紙の本
ちょっととほほ感のある。精神科エッセイ。
2010/03/26 03:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
精神科医の春日武彦さんが、書いた、(元は、雑誌に連載されていたみたい)
精神の病に関する、エッセイ(リポート)!?です。
章末には吉野朔美さんの内容に即したマンガが載っていて、巻末で二人で対談もされています。
どうしてそんなことをやってしまうのか、本当は笑っては、いけないのだけれど、ちょっとおかしくて笑ってしまうエピソード満載です。
プロの精神科医であるはずの著者もどこか困ってしまっている感じで、
本当は、少し薄ら怖い気持ちもあるんだけれど、
春日さんが、たくさん内容(精神病理)関係する小説(深沢七郎の作品が多い)(概して短編)
を紹介していてエッセイとしては、大変面白いです。
面白いというか、逆に怖いとも思ったのですが、
実は、精神病の病的な行動って、実は、突詰めるとちゃんと理由があり
すべて論理的な行動なのだそうです。
(人間の行動には、無意味、意味問わずすべて理由がある)
それを、どの辺でやめているかで、まともか病的か、分かれるのだそうです。
早い話、まともな人でも企画の締め切りが迫っているのみ、のんびりしているとか、
駐車禁止でも、短時間なら止めちゃうとか、
実は、問題だらけで生活している、それを殆ど解決させずに適当に誤魔化して
日常を送っているわけなのです。病的な人は、突詰めてやってしまう。
合理的、整合性という意味では、病的な人の方が、"まとも"なのだそうです。
で、突詰めて、おかしな方向に行ってしまう人のことを
精神のけもの道に入ったと著者は、書いています。
問題は、解決させないことが、解決法なのかもしれない、、。
うーん本当に人っていや、人の心って不思議。
投稿元:
レビューを見る
図書館。
吉野朔実さんの漫画がついてると、読みたい。(笑)
「おかしな人たち」の話。 けど、その曖昧な境界には誰でも
二度や三度、(いやもっとか)行ったり来たりしているわけで。
面白いけど、ちょっと笑えないおかしさの本。
投稿元:
レビューを見る
「けもの道」とはよく言ったもんだ、と感心。みんなが歩く道ではないけど、たまに迷い込んでしまいそうでね。春日センセイの文章と吉野朔美の漫画がマッチしてるんだかしてないんだか微妙な感じで面白い。
投稿元:
レビューを見る
楽しく読めました。私のしらずしらずの内にけもの道に足を踏み入れそうというか、もう踏み入れているのかも。
投稿元:
レビューを見る
精神の「けもの道」です。
人の精神は、紙一重というか、なんというか。
そこを超えてしまった人たちの表現を「そんな言い方はないだろう」と思わされることも、多々あり。
ちょっとひくけど、専門家からみるとそんなものなのかなぁ、などと。
春日センセイ流文学論が多いので、それがおもしろかったかな、と。
吉野朔実さんの画がまたよいのです。
投稿元:
レビューを見る
精神のけもの道とは、人の心の働きにおいて、なるほど論理的で整合性はあるもののそれが「普通の人の日常的な文脈」からは逸脱してしまい、しかも何かが過剰なものを現出させてしまっている人物の精神の様態を指す言葉である-本文より
著者は精神科医なので患者さんの話しも多いが、こだわりレベルが強いこういう人も結構いるんじゃないかな。かく言う自分も心当たりがなくもなく。こんなことにこだわっても損するだけだと分かっていてもやってしまうことがよくある。
整合性がないようでも、本人にとってみれば論理的に導かれた結果だったり(巻き添えになる人には迷惑この上ないが)、当人が真面目であればあるほど、ちょっと可笑しさも漂ってしまう。
差し込まれている漫画がまた、「あるある!」で面白い。
投稿元:
レビューを見る
春日先生のエッセイに、
吉野朔実氏の見開きコミックがついた、お得感漂う一冊。
第8話「そんな嘘をついて何になる」が、
本文・コミック共、全編中で一番怖かったです。
全っ然ありもしないことを
真実っぽくベラベラ喋りまくる人の精神構造って、
一体どうなってるんだろうかと。
投稿元:
レビューを見る
2012/1/23
493.7||カ (5階自然科学・医学)
人の心には、なるほどと論理的で整合性はあるもののそれが「普通の人の日常的な文脈」から外れて何か過剰なもを出している人たちがいる。
精神病ではないけれど馬鹿げたこだわり、意味不明な欲望、論理の飛躍など、分かっているけどやめられないのはなぜ?
屋根裏に人が住んでいると思い込んでいる人。
看護師なのに自分は医師であると思い込んでいる人など。
精神科医が書いているが全く難しくなくすらっと読める1冊。
ひょっとして自分もこうなのかもと思ってしまう。
あなたの近くにこんな人たちはいませんか?
投稿元:
レビューを見る
吉野朔実さんの描く表紙につられて手に取った。
春日先生の本は2冊目。
吉野さんのエッセイ漫画のイメージ通りの人だなぁと思った。
精神のけもの道とは、「普通の人の日常的な文脈から逸脱してしまい、何か過剰なものを現出させてしまっている人物の精神の様態を指す言葉」と説明されている。
なんだかよく分からないなぁと読み始めたけれど、結局最後まで分かったような分からないような微妙な状態。
ただ、小説の登場人物や精神科の患者さんに対する考察(時にひどく辛辣)は、読んでいてとても面白かった。
春日先生の視点は私にはとても新鮮だった。
記憶喪失になった人に嘘の身元を与えたらどうなるかとか、怖いことを考えるなぁと困惑しながらもどうなるか気になっている自分がいた。
三人称で書くハードボイルドな日記も非常に面白かった。
もちろん面白いのは他人事だからで、もしこんな日記を書いてしまったらすぐに処分してしまわなくては…、などと思いながらブクログに書いている感想は後々読んで苦しいことにならないだろうかと不安になったりもした。
投稿元:
レビューを見る
紀伊国屋で行われていた「ほんのまくらフェア」※にて購入。
※本に、その本の冒頭部の文章のみを印刷したカバーをかけてタイトルや筆者を伏せて、「ほんのまくら」だけをたよりに本を選ぶイベント。
普段買わない本を読めて新鮮だったが、いまいちだった。
主張がよくわからなくて、つらつらと感じたことが書かれているだけな気がする。エッセイだからかな?
人は自分を保つために独自の文脈をつくりだし、そこに論理的な整合性を見出そうと過剰に固執するとき、「精神のけもの道」に迷い込んでいく。そのけもの道はいつも人間の道のすぐとなりにある。
…ということなのかな。
投稿元:
レビューを見る
ついおかしなことをやってしまう、『精神のけもの道』に迷い込んだ人々についての考察。『屋根裏に誰かいるんですよ。』と重複するところがあるが、挿絵効果もあって面白く読めた。
それはそうと、どうもこの本以前に借りて読んだことがある気がするのだが、いつどこでだったか、全部読んだのか途中までだったのか思い出せない。他人のそういう話を聞いて、そんな事あるかいと思っていた事態にとうとう自分が陥った。読書のけもの道。
関係ないが、それはそうと と クレオソート は似ているな。
投稿元:
レビューを見る
精神科医による、
人生の迷子になってしまった人々を描いた本。
これ・・・戦々恐々として読みました。
というのも、20ページめにして、
著者の底意地の悪さが表されているのです。
長いですが抜粋。
『たとえば<四十歳代女性A>となっている人物の写真は、小太りで目が丸く口は依怙地そうで、髪は短めでカールしており、赤系統の押し付けがましい色遣いのカーディガンを着ている。率直な印象としては、野暮で愚かで騒々しく、幸福とは縁の薄そうな女性である。』
・・・一枚の人物の写真から、よくこんなコメントが出てくるものです。
赤く派手めのカーディガンを着ていたのでしょうか。
「押し付けがましい」と、着ているものを揶揄される始末。
続き。
ある占い師がこのAさんを占った時のコメント。
そこから導き出される著者の印象が、とんでもなく底意地が悪いのです。
『「こうした手相の場合、夢のような事を考えてみたり、仮空の世界を想像したりする、現実性のない性格です。しかも、すぐに悲観的になったりもします」「そのうえ、頭脳戦が月丘に深く長く下垂しており、神秘十字形、仏心紋も出ているから、信仰的なことに非常に関心を持ちます」「感情線が強いので、女性としては、ちょっと扱いにくい面があるかもしれません」「顔は、丸目で大きいのが特徴、感覚的に鋭いものがあり、感受性も強いといえます。しかも法令が出ているので、家庭の主婦ではおさまらない面もあります。口幅が広いから、気の向いた仕事をやるといいでしょう」といった調子で、散々である。
要約してみれば、ヒステリックで猜疑心が強く、新興宗教にハマリがち、ということなのではないか。場末の酒場で酔っ払いを相手に働いて貯め込んだ金を教祖様に吸い取られ、下らない男と所帯を持つも痴話喧嘩が絶えず、キッチュな金ピカの御本尊様を安アパートの四畳半に鎮座させてお題目を上げるもののちっとも救われない。演歌が好きで酒も好きで、霊感があるのを自慢するーそんなタイプなのかもしれない。
この「要約すれば」以降、すごい悪意です。
占い師の言葉を「散々である」と言っていますが、
「散々」な結末を導いているのは著者の底意地の悪さです。
正直、この描写を読んで不快になりました。
だから、続きを読むか、迷いました。
けれど、登場する「けもの道に迷い込んだ人々」=現実が少し普通の人とずれた、けれど、身近にいそうな人々に
興味があり、最後まで読みました。
結果、引用した文章を読んだ時ほど、不快な気持ちにさせられることもなく、
登場人物たちに対する興味が尽きず、最後まで読みきれました。
でも最後まで、
「いつ、また不快な気持ちにさせられるか」という警戒感は拭えませんでした。