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ビルギット・ニルソン オペラに捧げた生涯 みんなのレビュー

1997年ユーモア賞 受賞作品

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みんなのレビュー2件

みんなの評価4.4

評価内訳

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紙の本

著者の誠実さ、温かな人間性と巧まざるユーモア、そしてなによりも音楽への愛と献身が際だつ

2009/05/11 19:52

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る


ビルギット・ニルソンといえば、なんといっても20世紀を代表するワーグナー歌手ということになるであろう。

ただちに思い浮かぶのは、名物プロデューサー、カールショー、ゲオルグ・ショルティ、ウィーンフィルと組んだデッカの「指輪」全曲録音、1966年7~8月のカール・ベーム指揮バイロイト祝祭soによる素晴らしい「指輪」の全曲ライブ演奏、同じメンバー+相棒ヴィントガッセンとがっぷり4つに組んだ「トリスタンとイゾルデ」の空前絶後の名唱、翌年の春、死ぬ直前のヴィーランド・ワグナーの厳命でピエール・ブーレーズと大阪にやってきてアホ馬鹿N響相手にぶっつけ本番で歌ったトリイゾなどであるが、とりわけ私の心に突き刺さったのは1983年1月ニューヨークのメトロポリタン歌劇場創立100周年記念ガラコンサートに登場した彼女が、いきなり「ワルキューレ」第2幕の有名な「ホヨトホ!」の叫び声を上げた瞬間、超満員の聴衆が満腔の歓呼の声を挙げた光景だった。

ただひと声で満場を歓喜の坩堝と化すことができるのは、世界に名歌手多しといえども「オテロ」のデル・モナコとビルギット・ニルソンだけであろう。

この本はそのスウェーデン生まれのソプラノ歌手ビルギット・ニルソン(1918-2005)の自伝である。

田舎の牧場の娘がふとしたことから音楽の道に入り、ストックホルムのオペラハウスを振り出しにウイーン、スカラ座、メット、バイロイト、テアトル・コロンなど世界の有名オペラハウスや音楽祭に出演するようになり、ワーグナー作品をはじめ、トスカ、トゥーランドット、アイーダ、仮面舞踏会、マクベス、サロメ、エレクトラなど大作の主役を演じるようになり、エリッヒ・クライバー、フリッツ・ブッシュ、クナパーツブッシュ、カイルベルト、ベーム、カラヤン、ショルティ、クレンペラー、ラインスドルフ、クロブチャールなどの棒で歌うようになる。(余談ながらカイルベルトとクロブチャールの指揮に対する彼女の高い評価にいたく共感)

彼女の徹底したカラヤン嫌いの理由、クレンペラーからいきなり「独身?」と口説かれる話など、世界の一流指揮者の実力と人柄に生身で接したリアルな月旦評も抜群の面白さだ。

その間彼女が共演したビョルディング、フランコ・コレッリ、ホッター、カラス、テバルディ、レオンタイン・プライス、シオミナート、ディ・ステファノなどの名歌手たちの逸話、彼女を生涯にわたって追いかけたマリリンモンロー似のストーカー悲話も興味深いものがある。

例えば、彼女とフランコ・コレッリがメットの「トゥーランドット」で繰り広げたハイC競争は壮絶なものであったらしい。
そのほとんどはコレッリが勝ったらしいが、たった一度だけニルソンが勝利した時のこと、コレッリが姿を消したので支配人のルドルフ・ビングが捜したところ、コレッリは怒り狂って拳骨でテーブルを力任せに叩いて血だらけになり、コレッリ夫人が救急車を呼ぼうとしていた。しかしまだもう1幕残っていたので、ビングが「次の幕でトゥーランドットに口づけするときに噛みついて復讐しろ」とささやいて彼を舞台に立たせ、自分は逃げ出したという。
指揮者のレオポルド・ストコフスキーはそんなことがあったとはなにも知らなかったそうだが、あとで演出家からピングの悪知恵を聞いた彼女は、支配人に宛てて次のような電報を打ったそうだ。
「噛まれて負傷したために、次回公演はキャンセルします―ビルギット」


クラシックのアーチストの評伝はどれも当たり外れがないが、この本は著者の誠実さ、温かな人間性と巧まざるユーモア、そしてなによりも音楽への愛と献身が際だっていて、読む者がたとえ耳に一丁♪なき音痴であったとしても、そのささくれだった心の裡をほのぼのとした気持ちに変えてくれるに違いない。


♪時代も世紀も煎じ詰めればこの一瞬のわれらの行状に尽きる 茫洋

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紙の本

オペラに捧げた生涯/イゾルデが忘れられない

2008/12/09 16:57

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:k-kana - この投稿者のレビュー一覧を見る

オペラ歌手ビルギット・ニルソンは2005年に87歳で亡くなった。スウェーデンの田舎で大きな声をはりあげていた少女が、努力のすえに世界の一流劇場で活躍するに至るという、本書はニルソンの自伝。オペラ出演のエピソードが豊富だ。カラヤンの渋ちんぶりを活写する作者の目は辛辣である。

ニルソンの名前を聞くと、ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》を思い出さずにはいられない。この楽劇のCDはいくつか持っているのだが、なかでも、カール・ベームの指揮したバイロイト音楽祭の録音が素晴らしい。歌手や指揮者・オーケストラの熱気が伝わってくる。ニルソンは当代一のイゾルデではなかったか。

このバイロイトへの出演(1962年)をニルソンは、待ちかねていたようである。ヴィーラント・ワーグナーが《トリスタン》を新しく演出すると、知ったとき。「今しかない、一度はヴィーラントと一緒に基礎から役作りをしてみたい」と思ったという。突然のオファーには、カール・ベームの推薦があったらしい。

ヴィーラントの演出は天才的だったという。舞台は巨大な男根のオブジェを除いて、空だった。映写、色彩、照明で雰囲気を醸しだし、しかもワーグナー音楽におけるロマンティックで劇的な物語をいっそう強調する独特の技法は今までにないものだったと。

60年代にデッカに録音したオペラの数々も忘れられない。《ニーベルングの指環》のブリュンヒルデとか、もちろん《トリスタン》も。

デッカの録音チームとの仕事は、時に意見のぶつかり合いもあったが、快調だった。しかし、いつも満足していたわけではないと言う。オーケストラと歌手のバランスの点で不満がある。歌手は巨大なオーケストラの響きにかき消されてしまう。オーケストラの音が全体的に大き過ぎると。プロデューサーのジョン・カルショーや音響エンジニアのゴードン・パリーと何度も討論したようだ。

この《ニーベルングの指環》第3作《ジークフリート》の最後のシーンの録音はまさに緊張感溢れるものだった。一同は弓を張ったようにピンと気を引き締め、楽譜を脇に放りだした。ヴィントガッセン(トリスタン)は素晴らしく、ショルティが火をつけた。カットもやり直しもなく完璧だった。「最高だ!」とショルティは叫んだ。

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