富山県での14歳の挑戦を
知ることができてためになった。
ジョブカフェの運営にかかる見積もり金額にも触れられていて驚いた。
『今日、ホームレスになった』と並べて置きたい。
転職がどう転ぶか分からない、という教訓のため。
投稿元:
レビューを見る
きついノルマ、長時間・過密労働、やりがいがあっても低賃金…。長期不況と労働環境の激変のもと、“正社員”とは名ばかりの厳しい働き方を強いられる、20〜30代の就職氷河期世代を中心に、若者たちが生きる現実を描く。(TRC MARCより)
投稿元:
レビューを見る
No.26
p.158 【「14歳の挑戦」〜「社会に学ぶ『14歳の挑戦』」と題して中学2年生(13・14歳)を対象に富山県内で行われている職場体験学習】
http://www.pref.toyama.jp/cms_cat/105040/kj00001004.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/14%E6%AD%B3%E3%81%AE%E6%8C%91%E6%88%A6
★「困ったときに困ったと言える、『自分はこれは出来ないから助けてくれ』と言える事が大事。
変なプライドから沈み込み、問題を一人で抱え、人と連携できずにいると、周囲にも迷惑をかけることになって、やがて社会に適応
できなくなる事もある。
困ったときにどうすればいいのかを『14歳〜』では学ぶ事ができ、総合力がつくことで『生きる力』が養われる。
・大人は仕事を通して生きる事を考える存在だという事が分かってくる。」(中坪正美 教頭:談)
p.195 【「HIKS」(Half Income with Kids)】〜妻や夫が失職して収入が半減した子持ちの夫婦。
(かつての 夫:「年功序列による昇給」+妻:「専業主婦で子育て」というスタイルが崩れ、「共働き」ではない
「片働き」(HIKS)では家計が成り立たない)
p.205 【「平成の大合併」などの自治体合併により自治体の面積が増大して自治体職員の「長距離通勤」(片道2時間など)が発生、
免許と自家用車を持たないと退職に繋がるケースも】
投稿元:
レビューを見る
「正社員になりたい」
の著書の次の作品。
前作はよく知らない出版社だったのが、
これは岩波からの出版。
それだけ、実力が認められたってことだろう。
こちらは、就職氷河期に運よく正社員になれたのはいいものの、
仕事中心の過酷な生活をを強いられている若者たちを追ったルポ。
かつて私は、
自分「働きすぎ」だったと思ってたけど、
これを読んで、私なんて
まだまだ序の口だったんだ!と実感。
やっぱりなんか、
今の社会構造って何か変だと
またまた思った。
投稿元:
レビューを見る
陰鬱となる…のはまだ自分がラッキーだったから、なのかな…。いや実際、同じ世代として自分はラッキーだったと思う。たまたまこういう状況でなかった、という。
いまここにある、こういう状況に対して、自分は一体どうしたらいいんだろう。なにができるんだろう。なんとかできるんだろう。ね。。
投稿元:
レビューを見る
実のところ 仕事の時間だけが問題なんじゃなくて 接待とか 送別会とか そういうのの 拘束時間が つらいなぁ と思うんだ。
投稿元:
レビューを見る
生活が苦しい。残業代が出ない。そんな悲鳴が聞こえる本書。
本当に笑えない、生々しい若者たちの実態について書かれた本。
ひどい環境の一例として、
SEやコンビニ店長、介護業界、タクシー運転手、看護師、歯医者さん等が挙げられている。
SEでも、人月を切り売りする方の派遣型についての話で、とても過酷な環境であると書かれている。キツイ、帰れない、給料が安いの3K業界という。
そんなこと無いと思うのだが、コーダーとテスター業務はそんな扱いかもしれない。
何十時間も、百時間超えの月残業時間を取るぐらいなら、もっとマシな業界や会社に転職したほうがいい。まともな会社や職種はたくさんある。でも若者は情報量が少なく、また転職活動に踏み切る余力がないというような形でドツボにはまってしまうという。
健康は資本。健康をそこなっちゃ、だめだよなぁ。
投稿元:
レビューを見る
就職氷河期に正社員になったという「恵まれた」はずの人たちの残酷な労働実態。派遣会社の正社員、激安大手家電量販店、就職支援会社、アパレル、広告制作会社、そしてソフトハウスのSE、大手銀行、証券会社とこれだけの業界・職種の過激な長時間労働の現実を見せられると暗い気持ちになってしまいました。現実に、私の大学でも学生たちが就職していく先は恐らくこの通りだろうと思うからです。本当に豊かな時代になったといえるのか、勝ち組ともいうべき、正社員になった人たちがこれであれば、フリーター、ニートの人たちはどうなるのか、日本の将来が非常に不安です。
投稿元:
レビューを見る
就職氷河期の頃の様々なタイプの学生と新社会人の就職後10年をルポ。社会の果たす役割の大きさと理不尽さを感じる。個々の人間はなんと頼りなく小さいものか