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ダンテ『神曲』地獄編,河出書房,2008(初版1966)
再読(2009/8/12)。基本的にはウェリギリウスに導かれて、ダンテが地獄を旅する話である(ちょっと『西遊記』みたいだ)。
ダンテ(1265-1321)はフィレンツェに生まれ、法王党として政治にかかわり、1302年、故郷を永久追放された。『神曲』は1300年頃の設定で書かれており、ダンテの敵が地獄で手ひどく罰せられ、大便のなかでのたうちまわっていたり、自分の首を提灯のようにさげて彷徨っていたりする。師匠がじつは男色の罪を犯していて、引かれていく途中だったり、亡者が地獄の鬼(悪魔?)に鞭打たれていたり、貪欲な亡者がぐるぐる回って、ぶつかって罵りあったりと、地獄はまあそんな所である。冷たい雨が降ったり、火の粉が絶えず降ってきたり、空気がくさっていたり、ときどき、ケルベロスだのミノスだのミノタウロスなどの怪物や、巨人がでてきて、悪態をついたり、予言をしたりする。キリスト教徒じゃなかったホメロスは辺獄(リンボ)の片隅で淋しくしている。マホメットやアリーは二つに裂けている。キリスト教を分離させた者に応報の罰らしい。
たぶん、現代の映画なんかで消費しつくされたイメージだからだろうか、偉大な作品ではあるんだろうが、内村鑑三のように身の毛がよだつこともなく、こんな所かと読んでいる。地獄編が面白くないのは、ダンテが敵をいじわるく痛めつけているからもあるけど、そこには人間の「生活」がないからだと思う。ちなみに地獄でも、派手に痛めつけられている「主人公」は大悪人で、凡人は地獄に落ちても脇役である。悪人としては、恋に身を忘れた者から、偽金作り、裏切り者までたくさんいて、みな因果応報の罰をうけている。貪欲なものは生前自分がサイフにつめこんだように、地獄では自分が穴に詰め込まれていて、足だけでていたりする。
ウェルギリウスとダンテは地獄を底まで下りていき、地球の重力があつまるところで、悪魔大王(ルシファーとかベルゼブルとよばれる)をみる。大王はキリストを裏切ったユダと、カエサルを殺したブルータスとカシウスを三つの首でかみ砕いている。彼らは悪魔大王の毛をつたって、南半球にでていくのであった。
「神曲」の「神」は形容詞で、「神のごとき」の意味で、後に冠せられた。もともとの名称は「コンメーディア」とのこと、「ハッピーエンドの話」の意味だったが、のちに転じて、「喜劇」の意味になった。「光も黙る」とか「年老いた裁縫師が針に糸を通すような目つき」とか、うまいなと思う比喩はある。
『神曲』はイスラム圏では悪魔の著らしい。平川祐弘(『マテオ・リッチ伝』の著者)による注釈は詳細、カーライルやブルクハルト、正宗白鳥や内村鑑三、与謝野晶子などの意見を事細かく、引いてくれている。訳としてもよみやすい。『神曲』はその後の地獄のイメージなどに影響を与えた作品で、中国に宣教したイエズス会士などの頭にもあった作品だろうと思う。
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そう言っちゃなんだけど(ひょっとしたら不謹慎?)、面白かったぁ!!!! 「神曲」というタイトルからして「どこか説教じみた抹香くさい話なんじゃないか?」と思ったり、これまでにチャレンジした難解な文語調翻訳で「う~ん、よっぽど余裕がないとこれは読み終えることができない・・・・・(溜息)」という先入観があったりで、興味を持ちつつもどうしても読み進めることができなかった作品だけど、この平川版の「神曲」は「読み易い」「面白い」「翻訳日本語が美しい」の3拍子 + ギュスターヴ・ドレの挿絵のインパクトであっという間に地獄篇を読み終えてしまいました。
以前にチャレンジした時はほとんど進まなかったせいもあって全く気がつかなかったんですけど、「神曲」ってコテコテ・キリスト教文学かっていうとそんなことはなくて、KiKi の大好きな「ギリシャ神話」とか「英雄叙事詩」とか「歴史モノ」と親和性の高い作品だったんですねぇ。 ま、そんなこともあり、やはりこの作品を本気で楽しもうと思ったら最低限 「聖書」、「ギリシャ神話」、「ホメロス;イリアス & オデュッセイア」、「古代ローマ史」の基本的知識は必須でしょうねぇ。 ま、これに追加でダンテの生きた時代のイタリア情勢も知っていればさらに面白いのかも!! もっとも KiKi は凡そそのあたり(ダンテの生きた時代のイタリア情勢)の知識には疎いのですが、それでも微に入り細に入り付してくれている「注釈」のおかげで、とりあえず一読するには何ら不都合は感じませんでした。
(全文はブログにて)
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大作だけどあっさり読み進められるのは平易な現代語訳と詳細な解説の賜物。
訳注もふつうは巻末についていて行ったり戻ったりが面倒だけど、
歌(章)ごとにまとめてあるので読みやすい。
父なる神と子なるキリストと精霊の三位一体の神聖意外を認めないはずなのに、ゼウスや運命の女神たちなどギリシア・ローマ神話の神が出てくるのはどうかと。
でも関連するギリシア神話をいっしょに読むと知識も増えてなお楽しめる。
訳注で正宗白鳥が、今の政治家や軍人や有名人を使って書いたらどうなるかと書いてたけど今の日本で書いてみてもおもしろいかも。
もちろん仏教地獄の話で。
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ダンテの代表作を3分冊にしたものの1冊目、地獄篇です。3冊まとめて購入してその厚さに驚き、げんなりしたものですが、実際に開いてみると意外と楽に読み進めることができました。
この詩の主人公にして語り手であるダンテ(作者であるダンテが旅をしているという設定なのでしょう)が地獄、煉獄、天国の三界を廻るというあらすじはとても有名ですが、主人公と語り手が同一であるという設定はこの時代には例がない、という平川氏の指摘にはいささか驚きました。こうした物語手法は現代ではそれほど珍しくないと思いますが(さすがに作者を主人公と語り手に据えるというのは現代でも珍しい部類に入るでしょうが)、もしそれが当時斬新な手法だったとすると、あえてダンテが3つのの視点を重ねたその意図はどこにあるか。私は、理由は詩の内容にあるのだと思います。
地獄篇では過酷な罰を受ける人物が数多登場しますが、そのほとんどが実在の人物で、ダンテの政敵であったり教皇であったりするという、なんとも狭い世界だけで物語が進んでいる感があります。世間では「世界的な傑作」という高評価が当たり前の本書も、こと地獄篇に描かれた彼らの姿からはとてもそうは思えませんでした。言ってしまえば、政争に加担して敗れたダンテが、作中の地獄に仮託して政敵たちを懲らしめているだけの話です。こんなばかばかしい話をキリスト教神学の仮面をかぶせて大仰に描き切った本書は、まさに喜劇だとしか思えません。この詩の題名に「Commedia」とだけ題したダンテ自身も、もしかしたらそう考えていたのかもしれません。しかし、もちろんこれは世代と地域とを隔てた私の感想であって、同時代・同地域の人々には、「実在するダンテがやはり実在する政治家の地獄に落とされる姿を見て回る」というこの詩に触れたときどう感じたでしょうか。そう考えるとき、私はダンテという人に底知れぬ恐ろしさすら感じてしまいます。
とはいえ、物語という視点からこの詩をみるとやはり面白いのも事実です。展開の進め方も巧みだと思いますし、読者にその情景を想像させ、また作品世界に引き込ませる力は圧倒的ですらあります。生々しい地獄の描写などは、我が国の往生要集や日本霊異記にも劣らないでしょう。日本語訳も全く気になららず、とても読みやすいものに感じられました。平川氏による解説「ダンテは良心的な詩人か」も収められており、本編後にこれを読ませるとは見事、の一言に尽きます。平川祐弘訳。
(2009年7月入手・2010年9月読了)
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最初、なんだなんだこれは、わけわかんない?!って思いますが、だんだんわかってきます。cocoiは、これで、政治学のレポート書いて好評だったといってたけど、、、どんな?ちょっと興味あり。
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平川訳は平明な現代語でかつ詩情も損なわれていない(たぶん)。他の訳はあまりにも難解で読む気になれなかった。
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本屋で見かけた頃からすごく読みたいなぁ、と思っておりまして。
友人が「すごく長いよ」と言っていましたが、長さがともあれ、内容が長さに相応しいのならそれでいいです。
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ダンテはこの一冊を通して、自分は気に入らない人間を容赦なく妄想の中で地獄に落として嘲笑する男なのだという自己主張をしていることに気づいていたのかな?
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宗教書の形を借りた、自己の正当化かつ、政敵への恨み辛みの超大作って感じでした。
でも、その情熱に拍手
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購入してから1年寝かした、いや挫折した本を読み終えたが、確かに読み易いのだがなんとも難しい。出直しです
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すごく詳細な地獄の描写
挿絵はむしろいらん!ぐらいの作品
歌とあるだけあって意味のとりづらい部分も
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なんでこんなにおもしろいんだろ。当時のナポリやフィレンツェの状況、政治的背景なんて、全然知らないのに。地獄をめぐる描写の鮮やかさが、そうさせるのかなあ。
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2011.3.24 図書館
ちょっと教養を深めようかと…おもったんだけど読み切れるかしら
追記:読み切ったよ!
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トスカーナ出身のダンテは、古代ギリシャの詩人ヴェルギリウスとともに、地獄を下に下に降っていく。イスラム教の始祖ムハンマドも罰を与えられている。文学の世界的最高傑作とは、キリスト教に準じたものか。
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持ってるのはこの表紙ではないけどまぁ、気にしない
この中世における思想というのだろうか?良く表現されているのではないかと思っている。友人は何故か、地獄篇しか知らなかったが、私は煉獄篇が最も好きだったりする。