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ドコにでもあるような学園の日々が
介護人、提供者、回復センター、保護官
ドコにでもあるような、でも少し違う言葉で描きながら
淡々と明らかにされる異様な少年少女の日々。
静かに思い出し、運命に抗うことを思いながら、
夢を見ながらも、現実を突きつけられると
静かに受け容れてしまう。なぜ?疑問。
だからトミーの久しぶりの発作は「ココロ」の叫びが
共振するように伝わってきた。
作り出したものの運命には、創造主がどんなに
苦心して心砕こうともいかんともしがたいのか。
人が過去を思いながら、現在の姿を重ねて
これからを、現在の自分と変えることのできない定められていたものとして
許容していくことは、
なにも教えられていないなかで、動揺もなく平静に進められるものなのか。
だから(だけど)、「ワタシ」自身のために腕を磨くのでは。
しかしキャシーのDon't Let Me Goとマダムのソレは異なっていた。
終始、落ち着いた語りのなか
トミーの最後の打ち明け話とその姿が
強く心に焼きつき、胸を撃った、射た。
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11/6 物語感が圧倒的。ひさしぶりにガツンとした本を読んだ。ミステリでもないのにじわじわと謎が大袈裟でなくこちらに伝えられるところや、その根本にある価値観。あと時代設定や詳細がはっきりしていないところもいい意味で世界観を形成している一因だ。ほかの本も読んでみようと思います。
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登場人物たちの、生々しさがたまらなく辛い。これでもか、と書き連ねられる彼・彼女たちの気持ちが痛い。こんなに、まるで現実のことのように、胸が痛むなんて。カズオ・イシグロの力量のおかげなのか、同じようなことが世界で起こっていると、ぼんやりと感じるからか、それとも将来こんなことになりそうだと漠然と思うからか。もしくは、イシグロがいうように、彼らの人生は、実は、わたしたちとそう変わらないからなのか。こんな感じのまとまらない思考がもやもやして、重いけれど、名作。
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久しぶりに読んだ本。あらすじ紹介の段階から面白そうだったけど、期待通り。学校とかの描写はいかにもな海外での生活らしいんだけど、やっぱり不穏でどうしようもない未来がちらちら見える。
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経験、体験に感じ入る いうのはまさにこういう書を読んでのことだろうと思う。みなさんのコメントの通り、一気に読める本でありひさびさにいいものを読んだと思う。
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Never Let Me Go(2005年、英)。
表紙に惹かれて購入。内容は、正直、あまり好みではなかった。話が進展しないので、かなり飛ばし読みしてしまった。そういう読み方をする物語ではないだろう、とは思いつつ…。とはいえ、少女の微妙な心の揺れを綴るシーンなど、フィクションであることを忘れるくらい、心に迫るものがあるのも事実。プロットよりも抒情を味わうべき作品なのだろう。野暮を承知でカテゴライズするなら、SFではなく純文学寄りの読者にうける、通好みの作品ということか。時間を置いて再読しようか…。
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恋愛モノではありません。最初から最後まで女性の一人称で話が進みます。
近未来SF?パラレルワールド?どちらでもいいのかな、なかなか恐ろしい話だと思います。
にしてもハヤカワepi文庫は文庫サイズじゃないので困ります。
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人の尊厳とは何か…
ありえないと思いながらも、何処かでありえているのかもと云う恐怖が残る。
物語の最大のミステリが早々に明かされ「え?ここへたどり着くまでの物語じゃなかったの?」
と思いましたが、大事なのはプロセスとライフでした。
同じように命を与えられ、私たちとは違う人生を送る同じ人間。
考えたら苦しくなるのだけど、もしかしたら…。
当たり前のことを当たり前にできることに感謝しよう。
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読み終わって、はじめて表紙に描かれているのは
テープレコーダーだって気づいた。何回も目にしていたのに…
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多少ショッキングな設定ではあるものの、
読み終わってみると、ふるさとと仲間を失う孤独、哀しみの方が強く心に残った。
クローンでもやっぱり普通の人間のように当たり前に人をいとしみ故郷を慕うのだろうか
語り手であるキャシーも試験管の中で生まれた一人であることにあらためてはっとする
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原書で買って3ページ読んで二年放置。
日本語訳で文庫になったのでリトライー
この本はミステリーでもありSFでもありヒューマンドラマでもあり哲学書でもあり一言でカテゴライズできません。
最初はまったく状況がつかめないまま、静かに始まり少しずつ彼らがおかれている状況が明らかに
血が出るーとか内臓飛び出すーとかそんな残酷さではなく、たんたんと主人公の口から語られる物語に心の底からじんわり悲しみがにじみでてきます
この本読んで小説がある意義が少しわかったような気がするー
小説がなくなるということは、イマジネーションも崩壊してしまうということで。
どんどん発達する科学技術、そのおかげで私たちの生活は便利になって、食料は世界中で大量にあまるぐらい十分で、結果働かなくてもよくなって、犯罪も戦争も差別もなくなって、どんな病気もよくなって、200歳ぐらいまで生きることができるような世界になっちゃうことがはたしていい世界なのか、ということが問われなくなっちゃうんじゃないかなー
完璧に見える世界のウラにあるものに対してのイマジネーションが干からびちゃうのは恐ろしいこと。
小説の意義の一つにはそんな世界にならんよーに警鐘ならすことができる力があるんじゃないかなー
なんちゃってー
こんなつたない考えが頭を1日中ぐるぐるしちゃいました
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主人公キャシーが幼少期から現在までを語っていく。
曖昧にキーワードだけ散らかしてその意味が説明されないというスタイルゆえ、ミスリードを誘って最後に大どんでん返しのパターンかと思ってしまうが、イシグロ自身が、帯に「これは…についての物語である」と書いてくれてかまわない。と述べているように、そもそもこの物語にミステリ的な醍醐味は用意していない。
外界から隔たれた施設で育つ登場人物たちが「教えられているようで、教えられていない」教育を読者も同じ目で追うことになり、うすうす感づいていたショッキングな事実が明らかになったときは読者同様、登場人物たちもいちいち驚き騒ぐようなことない。むしろ結果的に彼らが「驚かなかった」ことが、この小説の不条理なテーマに繋がっている。
ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」と同趣向のSF小説といえるが、主人公が悲劇的な運命からどうにか逃れようともがく活劇とは対極の構図に抑制された文体がよく似合っている。文学作家ゆえの良作。
08.12.26
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『coyote』の冒険文学特集にあったので読んでみる。
「提供者」「介護人」・・・設定が、後半、それもかなり終盤にならないとわからない。
クローンとして生まれ、臓器を「提供」することが使命である
キャシー、トミー、ルース他、ヘールシャムにまつわる人々の話。
ありえない設定と、翻訳の日本語があまりしっくりこなかった。
「これは後で申し上げますが・・・」みたいな文句が大量に出てくるのが好きじゃない。
他にも―・・・―を使った但し書きが多いのがいまいち。
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イギリスの田舎にある全寮制の学校での日々。
その中で成長するにつれ、少しづつ現れる疑問・・。
成長した彼らの現実。
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壮大な回想譚。幼少期の輝かしくも脆い思い出と、現在の仕事や心持。耳慣れない言葉が出てきても、読み進むうちに自然としみこんできて、違和感なく彼女の話に耳を傾けることができました。気がついたら引きこまれていて、最後まで読み終わっていました。読後感の強さは去年読んだ本の中で1番深いかも。淡々と進む、ファンタジーやSFとは言い切れないリアルな世界。