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世界史ではいつも悪者にされる、というか実際ひどい条約を多数結んだことでお馴染みのイギリスであるが、現在のイギリス国家にその責がないことは当然として、当時においてさえ、イギリス国民の多くの若者たちは、奴隷にも似た扱いをうけて半強制的に植民地開発に連れ出されていた。
本書は17,8世紀の植民地拡大を続けるイギリスの庶民の実態にせまる方法として、当時の移民とはどんな人々であったのかを探求する。
一言でまとめてしまえば困窮した人々が半ば強制的に押し出された結果であり、イギリスにとってアメリカ植民地とは救貧院であり、刑務所であり、孤児院であったということなのだが、本書は結論を急がず、一次資料を綿密に読み解く過程を示した探求・研究にこそ重きをおいている。
情報源とその正当性の考察にページがさかれるため物語的な面白さは薄れてしまうが、それはそれで興味深く読み進められる。
難題の解決を植民地に求めようとするこの潮流は、何も当時のイギリスに限った話ではない。
人口減少、不法移民、貿易赤字。ときに押し付け、ときに奪い、均衡を失った先にはろくな未来が待っていない。
協業を一歩間違えたゆえの不均衡なのか、はたまた悪意を持った暴力なのか。
近代イギリスの路地裏は、つねに帝国に、そして現代にも繋がっている。