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生還まで何マイル? みんなのレビュー

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みんなのレビュー12件

みんなの評価4.3

評価内訳

12 件中 1 件~ 12 件を表示

紙の本

迷宮街クロニクル1

2008/11/29 21:52

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みたさん - この投稿者のレビュー一覧を見る

京都迷宮街。ここでは、簡単に人が死ぬらしい。
Webで公開されて大好評を博した作品が、GA文庫より、ついに待望の単行本化!(帯より抜粋)

今回紹介させて頂く『生還まで何マイル?』は、突然京都を襲った大地震により口を開いた大迷宮から怪物たちがあふれ出した、そんな現実の日本とはちょっと違った現代日本を舞台にしたSF、ファンタジー小説です。
主人公たちは、怪物のあふれ出る迷宮にもぐり、怪物を倒し、その体の一部を換金するハンターです。迷宮街の中では「エーテル」と呼ばれる不思議な物質により魔法が使えたりと、ファンタジー小説ならではの魅力的な設定が他にもあります。しかし、この小説の一番の魅力はと私が聞かれたら迷わず「リアリティ!!」と答えるでしょう。
ファンタジー小説ではありますが、登場人物たちは等身大の人間であり、そのキャラクターの考え方だけでなく、その生活まで詳しく描かれています。そして帯にも書かれている通り、キャラクターがあっさりと死ぬ。それはもうあっさりと。今までのファンタジー小説のご都合主義的な展開はそこにはなく、迷宮街という危険な場所では、ベテランも新人も等しくあっけなく命を落としてしまう、そんな非情なリアリティがあります。
こう書くと重い作品と感じるかもしれませんが、キャラクターの性格が立っており、キャラ達の掛け合いも大変魅力的です。最近の小説、「キャラは立ってるんだけどご都合主義すぎる」とか「萌えはお腹いっぱい!!燃えをくれ!!(笑)」とかお考えの方、『生還まで何マイル?』を手にとってみてはいかがですか。オススメです!!

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紙の本

迷宮に迷い、惑い、纏う勇気

2010/03/31 22:34

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コガラキ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者はいくつ目が付いているのだろう、と読んでいてギクリとする。その、人間を書く視線の鋭さに。
 文章がこれ以上鋭利になったとしたら、おそろしくて読めないだろうとまで思う。

 この3ヶ月間の「街」の記録は、ウェブ上で、実際に3ヶ月間に渡って執筆されたものだという。
 今まで「まともに文章を書いたことがない」と語る著者が、このような本を世に送り出してくれたことは、同じように文章を書こうという人々にたいへんな勇気を与えたのではないだろうか(少なくとも私にとってそうであった)。

 この物語は不親切であるゆえに、読者に「読み解く」負担を要する。
 その「不親切さ」は、(単に技術的なこともあるだろうが)「説明しすぎない」という美徳である。 
 書かれていること以上のものが、この本の中には描かれている。

 1巻から4巻まで分冊されているのが歯がゆくなるくらいに濃密な、ひとつながりの3ヶ月間の記録である。

 (後悔するので、これから読まれる方はどうぞまとめて4冊購入されることを強くおすすめします。1巻を読み終わった夜、残りを手に入れる算段で、睡眠時間を削られることになりますよ!)

 以下は、各巻のとくに好きなシーンを、(本筋には抵触しないよう)引用して語ってみたいと思う。


 迷宮街クロニクル1-「生還まで何マイル?」より

「すでに自分は死体とみなされ、-死ぬまでの距離は伸びなかったけれど、『殺されてから動けなくなるまで』にできることが増えていることに気づいた。-自分の死は定まった。-だがまだ死んではいないのだ。まだできることがあるのだ。仲間から期待されているのだ。その意識が全身にみなぎり、-彼は両腕だけで状態をはねあげた。限界を超えた、自分でも信じられない力だった。」
「美濃部が本当に死んだのは、腰に爪を突きたてられてから約五分後、仲間が美濃部を死んだと判断してから二分と三十秒後のことだった。」

 人が死ぬとはどういうことか?
 「死んだ」と見なされた人が何をなすか?
 死した人が生きゆく人にどのような影響を与えるか?
 ひとりひとりが、終わりの4巻までの間に、答えのようなものを見つけ、あるいは見つけられず死に、その死が街の重みを増してゆく。
 「人間を描いている」というと、重たくて手に取りづらいというイメージが先行して、私などはためらってしまうのだが、この物語は人間を描いている、軽妙に。だからこそ薄ら悲しく、響くものがある。
 軽くはないが、けっして軽薄ではない。


 迷宮街クロニクル2-「散る花の残すもの」より

 「三人。最長三ヶ月。それはどう考えても自信を与えてくれる経験とはならないだろう。真壁の経験では、短い期間で終わった恋物語ははじめたことそれ自体が苦い思い出となって残り続ける。
 幸せな恋愛の思い出は冬も落ちない木の葉のように、次の日射しを待つ枝を風から守ってくれる。そういうものを少しずつ自分の中に蓄えていくことが誰にだって必要なのに、この娘は丸裸のままでいきなり難易度の高い相手にぶつかろうとしている。」
「『水上さんへの気持ちはそれはそれでいいから、この街で誰かとつきあってみるといいと思うよ』-
『私は自分より強い相手じゃないと嫌なんだよ。で、誰と?』-
『俺はまだ死にたくない。だから、あの街で二番目にいい男だね』
 小さく吹き出した背中が揺れた。」

 人は思ったことをすべて口に出すわけではないし、口に出された言葉を、相手がどのように受け取るかもわからない。
 しかし、相手のかすかな反応を見て、また何か思ったり、それを口に出したり、あえて出さなかったりする。
 あたりまえのことだが、この街の人々のやりとりを見ていると、そのことを強く実感する。
 人のしぐさひとつひとつが雄弁で、簡素な言葉の中におおきな想いが含まれている(ように思える)。
 街に住む彼らは、死に急ぐように恋愛をする。まさに明日死ぬかもしれないからだ。
 涙を見せない軽快なやりとりが静かに胸を打つ。


 迷宮街クロニクル3-「夜明け前に闇深く」より

 「強くなりたい。それは即座に回答できた。もちろん腕力でも体力でも生命力でもない、一人の人間として毅然とある強さ。それが自分には決定的に欠けており、死を目の前にして追い込めば鍛えなおせるかと思ったのだった。
『鍛えなおせると思った、か。鍛えなおせなかったのか?」
 みじめな思いでうなずく。
『今いる場所で手にはいらないものを他の場所に逃げてつかめるはずがないってことだけはわかったよ』」

 大学を辞め家を飛び出し、街を選んだ青年が、父親と再会するシーン。
 この「街」は異様なところだが、このやりとりは普遍的なものを感じさせる。
 青年がいかように、なにを学びとるか。どこへ行くのか。
 青年の視点に立っても、父親の視点に立っても、すべての読者に苦く思い出すところがあると思う。


 迷宮街クロニクル4-「青空のもと 道は別れ」より

「『俺はただ、篤のことを覚えておいてやれと--』
『知るかいな! 知らんわ! 生きてる間に記憶に入り込んでこないくせに、死んだからって割り込ませてたまるか!』
 久米篤、という名前にはまったく記憶がない。教官の口ぶりでは自分に関心があったらしいが、そこから踏み込んでこなかったということだ。生きている間にしかできないことがある。そして探索者の「生きている間」とは恐ろしく短い。だから皆、全力で自分の存在を他人に刻もうとし、それこそが野田がこの街の男たちに感じる魅力だった。-
『覚えとらんなあ。知らんなあ。たぶん話したことなんやろなあ』
 それでも、命を投げ出した。自分のために。
 深く息を吐いて目を閉じた。にじむ涙はたばこの煙が目に染みたからだろう。」

 自分が望まず手に入れたもの。その重み。
 みずからの理想を他人とすり合わせると、不協和音が聞こえる。
 それでも、自分の矜持でもって生き、袖を触れ合わすこの街の人々は、痛々しくも、とてつもなく「格好いい」。

 終盤、街を去る決意をした3巻での青年が、送別会で3ヶ月間を回想するシーンは、最後まで彼を見守って、または、彼の立場に立っていた読者すべてが共感し、感銘を受けるところがあるはずだ。(本文はご自分の目で是非確かめていただきたい)。


 続編は予定なし、とのことだが、一度この「街」を体験した読者は、自分を試しに、未知のものに挑戦したくなるだろう。無性に。
 そのような、勇気づけられる力を持っている、エネルギーに満ちた本だ。
だが、飛び出した先でも、今いる場所であっても、彼らのことを、折りに触れて思い出すことになるだろう。本当にそこに住んでいたかのように、自分の一部分が、迷宮に迷い込んでしまったように、いつまでも。

 著者には、長い間、お疲れさまでした、ありがとうございましたと心から感謝を捧げたい。
 自分の中のひとつの青春に、終止符が打たれると共に、これからを見据える力を頂いた。

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紙の本

疑問は尽きないけれど、何はともあれ生き残る

2008/12/09 21:17

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

 大地震により京都に出現した地下の洞窟、大迷宮の入口。そこから、これまで知られていなかった奇妙な生物、怪物が地上にあふれてきた。これを掃討すべく自衛隊を派遣するも、有効性に疑問がもたれたため、政府は、各地で技を磨いてきた武門の一族「人類の剣」を中核として、迷宮探索事業団を設立。一般公募による探索隊を組織した。彼らの仕事は、大迷宮の終点を目指すと共に、怪物の体組織を採取すること。死亡率14%という危険地帯に様々な事情を持つ人々が集まり、今日も非日常的な日常の戦闘が繰り広げられている…

 現代社会をベースに物語が作られているため、銃刀法もあり、探索者たちは銃器を使えない。非日常社会に日常のルールを持ち込んでしまうところが、日本的、官僚的で面白い。
 また、ボトムアップからの歴史というか、本質的な情報を持たない人々の視点で綴られているため、読者も謎を解明するというよりも、否応なく戦いの中に投入され日々生き残るために必死になっている、という視点で作品を読むことが出来る。このため、非日常的にもかかわらず、リアルを感じる要因になっていると思う。

 この作品は、真壁という元大学生による日記と、他の視点から見た同じ日の出来事を併記する形で構成されている。このため、小説形式になれた人は少し戸惑うかもしれない。また、Web連載を大幅に加筆修正したためか、前後の文章に若干の齟齬を感じるときもある。しかし、読み進めるほど、最後まで読ませる力を感じる。

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電子書籍

突如現れた地下洞窟――迷宮に挑む人間たちが織り成す波乱万丈の群像劇

2021/01/20 12:59

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る

この物語は、15年程前にはてなダイアリーで公開されていたウェブ小説「和風Wizardry純情派」を加筆修正し書籍化したものです。

オリジナルの題名の通り、古典的な名作ロールプレイングゲーム「Wizardry」の世界観を和風、つまりは現代の日本、京都を舞台にしたもので、一言で言えば、危険な迷宮に挑む探索者たちの物語です。

Wizardryはファンタジーの世界ですが、本作の舞台は現代日本です。
地震によって出現した迷宮に乗じて周りに建造された「迷宮街」にはコンビニなどの現代的な施設も存在し、登場人物もまた、多少運動能力に優れていたり、武道をたしなむ人もいるものの、総じて普通の日本人です。

突如現れた地下洞窟。
その調査を必要とし、そのために迷宮の探索を担う労働者を募る。
労働者が集まるのであれば、彼らが生活できるインフラ、街が必要になる。

Wizardryをプレイした経験がある人ならばわかることかもしれませんが、迷宮には未知のモンスターが生息しており、そこに一歩足を踏みこんだならば生還できるとは限りません。

舞台設定と迷宮街を運営する組織の存在、そして多くの巧みな理由付けにより、日本中から危険を知りつつも、迷宮街に集う人々が現れます。

彼らは未知の生物の被害を地上に広げないことを第一に、迷宮の調査を行います。迷宮内に潜む未知の生物の体組織を持ち帰れば金になるため、それ目当ての人間もいますが、一口に金のためと言っても、そこには人の数だけの理由があります。

自ら望んで死亡率の高い危険な場所で働く登場人物たちには、縛られている過去、これから目指す未来、背負っているものが存在し、それらの葛藤や苦悩、希望と言ったものが丁寧に描かれています。

舞台が日本で、登場人物たちの多くが普通の人々であるから余計に親近感を覚えるのかもしれません。彼らは物語の登場人物ですが、まるで共にいた仲間のような、親しい知人のような感覚があります。

副題の「生還まで何マイル?」というのは、本シリーズ1冊目に見事に当てはまったタイトルだと思います。ウェブ版の連載時に、確かこういう意味のことが書いてありました。

――迷宮に入った際の登場人物たちの生死は、ある程度死ににくい、死にやすいという係数はあるものの、サイコロ(確率)で決めている――

親しかった、共に生活した仲間が明日生きているかどうかわからない。迷宮は広く深く、危険に満ちており、ちょっとした勘違いやひとつのミスが絶望への入り口となります。

ここまで書くと、救いのない危険でハードな物語と思われるかもしれませんが、シリーズ最終巻を読んだあとにはあたたかな気持ちと、登場人物たちへの愛おしい気持ちが沸き起こってきます。

スリルと重厚な人間ドラマを味わえる珠玉の名作です。

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2009/02/07 00:40

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2009/12/31 22:30

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2010/01/15 00:20

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2010/07/07 21:50

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2011/09/20 14:17

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2013/03/24 20:38

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2016/09/12 22:26

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2019/01/09 22:20

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